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フェティッシュの火曜日
 
エレベーターの床下にあるもの

この扉の向こう

 エレベーターを待つあいだ、扉の窓からついつい中を覗き込んでしまう。扉の中に広がるあの空間。上階にいるとき、そこに広がっているのはただただ深い闇なのだけれども、自分が1階にいるときには、床下が見える。

 あの床下が好きだ。床下が好きというか、たいていの床下には工具だのオイル缶だの、何か物が置いてあって、誰かが入った痕跡がある。その光景が好きだ。

(text by 石川 大樹



探偵か考古学者気分でめぐるエレベーターの床下

 僕があの光景に惹かれる理由は、人がいた匂いがするからだ。僕は入ることができないあの場所だけど、最近誰かが入って、何か作業をしたあとがある。その人たちが何をしたのかはわからないけど、今では道具の一部だけが残されている。

 誰もいない部屋に手がかりだけが残されているこの状況は、密室ものの推理小説に近いのではないか。あるいは、遺跡に残された道具だけを元に当時の暮らしを推測する考古学に近いのではないか。そんな思いもあって、とても知的好奇心を刺激されるのだ。


たとえばこんなふう

 そんなエレベーターの下の光景を味わうべく、いろんなエレベーターを見て回った。特に発見も情報もない記事ですが、なんとなく謎の漂う雰囲気を、みなさんも味わっていただけたらと思います。そしてここでいったい何が行われたのか、一緒に想像してみてください。

 

 

東京メトロ豊洲駅

 最初に訪れたのは、東京メトロ豊洲駅のエレベーター。東芝製。(メーカーは情報として書いていますが、必ずしもメーカー=メンテナンス会社ではないので、床下に物を置いた人がその会社の人かどうかはわかりません)

 床下の様子は、見下ろし図にして説明しよう。


※図中にある二重丸は、緩衝器。エレベーターの機械の一部。

(1) 隅に雑多なものが積まれている。ほうき、ちりとり、そしてたくさんある灰色のものはなんだろう。持ち手がついている。重り?黄色い器具(マスタードのチューブのようなもの)は、おそらく機械部分にオイルを差すための器具だろう。

(2) 金属製のなにか。部品なのか、道具なのか。

(3) 角にはオイル(?)缶が置かれている。手前にひとつと、陰になっているがその奥にもひとつ。


全体像はこちら

にじみでる几帳面さ

 いろいろなものが置かれているが、すべて部屋の隅にまとめられ、きれいに整頓された印象を受ける。
 特にたくさんある重り(?)をきれいに整列して立てかけているあたり、管理者の几帳面な性格が読み取れる。

 このエレベーターは階ごとに扉の方向が違うタイプ。とはいえ、あとから出てくるほかのエレベーターと比べてみても、扉の数によって道具の置き方が違うということはなさそうだ。


 こうやって図に描き下ろしてみると、密室殺人と考古学の他にもうひとつ思い出すものがあった。ロールプレイングゲームの攻略本についてくる、ダンジョンマップだ。ゲーム抜きでただ眺めているだけでおもしろかった(そのせいでどんどん読み進めてしまって、ゲームの結末がわかってしまったりするのだ)。探偵、考古学者、ダンジョン探検と、思い思いの感情移入で楽しんでいただければと思います。

 

 

ゆりかもめ豊洲駅

ゆりかもめ豊洲駅のエレベーター。FUJITEC製。
道路をはさんでエレベーターが2つあり、どちらも同じ配置で置かれていた。


(1)脚立。


ガラス越しに見たところ

几帳面よりさらに几帳面

シンプル。物がない。エレベーターのメンテナンス作業には、オイル差し、ボルト締め、各部の点検、消耗部品の交換などいろいろある。脚立以外にもメンテに必要な道具というのは必ずあるはずで、それらがここに置いていないということは、すべて持ち帰られているということだ。整頓された床下は几帳面さを感じさせるが、物がないというのはそれ以上に几帳面な印象を受ける。

 

 

ゆりかもめ新豊洲駅

 ゆりかもめ新豊洲駅のエレベーター。FUJITEC製。
 同じゆりかもめの豊洲駅からは歩いても数分程度ですむ距離なのだが、エレベーターの床下を比べるとずいぶん印象が違う。


(1)脚立。

(2)脚立の足元に、なにか針金でくくられたコンクリート板のようなものが置かれている。これもなにかの重りだろうか。

(3)壁面の一部にくぼんだ部分があり、そこが道具置き場として使われている。置かれているのは四角いオイル缶と、丸い方の缶はペンキ缶のようだ。そして手前で巻かれているケーブルは、照明器具。

(4)端に穴が開いている。穴の奥まで確認することはできなかったが、わざわざ空けられているということは、何かがあるのだろう。


チェック模様は撮影者のコートが反射しています

物置と謎の穴

 物が多いにもかかわらず、壁面に物置に使えるスペースが存在しているため、整理された印象を受ける。

 床に開いた穴についてはまったく謎だが、壁のくぼみと同様、何かを格納するためのスペースだろうか。あるいはあの奥にも機械があり、メンテするための作業口である可能性もある。

 ゲームだったら(2)の重りを穴に投げ込むのが正解なのだが、現実ではたぶん不正解だ。

 

ゆりかもめ新豊洲駅

 ゆりかもめ新豊洲駅にはもうひとつエレベーターがある。道を挟んで2つの出口があるからだ。ゆりかもめ豊洲駅の例もそうだったが、同じ駅のエレベーターの床下は、なんとなく雰囲気が似ている。メンテナンスの担当者が同じだから、その性格が現れるのだろうか。


(1)塩ビ製と思われる、謎の棒が2本。どちらも先端(写真手前)がゆるく曲がっており、二股に分かれている。

(2)蓋をガムテープで補強された缶で、ペンキの付着がないところを見るとおそらくオイル缶。ガムテープは、貼り方を見るに、蓋を缶にとめるためではなくて、さび付いた蓋自体の補強のために貼られている。(あるいは識別のための目印?)

(3)青い金属製の箱は、間違いなく工具箱だろう。一方、隣の紙製と思われる細長いもの、これはただのゴミである。写真には写らなかったが、「ゆりかもめ豊洲・ゴムクッション」と書かれたラベルが貼られていた。ゴムクッションのパッケージのゴミだろう。

(4)脚立。


物置スペースは写真左。(物は機械の陰であまり見えない)

塩ビ棒が謎

 こちらも、物置スペースのおかげでいくぶん整理された印象を受ける。

 この床下の最大の謎は、なんといっても2本の塩ビの棒だ。ただの棒であれば交換部品とも解釈できそうだが、先端が二股になっている点、また、棒自体がすでに使い込まれた感じであることから、どうも道具であるように思う。形状から察するに、なにかマジックハンド的な使い方をするものだろうか。たとえば手のとどかない機械の奥からケーブルをたぐり寄せるためとか。


 

 
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