いわし専門店をはじめたきっかけ
魚一種類の専門店というと、マグロとかフグ、あるいはウナギなどの高価な魚が多い。なぜ博士はあえていわしを選んだのかを聞いてみた。
博士が料理の世界に入ったのは遅く、なんと42歳の時。それまでやっていた商売に区切りをつけ、「料理が好きだから」というシンプルな理由で、浅草橋の割烹料理屋で修業を開始した。
42歳というと今の私の年齢よりもだいぶ上なので、私もやる気さえあればまだ間に合うということか。いや、あと十年待っても大丈夫。
二年間の修業を終えて自分で店を持とうと思った時に、思いついたのがいわしの専門店。お店をはじめたのは昭和62年。今でこそいわし料理の専門店も増えてきたが、その当時、いわしの専門店はほとんど存在していなかった。
その時代、いわしはたくさん獲れていたので、安くて栄養価の高い魚だったのだが、食材としての注目度はそれほど高くなかった。確かに私が子供のころはいわしっていうと安い魚の代名詞みたいなところがあった気がする。そういえば私がはじめて三枚に下ろした魚は、3匹100円のスーパーで買ってきたいわしだ。
いわしのおいしさを知っていた博士は「こんなにおいしい魚なのに、世間の評価が低いのがなんだかかわいそうでね」ということで、いわし料理の専門店をはじめたのだという。
そしてこの新小岩という地で常連客に愛されて20年以上。いわしのヘルシーなイメージから、お客さんの6割は女性なのだそうだ。 |