二件目はグリルSASAYA

後ろ髪を引っ張られたりなびかせたりしながら居酒屋ほり川を後にして、次に向かったのは「グリルSASAYA」という洋食屋さん。養殖屋ならともかく洋食屋で焼津割ってどうなんだろうと思ったのだが、ここも青年会議所のお薦めなのだ。

焼津割というのは、基本的に出汁を料理に使っているお店が出すものだと思っていたのだが、この店はどうなんだろう。オムライスやトンカツに出汁は使わないと思うのだが。

ロックでいただくオリジナルの焼津割

太いまゆ毛が好印象な店主に、いろいろとお話を伺ってみた。

常連さんで青年会議所の方がいて、その人から話をいただいて、これはおもしろそうだと。好奇心からですね。

うちはセオリー無視のオリジナルです。焼津割っていう言葉のイメージから考えたのですが、やっぱり漁師が飲むような男の酒ということで、強い酒、ロックかなと。

グラスに氷をいれて、そこに昆布か柚子の焼酎をいれます。そして濃縮したカツオ出汁を少し入れて風味をつけるんです。

出汁っていうのは料理でもあくまで引き立て役なので、焼津割でも特徴のある焼酎の味をを引き立てるために出汁を使ってみました。

まずは昆布酎の焼津割をいただく

果たしてでてきた２種類の焼津割は、確かにロック。見た目でいえばわずかに柚子のほうが色が濃い。

まずは昆布の方からいただいてみたのだが、観光案内所のおっちゃんが焼津割に昆布を入れるといっていたくらいだから相性はいい。前知識なしに飲むと噴き出すかもしれないが。

さっきのお店で飲んだものに比べると、昆布酎に出汁という組み合わせなので甘さが強く感じられ、飲めば飲むほどに、ここに梅干しやネギなどの具を入れたくなる、お吸い物のような不思議なお酒である。

ロックなので度数が強いにもかかわらず、アルコールっぽさを感じないのは、やっぱり濃縮したカツオ出汁の手柄なのだろう。

続けて柚子酎の焼津割とオムライス

続いて飲んだ柚子酎の焼津割のほうがピンときた。カツオ出汁に柚子の風味で、マツタケの土瓶蒸しを思い出させる味なのだ。オリジナルの焼津割を情熱持って研究した結果、あさっての方向を向いた味になっているようだが、好みでいえばこっちの方が好きである。一方友人は「昆布の方が長く楽しめる」と主張している。

どっちにせよ、お酒を飲んで白いご飯がほしくなったのは初めてかもしれない。

「ここの焼津割は、飲めば飲むほどになんだかお腹が空いてくるね」なんて友人といっていたタイミングで登場したのが、例のオムライス。

白いご飯の上に、出汁巻き卵のような味付けのふわふわ卵がたっぷりと乗っており、そこにカツオフレーク、万能ねぎ、大葉、刻み海苔、カリカリ梅、カリカリじゃない梅が散らされている。あっさりとしたその味が柚子酎の焼津割と相性最高。

正直、ここの焼津割を飲んだ時、そのインパクトにこの店の料理でこの酒に合うものはないんじゃないかと思ったが、この組み合わせは、子供の頃、母親が土曜日の昼食に作った焼きそばと牛乳くらいばっちり合う。

この店の焼津割、日本発、いや焼津発のカクテルとして、うまくいけばニューヨークあたりで人気が出るような気がする。「ナマグサーイ」っていわれるかもしれないけれど。