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ひらめきの月曜日
 
しもつかれ連食で無病息災
 


 栃木県ほか、北関東地方の郷土食として知られる「しもつかれ」。そこそこ知られているものだと思うが、それは独特の名前の響きと、なんと言ってもインパクトあるビジュアルによるところが強いような気がする。

 残念ながら、「おいしいから」という理由で知られているわけではなさそうだ。まああれだ、なぜか終電前の駅のホームで似たようなものを見たりすることがあるわけだ。

 そんな不遇の郷土食である「しもつかれ」。ただ、見た目が今ひとつということで不遇に陥るという点については、シンパシーを感じないわけでもない。

 実は健康にもよいと言われるこの料理。なんとなく食べないままでいた「しもつかれ」を食べ歩いてみた。

小野法師丸



●しもつかれ食べまくって病気知らず

  関東北部の郷土料理「しもつかれ」。鮭の頭や大豆と、「鬼おろし」という荒目のおろし器で大根や人参をおろしたものとを合わせて、酒粕とともに煮込んだ料理である。

 こうして書けば、地方に昔から伝わる煮物料理だと言えるわけだが、世の中ではどうも見た目のアレっぽさばかりが先走っているように思える。かく言う私もビジュアル面での印象ばかりに囚われていた口であるので、、今回はちゃんと向き合ってみたい。


「しもつかれ」の名もアピール

 最初に訪れたのは栃木県の道の駅「みかも」。レストランコーナーには写真のような立て看板が出ていた。「全国郷土料理百選」とは、農林水産省が「全国各地の農山漁村で脈々と受け継がれてきた郷土料理」の中から、「国民的に支持されうる郷土料理」を選定したものだ(参考ページ)。

 国民的に支持されうる可能性を秘めた「しもつかれ」。そう、この記事も誤解を解くための一助となればいい。ここでは同じく選定された「ちたけそば」と一緒にふるまわれるようだ。


「しもつかれ」の字が小さいのが気になる
セットでやってきたあいつと対面

 「ちたけそば」とは、裂くと乳白色の汁が出てくることから「乳茸(チタケ)」と呼ばれるキノコを汁に使ったそばのことだ。地方色豊かなキノコを使ったおそば、いかにもおいしそうだ。

 アピールする張り紙では「ちたけそば」の字の大きさに対して、「しもつかれ」の字がずいぶん小さいことが気になるが、今回はざるそばタイプを注文してみた。お盆の右下にちょこんと小鉢に入っているのが「しもつかれ」だ。

 ちょっと肩身が狭そうだが、今回は君が主役なのだ。もっと堂々としたまえ。


うん、割と大丈夫だよね

 アップで撮ってみた一枚。うん、オッケーオッケー、こういう煮物、あるよね。大丈夫大丈夫、ありだと思うよ。前向きな姿勢で向き合えるように自分にそう言い聞かせる。

 今回のテーマは「しもつかれ連食で無病息災」。しもつかれについて調べていてわかったことなのだが、とても体によいとされているらしく、「三軒のしもつかれを食べると中気(脳卒中)にならない」と言い伝わる地域もあるそうなのだ。

 素晴らしいことではないか。知識面でのプラス要素も加味した上で、実際に食べてみた。


すごい顔して食べてた自分
これはありですよ!

 左の写真、撮影したものをあとから見て、こんな顔で食べようとしていた自分に驚いた。確かに未知のものを食べる緊張感はあったが、それにしてもずいぶん怪訝そうだ。

 しかし、実際に口にしてみて印象は変わる。これはありだ。

 大根と人参という煮物としては定番の野菜。それに合わせて鮭の風味がよく効いている。さらには酒粕が入っていることで独特のコクが出て、実に深みのある味わいになっているではないか。

 「お、うまいぞ」と普通に口をついて出た。大丈夫です、いけますよこれは。

 「ちたけそば」もキノコから食べたことのない感じのダシが出ていて、おいしくいただいた。よしよし、ちょっとドキドキしていたが、まずは安心してスタートを切ることができた。

 続いてやってきたのは、同じく道の駅である「どまんなかたぬま」。地元の方が作った野菜や食べ物が販売されているコーナーに「しもつかれ」がないかと探してみた。

 

日本列島のどまんなかにあるらしい
ポップつきでアピールされてました

 新鮮な野菜などがゴロゴロしている中、調理済みの食べ物コーナーにあった「しもつかれ」。郷土料理としてアピールするポップも立てられている押しっぷり。


げっ、7軒も!

 ポップには「しもつかれを7軒食べ歩くと病気にならない」と書いてある。三軒で中気知らずという言い伝えもあるようだが、七軒になると病気に対してオールマイティーになるということだろうか。

 結構大変かもしれないが、病気にならないのならチャレンジしてみたい。ここでは二種類の「しもつかれ」を手に入れることができた。


手作りをアピール
ちょ、ちょっときてますでしょうか…

 まずは八百春商店さんが作ったという「しもつかれ」。具材はオーソドックスだが、酒粕の量が先ほど食べたものより多いのか、その点がビジュアル面に影響している気がする。

 実際に食べてみる。…味のベースはもちろん先ほどのものと似ているのだが、こちらの方が全体的に濃厚で、鮭や酒粕の風味が強い。それに対して甘みは先ほどのものより控えめ。

 ごはんに合いそうな味とも言える。そうそう、「しもつかれ」の名称の由来は諸説あるそうだが、中には栃木県地域の旧名である「下野(しもつけ)の国のカレー」ということで、「しもつけカレー」、さらには「しもつかれ」となったという冗談めいた説もあるらしい。

