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フェティッシュの火曜日
 
卵を断固拒否する祭り


本当にNO!と言えるのか?

栃木県都賀町の鷲宮神社の例大祭にて「強卵式」というものが行なわれる。どんなものかというと「天狗が卵を食えと無理強いするのだが、きっぱりとNO!と言う祭り」なのである。

自分だったらどうだろう?天狗にNO!と言えるだろうか?
もちろん無理だろう。天狗は怪力である。神通力だってある。人なんて文字通りひねりつぶせるだろうし、いやそもそも断ったら気まずい空気が流れるじゃないか。

でも今日はそんなイエスマンな自分にさようならしたいビジネスマンの皆様にお送りするお祭りレポートです。ではどうぞ。

大北 栄人



たわわである。

遠いぞ

たわわである。いきなり枝もたわわに実った柿の木をお見せしたが、これは駅から遠くて人もいなくて目印もなくて途方に暮れていたときに見た柿である。

6時に起きて3時間かけて栃木に来てタクシーも見つからず徒歩30分の道を聞く相手もいなかった。これらがすべて「たまごを断るのを見に行く」という目的にふさわしい代償なのかどうか。そのとき、そばに柿があった。たわわだと思った。


鳥居から本殿までまっすぐに続く道の脇に山車と屋台が

地域のお祭りでした

神社につくと鳥居から本殿まで50mないくらいの参道に屋台が並んでいた。焼きソバ、たい焼き、うん、こりゃ地域の祭りですな。

お囃子が幾重にも重なって聞こえてきて斬新な音楽だなと思ったら5台の山車に分かれてお囃子が演奏されていた。

山車のてっぺんにはドラえもんが乗ってたりする手作り感がいい。ゆるキャラと呼ばれるものよりも、ドラえもんでいっか、的な考えはよりゆるくていいなと思う。


ドラえもん(右の山車)と米俵(左)が並列に扱われることなんてあまりない
あれはアメリカ合衆国国鳥のハクトウワシではないだろうか

「ヤバイ」という若者言葉はこれを称賛するときに大変便利だと思う

神楽が行なわれている

神楽との距離感

境内の奥では神楽が行なわれていて、幣舞、春日舞、と代わる代わる舞いが披露される。

数あった舞の中からすばらしい天磐戸の舞を少しだけ紹介しよう。スサノオの悪行に怒った天照大神が、天磐戸に閉じこもってしまったのでなんとか引っ張り出そう、というみんな大好きなあの話だ。


芸達者なアメノウズメが踊って
ちからもちのタヂカラアオが天岩戸を開くと…

そしたら、天照大神が出てくるんですよー!ワーッ!(心の歓声)ドカーン!(心の祝砲)

 

けっこうな人が集まって見てるんです

どうでしょう?

みなさんもうすうす感づいているかとは思うが、この神楽というものはおそろしく地味である。

現代舞踏のように「えっ!?こんな動きもするの!?」ということもなく、じっといくつかの舞を目をこらして見ているとぼんやりと違いがわかって、「ほう…。」と小さくため息をもらしてみるくらいの振幅である。

しかしここにはけっこうな人が集まっている。もしかしてみんなもんのすごい神楽ファン!?と思っていたが答えはすぐに出た。もち撒きがあるのだ。


天狗様も撒く。ほとんどの舞で何かを撒く。

この祭り、とにかく撒く

撒く、撒く。撒きまくる。一舞台に一回は何かが撒かれる。お供えされた餅だったりお菓子だったり、破魔矢だったり。神楽の地味さが餅撒きのエンターテインメント性で補われていたのだ。

ところでこの祭り(神社固有なのか地域性なのかはわからないが)神楽以外でもとにかくよく撒く。

神楽が終わってお囃子タイムが再び始まっても、わっ!と歓声があちこちで上っている。撒いている。


5台ある山車からお囃子とともに一斉にまく。あちこちで盛り上がっている。

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