この夏は暑かった。外を歩くたび、「焼かれて」いる感じがした。
「ああ、シミとシワが増える…」「っていうか、身体の表面だけ別世界にいるようだ…暑過ぎて、身体と脳が分離している、暑く感じていること自体が人ごとみたいだ…」「ひょっとして、生命の危機?」
そんなふうに考えながら、フラフラと、トランス状態で歩いていた。
「うーん、こんなに暑かったら、生卵も焼けて、目玉焼きが作れてしまうんじゃないか?」
ある日、ふとそう思って、ベランダにフライパンを持ち出した。
午後3時がいちばん気温が高くなるそうなので、正午から30度を超える日を選んで、3時まで卵を置く。 |