茶碗をチーンと叩く。その音がぼくらの耳に届く。
音とは空気の振動なのだった。その振動の源ではかならず何かが震えている。ぼくの叩いたお茶碗も、目にも見えない速さでゆれているのだ。
動きあるところ、音あり。
ならば、どんな動きでもそれを音に変換することができるんじゃあるまいか(動きは音の元だから)。日常のいろんな動きを、音に変換してみたいと思います。
(text by 三土たつお)
まずは実例から: 「往復する動き」
のっけからよく分からないことを言ってしまった。つまりは、日常の動きをむりやり音に変換したいということなのです。
まずは具体例をひとつやってみよう。
行きつ戻りつ
たとえばこの、自宅そばの壁のまえで行ったり来たりを繰り返すムダな動き。これを音に変換すると、こんな風になる。
(ボタンを押すと音が聞こえます)
どうやって変換するのか?
で、どうやったら「往復する動き」がこんな音になるのか。そのために、まず動きを時系列に並び変えてみる。
よく分からない図
上の図は、時間がたつほど下にいくように写真を並べたもの。階段を下りている人か、猿から進化する人間みたいな図に見えるが、そうじゃない。
さらに、これの縦横を反転して繰り返すと、こういうグラフになる。
できあがったグラフ
この三角のギザギザが延々つながった形。これが実は、さっきの音の波形になっているのです。
音の波の形とは
で、音の波形とはいったい何か。
たとえば下の図は、時報のピッピッポーンという音のポーンの部分の波形を表したもの。
時報の「ポーン」の部分
こういう図ってたまに見かけると思う。テープに残された犯人の声を解析する刑事、とかの場面で。
これのどこがどうして「波形」なのか。それは図を拡大してみると分かる。
どんどん拡大すると、波っぽくなった!
なんと!ぎざぎざの波みたいなのが現れたのだった。音は空気の振動で、それは波として空気を伝わる。その波の形を表したものが、音の波形なのだ。
で、適当なものを音の波形だと思って、実際に鳴らしてみたらどんな音が聞こえるんだろうか、ということなのです。