●長ネギとかっこよさの両立に向かって
いろいろ試してみて改めて実感させられた、長ネギの強烈な存在感。工夫すればするほど、長ネギがその個性を発揮するようにも見える。
どうにかしてそれを打ち消したい。ならば、長ネギ以上に強烈な存在感のあるかっこよさを対抗させればよいのではないか。
そういう思考過程から導き出された答えは「鎧」。鎧はどう考えてもかっこいいだろう。現代の服飾観からすれば存在感もずば抜けている。これなら長ネギに対抗できるはずだ。
実際に装着してみても、「対抗できてるな」という感じはある。なんだかマッチしていると言ってもいいかもしれない。
ただ、マッチしているということが、かっこいいかと言われると、それはまた別の話だと思えてくる。長ネギを片手に持った鎧の人。「わけがわからない」という言葉がぴったりだ。
より実戦的に、敵の急襲をシミュレートして身構えてみても、わからない感じに拍車がかかるだけ。刀を構えるようにしてみたつもりだが、予想以上に様にならない。
襲ってきた相手に、一瞬だけ「ネギ?」と隙を与えることはできるかもしれない。ただ、悲しいことに戦闘力はゼロだ。
ぱっとしない結果にいらだち、サングラスを投入。おっかなさの要素はアップしたかもしれないが、戦国時代と長ネギとサングラスとが渾然一体となって、ただただ謎だ。
違うんだ、こういうことじゃないんだ。鎧なんか日常生活で着るものじゃない。もっと普段の生活に活用できるようなかっこよさを見出したいのだ。
スーツにビジネスバッグ、そこから飛び出す長ネギ。おお、これはありかもしれない。
まず、状況としてそれなりにあり得る。会社帰りに奥さんから「ネギ買ってきて」と頼まれ、スーパーに立ち寄った帰りというシチュエーション。ほほえましさを帯びたかっこよさ、というくらいのことは言えるだろうか。
スーパーでビニール袋をもらわず、直接バッグに入れるのも昨今のエコ的な風潮からするとありだろう。今回の試みで目指していた答えのひとつにたどり着いたかもしれない。
よし、ならばこれを起点にさらにかっこよさを増幅させてみよう。
ネギを花束風に抱えて持ってみた。「スーツに花束」という定番のかっこよさを狙ったわけだ。
ただ、狙いが外れて、「バッグに長ネギ」でぎりぎり保たれていた調和が破綻している気がする。一気にあり得なさが前に出てきて、おかしなことになってしまっているのだ。
そう、ここでわかったのは「かっこよさ」には「あり得る感じ」が大切であるということだ。ガンダムやノートパソコンや鎧では、あり得ない感じが先立っていたのが敗因だったのだろう。
自然な雰囲気を求めて、原点に帰りたい。
農産物直売所で撮影した一枚。地味なジャンパーを着て、頭にタオルを巻くと、長ネギ生産者の雰囲気が醸し出てきた。知らない人が見たら、農業に励む青年として、ある種のかっこよさを見出してくれるかもしれない。
畑でやると、さらにネイティブな感じが出てくる。ガンダムのときに背中に刺していたネギも、急においしそうに見えて来るではないか。見る人によっては、自然体のかっこよさがにじみ出てきたと言ってもらえるかもしれない。
ただ、行動範囲が畑の周りに限定されるというのが難点か。このまま電車に乗ったりしたら、また問題が出てくるだろう。
長ネギのかっこいい持ち方を研究するという今回の試み。明らかな悪ふざけも混ぜつつ、それなりの答えにたどり着けたような気もする。
上の写真、サングラス・スーツ・花束・ガンダムと、かっこいいと思われる要素をふんだんに盛り込んだ一枚だ。かっこよさがそれぞれ好きな方向に向かって放たれて、収拾がつかなくなっている。
かっこよさとは、自然体。意外とまともな答えに行き着いて、自分でもびっくりしました。