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ひらめきの月曜日
 
セルフかけ声で自分を盛り上げる


「待ってました!」
こんな声がかかると、いかにも真打登場といった感じで場が沸き、言われたほうもさぞテンションが上がるにちがいない。いろいろと暮らしづらい世の中、今日もまた背中を丸めて街をゆくぼくたちですが、日常のなんでもないひとコマに、そんな威勢のいいかけ声がかかったなら、ちょっとは気分よく過ごせはしないでしょうか。
たとえそのかけ声が、録音しておいた自分の声だとしても、まあいいじゃありませんか。

櫻田 智也



はじめて便利機能を本当に便利だと感じた

かけ声をかけられるのはきっと気分がいいものだろうが、かけてくれる人もいないし、そもそもかけられるほどの人でもない。であれば自分で自分にかけ声をおくるしかない。それがセルフかけ声である。

さて、録音するとなるとラジカセとか必要か、などと考えていたのだが、


まさに便利機能


すばらしい。携帯電話すばらしい。常に持ち歩いているものをツールとして使えることで、セルフかけ声の実用性がぐっと高まる。早くも流行の兆しである。
ああ、この存在にもっとはやく気づけばよかった。できれば小さいラジカセを買いに外にでる前に気づきたかった。
まあいい。街にでたことだし、このままセリフを吹き込んで企画を進めてしまおう。

 

街なかでかけ声をだすのは難しい

さて、さっそく録音と思うのだが、なんというか、街なかで大きな声をだすのは難しい。ラジカセを買おうと思って、けっこうな都会にでてきてしまったのだ。
「都会の無関心」とはよく聞くが、ほんとうはちがう。無関心を装っているだけで、みんなこの田舎者を馬鹿にしたくてしようがないのだ。こわい。こわいよう!


あの車、さっきも私の横にいたんです!


取り乱してしまった。

どこかのトイレで録音とも考えたのだが、トイレの中から「待ってました!」という叫び声が聞こえたら、まず間違いなく「あの人ひどい便秘だったんだな」と思われるだろう。できればそういう勘違いはされたくない。
そんなことを悩んでいたら、いいものがあった。


電話ボックス


おあつらえ向きとは、まさにこのことではないか。公衆電話を使っているふりをして作業をおこなう。


すごく忙しい人みたいだ

 

実践してみる

まずは定番の「待ってました!」から、かましてみた。ちょっとしたアクションを起こす際にこの音を再生すれば、自然とテンションが上がるというもの。

とりあえず録音した音声の具合をみてみよう。



……

これは……。またずいぶんと居たたまれないボイスの完成である。何人もいるように思わせようとして微妙に声色を変えているあたりもまた居たたまれない。
うっすらと脳裏によぎる「うん、今回の企画、ちがうね」という結論。
いや、これだけで判断するのは早い。アクションにかぶせることで、このかけ声は意味をなすのだ。

よし、さっそくなんらかのアクションにかけ声を合わせて、いい気分になろう。
なんだ、なにをする? ええと……



自分でもまさかの美輪明宏である。どこの引き出しを開けてしまったのだろうか。顔真っ赤にするくらいだったらやるなよ。という話であるが、やってしまったものは仕方がない。
「待ってました!」の声を入れることで「そっくり」という錯覚を与えられるかと思ったが、どうやらそんなことはないらしい。

いきなり美輪さんという日常の極北を持ちだしてしまったことで今後の展開が懸念されるが、とりあえず次に進もう。

 

神様はちゃんとみてるんだよ

道に落ちてたゴミをひろってゴミ箱に捨てた。誰がみているわけじゃないし、誰かに褒められたくてするわけでもないけれど、そんな自分に小さな花丸、あげちゃおう。



これは大げさだ。たかだかゴミを拾っただけである。実際、テンションが上がるというより、逆に委縮してしまった(そしてあたりをキョロキョロ見回してしまった)。でもって、そのあとにやってくる寂しさがすごい。
もうちょっと力まずにいこう。



なんかのCMか。
セルフかけ声とか言っておいて、いきなり挿入されたメルヘン。早くも迷走の予感である。
どうなんだ、いま俺は気分がいいのか? どこだ、この企画のゴールはどこだ。

まあでも、ここでわかったのは、漠然と「待ってました!」とか「日本一!」とか言うよりは、こんなふうに具体的なほうが、場面場面にしっくりくるということだ。

よし、試してみよう。



だから目を伏せるくらいだったらやらなくてもいいじゃないか。

 

気が弱いだなんて言わないで。あなたは少し優しすぎるだけ

混みあった街を歩いていると、すれちがう誰かと腕がぶつかる。どちらが悪いわけでもないのに、いつだって頭をさげて謝るのはあなた。大丈夫、あなたはちょっと要領がよくないだけ。きっとステキな明日が待ってるわ。ペコペコ謝った自分にも、小さなエール、おくっちゃお。



……

自分を盛り上げようとはじめたはずだったのに、なんだか大きな怪我を負ったような気がする今回の企画。こんな時代だからこそ、「心の強さとはなにか」を、自らに問いかけていきたい。

待ってました!


 
 
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