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ロマンの木曜日
 

家具転倒防止邪鬼

なかなか買うタイミングのなかった「家具転倒防止ポール」
いさんで買ってきた。まさかあんな姿になろうとは。

地震国ニッポンに住むからには、日ごろから地震対策は念入りにしたいものだ。避難場所の確認、避難袋の準備、地震保険への加入、そして忘れてならないのは、家具の転倒を防止する処置を施すことだ。

家具の下に防振マットを敷き、食器棚の扉にフックをつけるのはもちろん、背の高い家具には突っ張りポールをかませよう。ところが。

この突っ張りポール、なんだか殺風景に見えてしょうがない。「地震対策なんだ、殺風景とか言わずまじめにやれ!」とおっしゃる向きもあろうが、地震の起きる瞬間よりも圧倒的に長い日常生活を、ポールむき出しで送るのも味気ない。何かおしゃれに隠す方法はないだろうか。

そうだ、あいつがいた。突っ張るならあいつに任せよう。 ―邪鬼に。

乙幡 啓子


 

邪鬼だけにジャッキということで

「邪鬼」といっても大豪院邪鬼や沼澤邪鬼のことではない。それぞれ「魁!!男塾」「大日本プロレス」の関係者だが、ここでの邪鬼は仏教関係者だ。

真っ先に思い浮かぶのは、四天王に踏まれて「あへぇ」「うへぇ」という顔で弱っている鬼の姿だが、今回の試みには、法隆寺五重塔の屋根を支えるこんな邪鬼がうってつけだ。

 

屋根の四隅の梁を支える邪鬼。あのポールそのものではないか!

 

さあモデルは決まった、鉄は熱いうちに打て邪鬼は熱いうちに彫れ。

転倒防止ポールの高さは27cm〜35cmまで可変である。よって低いほう、27cmに合わせて素材を彫る。彫るっつっても木材は使わず発泡スチロールだ。仏教を軽く冒涜気味だ。

可変部分は柔らかい、そう布地でもって補うことにしよう。さあ忙しくなってきた。


方眼紙めいたものにポールの高さを写し、法隆寺の邪鬼をスケッチだ。 想像部分の割合が実に多い邪鬼の完成だ(資料がなかったもので・・・)。

体幹と足が重なり合う部分をアレしたりアレしたりして、型紙を切り抜こう。 切り抜いた型紙をこれまたアレして、発泡スチロールに線画を写し取ろう。

 

アレアレ言ってるのは、重なり合った部分を左は足中心に、右は体中心に切ってしまおうとか何とか・・・言葉では説明しづらい。ふわっとわかっていただければ、あるいはわからなくても幸いである。

電熱式の発泡スチロール切り器でもって、型のとおりに切り抜いて並べる。やがて漠然と不安が押し寄せる。

 

「かお」とか書かないとわからなくなる。

 

強靭な心を養う修行にはもってこい

この不安はどこから来るものか。「これ、ある程度のクオリティでないと無残だな」という気持ちでもあり、そして何より「私何作るんだったっけな?」と我に返ったからだろう。

人間、どんな人物が強いかと言えば「自分の来た道を振り返らない」のも大きなポイントであると言えよう。わたし(アムロ)ー、振り向かないーでー♪と歌いながら作業するといい。


「各面に下書き」が妙に懐かしい。図工の時間を思い出す。 おおまかな削りは電熱式カッターで大胆に。

今回、新ツール導入。電熱式じゃない発泡スチロールカッター!カニの足じゃないよ。

細かい作業がやり易い。さくさくさくさく・・・。

 

このカッター、波型部分が刃かと最初思ったが違う。真っ直ぐな方が刃だ。波型なのは、切ったあとに素材が離れやすいとかなんとかいう理由だ(詳しくは忘れた)。確かに使いやすく、さきっちょが尖っているのも細かい作業に適している。

が、もう少し刃が薄ければもっと切れ味がいいはずだ。造形屋のプロは刃を自分で研いでカスタマイズするという。この記事が終わったら、研いでみよう。

それにしても。仏教関連の像を彫ることに憧れ、いつかは木彫りの仏像を彫ることを趣味にしたいと、ひそかに願っていた。まさかこんな形で早くに実現するとは思っていなかった。彫るうち、心が洗われる。洗われるたびに「私何してんだ?」という思いも寄せては返す。

 

口の中など、凹部分はやはりやりにくい。ところで邪鬼、おばさん化してるが大丈夫か。 顔があまりにひらべった過ぎるので、肉を足して整形だ。宍戸錠だ。
あらかた彫り上げたら、紙やすり(!)で表面をなめらかに。

 

発泡スチロールって、紙やすりで研げるんですね。発泡の“泡”粒がとれてガタガタになるかと思いきや、やさしく擦ればすべすべになる。ご家庭でもお試しください。

さて、次は組み立て&彩色じゃき(広島風に)。

 

 

 
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