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フェティッシュの火曜日
 
卵を断固拒否する祭り

清めの御神酒を飲め、飲め、と声を荒げる天狗様

まず酒を勧める

天狗様が出てきて清めの御神酒の儀が始まる。清めと言いつつも一升瓶をラッパのみさせるのだから天狗様のスケール観に恐れ入る。こりゃあ間違いなく人くらいひねりつぶすだろう。卵なんて断ったりでもしたら、それはもう!あんた!


さー、飲め、飲むのじゃー!

天狗様はけっこう積極的

うひーっ。こちらもそのままでがぶがぶ飲まされてます。
「入ってねーぞ!」「飲んで飲んで飲んで!」「大丈夫かー?」と野次と笑いが絶えない

神主さんも笑っていて楽しそうな空気ですが

アットホームな空気で天狗アルハラを

頂戴人の方々もこの地域の人のようで見ているみんなでゲラゲラ笑っている。お酒の味も厳しさも知らない子供も声をあげて手を叩いている。

だが、目の前にいるのは天狗なんだ!天狗が一升瓶の底を持ち上げ口に清酒を流し込んできているのだ!「昨日の方がもっと飲んだってかー?」と野次が飛んでゲラゲラゲラー。多分、僕の想像だが、天狗はゾウだってひねりつぶせるのではないだろうか!?


何人かは飲み干した。空になるたび大人も子供もワーッ!と拍手し、「ええぞー!」と歓声が上る。

いよいよ卵ですよ!

「あれ卵じゃない?」「強卵式だから卵じゃない?」と周囲から聞こえてきたが卵である。だって卵のイベントなんだもの、と言わんばかりに主役の卵登場。


そしていよいよ卵が頂戴人の前に並べられる

天狗様も同様に卵を勧める。酒でさえあれだけ飲んだのだ。よもや卵を断るまい…といったところだろうか。

食べるのじゃー!

「その卵はわが神、天日鷲命(あめのひわしのみこと)からのありがたき卵である。一個残さず食べるのじゃ。さー、食べろ。食べるのじゃー!」

おお、強いている!これぞ無理強いというべき語気が「〜のじゃー!」に顕れている。周囲からも「食べるのじゃー!」と歓声が上る。おお、流行っている。流行語大賞に「食べるのじゃー」む、どうだろう!


頂戴人「(食べられません)…」 天狗「(エッ!?)…」

戸惑う天狗

「下を見ず、食べるのじゃ!」「この卵を食べれば無病息災、なぜ食べぬ!」

ところでさっきのお酒は清めのため。卵を食べろというのは「無病息災だから食べろ」と天狗様が言ってたので、こちらもよかれと思って勧めていたのだろう。

「さあ、さあ、下を見ずにさあ食べろ!」ヒステリックに天狗様が叫ぶ。何だかかわいそうになってきた。


「(食べられません)…」と下を向く

手のひらを返すように

ピシャリ!である。ひれ伏し物言わぬ、という態度であるが音をあてるならピシャリ!と断固拒否の姿勢。あの天狗相手に立派である。NO!と言えた日本人たち、おめでとうサムライジャパン!

「なーぜ、食べぬ!!」天狗様の語気がさらに荒まる。そりゃそうだろう。きつい酒でさえあれだけ飲んだのに卵でNO!と。

ここでどれくらいピシャリしてるか見比べてみよう。


〜 酒 〜


「いやー、きついっすわー」と和やかな空気

〜 たまご 〜


「(食べられません)…」「うぉー!なぜじゃー!?」

なぜ食べないのかをマイクを通じて天狗様に説明
「余は満足じゃ。」ふーっ。天狗が怒って死人が出たりしなくてよかった。

気持ちのすれ違いだった

そりゃあ天狗様も困るだろう。なんで!?もしかしてお塩とか要った!?くらいの気持ちだったろう。お腹とか痛いん?と心配していたのかもしれない。

でも一通り拒否したら頂戴人の一人から声明が。「天日鷲命の使いである、ありがたき鳥、卵を食べるわけにはいきません。」と。そして、町と町民と神社の発展を祈願して神前にお供えいたします、と述べた。頂戴人には頂戴人の思いがあったのだ。要は気持ちのすれ違いだったわけだ。

「なるほど、よき心がけじゃ。このことはわが神、天日鷲命に伝え申す。余は満足じゃ、余は満足じゃー、わっはっはっ(高笑い)!」と天狗様。めでたしめでたし。

「余は満足じゃ」とナチュラルに言った人を生まれて初めて生で見れたので大変感激した。そして儀式は無事に終わり、ああ、天狗様が怒り狂って頂戴人の方々をひねりつぶしたりねじきったりしないでよかったな、と思ったのだった。


ところで食べなかった卵は配られるんです

お供えしたあとの卵は参杯のみなさんに配られる。と、事前に調べていて楽しみにしてた。卵を拒否するのを見たら、ゆで卵を一個もらえるのだ。わー、なんだかわからなくて素敵だなー、とぜひ欲しかった、楽しみだった。


今年からゆで卵は撒くことになったから、と

なんとここでもまた撒きがあった!

下がって下がって!と整理が入っておかしいなと思ったら今年からゆで卵の配布方法が撒きになったそうだ。

あれだけ撒いといてここでも撒くのか!どれだけ好きなんだ!入手確率がぐっと下がったことで、僕の怒りは撒きもの好きの町民性にわいてきた。


肩車された中学生は「目立って恥ずかしい!」と。思春期!
満員電車なみですが、みなさん、もらえるのゆで卵ですよ

「たまごーっ!」「たーまーごーっ!」と卵を求める観衆の絶叫が聞こえる(ほんとに)

卵の落下地点には無数に伸びる手が!ここだけ切り取れば地獄絵図のようでもある。

卵が落ちたら周囲はパニック。金か!?宝石か!?いや、ゆで卵だ!

と言っても最も卵が近づいたときの顔がこれ。目に希望が宿っている。(結果は当然→×ぺけ)

かあちゃんにみやげ、持って帰れず

そりゃあ欲しかった。ここまで来たのだからゆで卵が欲しかった。しかしそのときの僕に「そういえば家の冷蔵庫にあと8個くらい卵あったな」「明日の朝二個食うたろ」そんな邪念がふっと湧いてしまったのが敗因だったのだろう。僕のほうに卵は飛んでこなかった。

今日のゆで卵の価値を信じることができた者だけ、ゆで卵を手に入れられた。かっこつけて書いたのでバランスをとるために、僕はこの日痔に悩まされていたことを唐突だが告白しておこう。


卵(型の何かでした)をキャッチできた人は、ほんとのゆで卵と交換です
好きなんだろうか、もしかしたらみんなただただゆで卵が大好きなんだろうか

そして、受け渡し現場で何が行なわれているのかを見た!(痔に悩まされながら)

「一つちょーだい」「毎年来てんだもの」(不正)

「あたしも!」(つづく不正)

雲ひとつないお天気でした

しかし不正といっても「○○のおばあちゃんじゃしゃーねーなー」といった付き合いの範疇の話なのでもちろんOKである。実家の近くとかにこういう祭りがあったらいいだろなーと思う地域に根付いた暖かいお祭りだった。

この日はよく晴れていて気持ちがいい日だった。NO!ときっぱり言ったのを見れて心も晴れる思いだった。みなさんもたまには朝食に出てくるゆで卵にNO!と言ってみてはいかがだろう?みなさんのお母さんは怒るだろうが、多分とても気持ちのいい一日を過ごせることだろう。(お母さんは気持ちよくないだろうけれど!)


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