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フェティッシュの火曜日
 
黒船が伝えた鋏造り、最後の伝承者

まず指を4本入れるところを作る

和鋏と違って、洋鋏は親指側と残り4本の指側で左右が非対称。まず最初に作るのは、4本の指が入るところ。

赤くなるまで熱した鉄の棒を、ハンマーで叩いて整形していき、鏨(たがね)という道具で片側を切り、それをY字型に伸ばしていく。


赤くなった鉄の温度を聞いたら、「そんなの測ったことないよ」といわれた。

Y字を輪っかにしないといけないのだが、これからどうやってつくるのだろうと見ていると、鳥口という、クチバシのある鳥の頭の形をした台を使い、飴細工のように器用に鉄を曲げていく。

鉄ってこんなに簡単に曲がるんだと思ったが、これが簡単な訳がない。


一切の躊躇無く、ガンガンと振り下ろされるハンマー。

こうして曲げた部分同士を叩いてつなげれば無事丸くなるのだが、同じ素材同士をくっつける作業というのが実は相当難しいらしく、職人同士だとつないだ部分を見ることで、その力量がわかるそうだ。

 

だんだん鋏になっていく

続けて台の角をうまく使って、持つところの細かい形を出していく。設計図も定規も使っていないのに、ハンマー一打ちごとにどんどん鋏へと近づいていく様子が、みていてとてもおもしろい。


そういえば鋏ってこういう形をしていたなあと見ていて思い出す。

ちなみにこの叩いている台は金敷といって、ちょっと考えれば当たり前なのだが、今作っている鋏よりも固くないと、叩くたびに凹んでしまう。そのため金敷も鳥口も鋏の材料である軟鉄よりも固い鋼(はがね)の塊でできている。

そしてそれらは上からいくら叩いても動かないように、見えている部分の倍以上の長さが地中に埋まっているそうだ。関東大震災をも耐えたこれらの道具が、北島さんの技術を支えている。

さらにはハンマーもヤットコも北島さん手作り。ホームセンターなどで売っている道具では仕事に耐えられないので、鍛冶職人は自分で使う道具からつくるものなのだそうだ。


持つところができて、鋏の一部らしくなってきたけれど、どちらかというと髭剃りっぽい。

 

親指側をつくる

四本指が入る側が形になったところで、もう一本の鉄棒を取りだして叩いていく。こっちは親指を入れる部分なので穴はそれほど広くなくていいため、鏨で開けた穴を鳥口とハンマーで伸ばしていくやり方だ。


あのぴょこっとでた部分とか難しそう。

さっきから迷い無くどんどんと進んでいく様子に感心していると、「職人で仕事が遅いやつにはろくなやつがいない。どこを叩こうなんて考えながらやっているようじゃダメだ。昔は同じ所を何度もグルグル叩いていると、山手線かって怒られたもんだ」なんていいながら、短時間で親指側を形にしてしまった。


鋏というよりは、溶けたメガネみたいである。

ちなみに私はさっきからこの記事をグルグルと書き直し続けている。山手線か。

 
 

 
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