つないだ糸で人形を動かす糸操り人形。巧者の手にかかれば、人形はまるで生を得たかのように舞台の上を跳ねまわる。ただ、そうなるまでには相当の練習が必要だろうし、そのための人形も準備しなくてはならない。 もっと気軽に操り人形を楽しむことはできないだろうか。たとえば、べつに人形じゃなくたって身のまわりのものを糸でつるして動かしたら、それはもはや操り人形と呼んでいいのではないだろうか。
(櫻田 智也)
●とりあえずやってみる
いままでの経験上、こういうのは考えるよりやってみたほうがはやい。 とりあえず糸を2本、ニンジンにゆわえて動かしてみた。さて操り人形にみえるだろうか。
●やりなおし
ごめん。いまのナシ、ナシ。 やっぱりもう少し考えます。
見ばえを気にしなければ糸をつなげるのは簡単だ。問題はコントローラーである。操り人形用語では手板と呼んだりするようだが、ここが肝心だろう。 資料をあたりながら、試しにそれらしいものをつくってみる。
同じようにつくった2枚を十字に重ね 中央の穴にも糸をとおす
さあ、こうして出来上がったのが、
漂流物?
試しにつくってみたとはいえ、いきなりみすぼらしい。完成した直後なのにゴミにみえるというのはどういうわけだろう。よくみたら部屋着のパーカーの袖がボロボロなことと、なにか関係があるのだろうか。
まあいい。これさえあれば人形を買ったりつくったりしなくても、身のまわりのもので人形遊びをすることができるのだ。さて、なにを操ってみよう。
●鍋を操り人形化
きみ、劇団とか興味ない?
部屋をウロウロしてまず目についたのは鍋。うん、いいね。糸もひっかけやすそうだし。さっそくスカウトする。
パーツに分かれるところが操り人形向き
蓋と鍋という2つのパーツからできているのもいい。それぞれに動きを与えられる。
じつは先ほどのコントローラーには1箇所だけ工夫がしてあって、
中央の糸だけ単独で上下に動かすことが可能なのだ!
まあ、「!」をつけて言うほどのことでもないのだが、この記事中で本当に唯一といえる工夫だったため、つい力を入れずにはいられなかった次第です。
というわけで、中央の糸は蓋のツマミに、その他の糸を鍋の取っ手につなぎ、操り人形の完成だ。
クリップとか丸見えですが
では僭越ながら、お鍋が操り人形になった模様をごらんください。
※たいへん騒々しい音がでます
なぜだか人形劇というより『欽ちゃんの仮装大賞』を彷彿とさせる。コミカルといえばコミカル。 まあ、最初の操り人形にしては(ニンジンのことは忘れて)まずまずだとおもう。なにしろ鍋だもの。
そんなわけで気をよくしたぼくは、次なる劇団員をさがすことにした。