 実際、ごはんと一緒に食べることもあるそうなので、そう言えなくもないのかもしれない。


たぬまで見つけたタイプ2
ごった煮感ある、やや安心のビジュアル

 続いては、ストアーしんみせ製の「しもつかれ」。八百春商店製と比べると、見た目のアレっぽさがややマイルドになっていると思う。やはり酒粕の量がビジュアル面には相関性が強いのかもしれない。

 味わいも八百春製と比べるとやさしい感じ。くっきりとした個性が強いものを食べたい場合は八百春製がよさそうであるのに対し、しんみせ製は初心者向けとも言えるだろう。


「落花生」の文字が見える原材料名欄
真ん中の君がそうだね

 材料として特徴的なのは落花生。確かに定番材料の大豆に混ざって、よく見ると落花生が混じっている。それだけ食べると確かにピーナッツ。

 「しもつかれ」に基本的なレシピはあるものの、作り手によって味が結構違うとも言われているようで、そのあたりも食べ比べには面白いところ。この「しもつかれ」は落花生が入っていることで、全体的にマイルドな感じがしたのかもしれない。


健康になってきたぞ!

 さて、これで三軒の「しもつかれ」を味わった。中気はこれでクリアだ。

 ある食べ物に対して「体にいい、病気にならない」と言われるのは、味が今ひとつであることと引き換えの言い訳に使われることもあると思うが、「しもつかれ」の場合、少なくとも味についてはそんな言い訳は必要ないと思う。コクのある味わいの煮物として、純粋においしい。

 ただ、体にいいのも事実であろう。自分自身、目がぱっちりしてきてなんだか元気になってきた気分。さらに食べ重ねて病気を予防したい。

 これまで道の駅をまわってきたが、地元スーパーにも「しもつかれ」は売られているようだ。そういうわけで新たな味を求めた、スーパーをいろいろとまわってみた。


この地域以外では見られないアピールの仕方
酒粕のラインナップが充実

 すぐに見つかると思っていた「しもつかれ」だが、どこのスーパーでも置いてあるというわけではないようだ。今回訪れたのは12月初旬、「しもつかれ」のメインシーズンはもう少し冬が深まってからだそうなので、時期も関係しているのかもしれない。

 それでも「しもつかれ」が根付く土地としての特徴は売り場で見られた。大豆のポップに「しもつかれに!!」とあるのはこの地域ならでは。多くの店で「しもつかれ」の材料となる酒粕が充実していたのも特徴と言えるだろうか。


ついに発見しもつかれ
ゴロンゴロンしてます

 それでも何軒目かで、冷蔵ケースの最下段で大々的に売り出されているのを発見。ビニールのパックに入れられてプリプリとテカっている「しもつかれ」は、これまで見てきたものとは違う雰囲気をかもし出していた。

 もちろんこれも購入。自宅で器に出してみた。


しばしばこうした商品で見かける「高級」との表示あり
ねっとり感が強いタイプ

 ビニールパックに入っているときはツルツルテカテカしたテクスチャでおよそ「しつもかれ」らしくないのだが、器に出してみると、それっぽさが一気にヒートアップ。これまでのものと比べると汁っぽさが少なめで、ねっとりとした感じがする。

 口にしてみよう。…おお、これは手堅くおいしい。

 鮭や酒粕の風味はこれまでのものの中でちょうど中間くらいにあたるだろうか。物としても最も入手しやすそうで、ある意味定番的な味と言えるのかも知れない。賞味期限も開封しなければ購入後二ヶ月くらいは持つようで、使い勝手もよさそうだ。

 かなりいろいろな店をまわったのだが、なかなか新種の発見には至らず。すっかり暗くなってから見つけた最後の「しもつかれ」もスーパーで発見したものだ。


知らない土地のスーパー巡りは楽しい
あったあったよー

 惣菜売り場にあった「しもつかれ」。先ほどのビニールパックタイプのものはいくつかの店でもあったのだが、こうした手作り風のものは今回まわった中ではレアだった。

 「もっとあったんですが、結構売れてあと4つです」という感じの並び方。地元に定着している食べ物という感じを受けた。


やっと見つけた五つ目
もう慣れましたよね

 有限会社のなか製の「しもつかれ」。これだけ連続していろいろな「しもつかれ」の写真を見ると、イメージ的な呪縛が解けてきたと思うのだが、ご覧になってどうだろうか。もうこれは普通に野菜と豆の煮物ではないか。

 味付けはストアーしんみせ製のものと似ているように感じたこの「しもつかれ」。よく煮込まれてはいるが、今回の中で最も具材感が残っているものだと感じた。


地味に新顔材料入り

 原材料欄でこれまでなかった「油揚」の表記を発見。確かに入っていても何の違和感もない具材だと思う。このあたり、あくまで基本の「しもつかれ」を崩さない範囲で、少しずついろいろな変化が加えられるのだろう。

ほら、きっともう大丈夫

何かに対して抵抗を感じるという時、その原因はその対象をよく知らないということだったりする。今回の取材をするまで、私も「しもつかれ」に対してそうだったわけだが、食べてしまえば普通においしい煮物だった。

 「しもつかれを七軒食べ歩くと病気にならない」とも言われるようだが、今回は五つまで食べることができた。まあまあ病気に強くなっていればいいなと思います。


 
 
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