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ひらめきの月曜日
 
母伝説・ボンゴレそばとおでんカレー
あのとき母は、おいしいボンゴレ・ロッソを作ろうとしていた

ありていに言うと、母が昔、スパゲティ用に作ったソースを蕎麦にかけたのだ。カレーに具として前日のおでんを入れたのだ。

子どもの頃の私はショックだった。そりゃないよ、と思った。実際あまり美味しくなかったと覚えているのだが、妹弟は文句を言わずに食べていた気もする。

あの料理は何だったんだろう。再現して15年ぶりぐらいで食べてみることにした。

母と、そして私の成長が見えた。

(text by 古賀及子

どこの家にもあるはずだ、そういうの

こういう伝説的母料理というのはどの家庭にもあるものだと思っていた。が、ちょっと周りに聞いてもあまり同様の話は出てこない。

大阪のおかんはお弁当に手抜きをする、その手抜き具合が伝説になっているというようなことをテレビでやっていたし(例えばお弁当の具が全部たくあん、とか)、我が家だけの話ではないと思うのだが実際はどうなんだろう。


左から、母と なんかもやもやした置きものと私。参考のつもりで差し込んだ写真が話の腰をおるぐらいツッコミどころ満載で恐縮だが、とりあえずここはスルー

母の料理、今と昔

名誉のためにまず言うが、母はとても料理がうまい。見たことのないような食材もよく知っているし、面倒で手のかかる料理もしっかりおいしく作る。あるものでチャッチャというのももちろん得意だ。

が、それは私がだいたい高校を卒業したぐらいからの話だと思うのだ。

そう、私が子どもの頃はあまり料理がうまくなかった。主婦としての経験を積んで徐々に料理のスキルを上げていったっぽい。

かくいう私も結婚して自分だけでない家族用の食事も作るようになったが料理は下手なままだ。母のことを思って今は「なるほど、こういうことか」と思う。私も母と同じように最終的には料理が上手くなってればいいなとも思う。


去年、出産の際に久しぶりに長期間実家で暮らしたが その間は母の料理の写真ばかりを撮っていた

さて、ボンゴレそばについてだ

で、ボンゴレそば、である。

これは私が小学校5年か6年ぐらい、土曜の昼ごはんあたりで出されたメニューだったと記憶している。

母の実家が魚屋を営んでいるため、我が家の食卓にはよく魚介が出た。この日母はいつものように送られてきたアサリを使ってスパゲティにでもしようと思ったようだ。

アサリとホールトマトでソースを作る(このスパゲティー、ボンゴレ・ロッソっていうみたいですね)。

ところが。


当時を再現。多分こんな感じだったろうと、アサリを炒め… ホールトマトを入れてコンソメ、塩コショウで味付け

さあ、ソースの準備ができてきた。スパゲティを茹でないと……と思ったら、なんと自宅にスパゲティがない。

買いに行くにもコンビニやスーパーは車を出さねばならない距離にある。面倒だし、5人の子ども(私は5人兄弟なんです)が食事を今かと待っている。

どうしようと、と思った母が見つけたのが、そばだった。


あ、そば

母は、迷わずそばをゆでた。

この間、子どもたちに何らかのアナウンス(スパゲティがなかったから、そばにトマトソースかけるからねー、等の)があったかどうかは忘れてしまった。

とにかく そうして出てきたものが、アサリの入ったトマトソースがそばにからんでいたものだったのだ。

ボンゴレそばである。


びびってそばを少量にしたところ、意外に普通のビジュアルに

なんか、アリな感じ?

当時は、えーっ!? と思った。ありえない、ありえないですよ お母さん! という気持ちだった。母にも料理にも非常な反発を感じたことをよく覚えている。

味も美味しくなかった。好き嫌いのほとんどない私でも確か完食できなかった。でも残りは妹弟が食べていた! おいしいおいしいといっていた妹や弟にも強い驚きを感じた。

15年以上を経て、今ここによみがえったボンゴレそば。初見で「あれ?」と思った。なんだか、違和感がない。美味しそう……じゃない?


確かにスパゲティのソースにそばがからんでいるけど…

これ、アリだ

食べたら、美味しかった。えー? 子どものとき、あんなに反発心を感じたのに。当時のことを母や妹弟に聞いても誰も覚えていなかったのを、しつこく覚えているほど忌々しがっていた料理だったのにー。

アサリの出汁がソースに凝縮され、そば粉の独特の風味にからむ。これなら、自分で食べるなら十分アリ、いや、家族にもアリ、いやいや、店でもアリなんじゃないか。

と思って、はて? と検索してみたら、実際にそれっぽい料理がかなり引っかかってきた(検索「ボンゴレ そば」)。どの写真を見てもとても美味しそうだし、ブログなどで「美味しい」と書いてある。

「大人の味」という言葉がある。確かにそばの風味は大人の味と言えるし、それで私は食が進まなかったのかもしれない。いや、でも他の妹弟たちは美味しいと平らげていたのだった。

なんで当時の私はあんなに反発したんだろう。

考えながら、母の伝説の料理も2品目、おでんカレ−を食べてみます。


びびってそばはいつもの1人前の4分の1ぐらいしかゆでていませんでした

ちなみに、そばの量を少なめにしたため、アサリのソースの方がかなり余った。今うちにスパゲティないし、どうしようかなと考えながら、

「そうだ、そばにかければいいじゃん。そばならまだ余ってるし」

と普通に思ったのだった。


  おでんカレーはどうだ >
 


 
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