さっそく軌道修正
アクは思ったほど出なかったが、脂の塊がなかなか溶けてくれないのでさすがに焦りを感じ始めた。
まさか、このデローンな状態のまま最後まで行く気じゃなかろうな。やっぱり少しは切ったりするべきだったろうか。今からでも遅くはない、切るか。いや、でも脂の塊をまな板に乗せるのはちょっとな…。
形状にすっかり安心したので、このまましばらく放置することにした(火力は超弱火)。
ちなみに匂いはほぼゼロだ。たまに、前を通っただけで「動物園の匂い?」と思ってしまうような豚骨ラーメン屋があり、ちょっと心配していたのだが杞憂に終わったようである。「骨は臭いかもしれないが背脂は臭くない!」ということが分かっただけで、やった甲斐があるというものだ。
で、2時間後。背脂がどう変化していたかというと。
ちょっとどうかと思うほどに興奮してしまった。どうだろう。これ、もうチャッチャとやっちゃってもいいんじゃないでしょうか。
では、さっそく始めましょう
これ以上煮続けたら脂が全て液体になってしまう、というところで火を止めた。と同時に、おたまを「穴あき」へと持ち替える。
店ではチャッチャの際に大きな網を使うが、個人の家で豪快に網を使ったのでは後々の掃除が面倒だ。スケールこそ小さいが、今回はこの穴あきおたまでチャッチャをこぢんまりと楽しむとしよう。
さて、通常はラーメンにしか用いない「背脂チャッチャ」を日常に引きずり込むために、まずは何に背脂を振りかけるべきか。答えはわりと早く出た。
今の時期、やたらとおいしいのがカブだ。あっさりと優しい味のカブの味噌汁の上に背脂をチャッチャとしたら一体どんなことになるんだろう。
ラーメンのように、コクが増したりするんだろうか。あっさり味の味噌汁が、一気に豚汁のようになったりしたらどうしよう。ああ、どうしよう。
お椀の中はどんなことになっているのやら。覗いて見るのが楽しみなような怖いような、そんなドキドキした気持ちで、おたまをお椀の上から外した。
果たして、雪の平原は現れてくれるんだろうか。