●「モランモンブラン」へと向かって
「モンブラン」というケーキを「モンブラン」たらしめているもの。それはなんと言っても、細く絞ったマロンクリームだろう。いろいろなアレンジのモンブランを見かけるが、この部分はほとんどのものが押さえているところだ。
ちゃんとおいしいものにしたいというルールを課している今回の試み。うーん、ハンバーグと合うもので、よい素材はないだろうか。…おお、あれはどうだろう。
スーパーの売り場を行ったり来たりしているうちに見つけたのは、マッシュポテトの素だ。レストランで出てくるハンバーグの付け合わせとして、定番のひとつではないか。
要は裏ごししたジャガイモであるこの製品。これなら細く絞り出すこともできる。自分でジャガイモをゆでるところから始めればさらにおいしいものができるだろうが、今回は手軽さでこちらを使ってみた。
箱に書いてある分量通りにお湯を入れて混ぜてみる。細く絞り出すことを考えるとまだ固そうだったので、少しずつお湯を追加。まだちょっと固いかな、くらいのところで味付けにモランボンを投入。
よく混ぜると色もそれっぽくなってきた。味見をしてみると韓国風な感じが出ていて、これはこれでおいしい。
ではこれを細く絞りだそう。製菓用品店に行けばきっとモンブラン用の絞り口金は置いてあるのだろうが、今回はちょうど空になったマヨネーズの容器があったので、これを使ってみる。
いつ頃からこうなったのだろうか、絞り口が2種類使えるようになっていてとても便利だ。キャップをパカッと開くと細口タイプ、ねじって全部外すと星形タイプとなる。
今回は細口タイプを使用。中にマッシュポテトを入れて、絞り出してみる。
やった!試しに絞ってみたところ、イメージしていた通りに細くつながったマッシュポテトが出てきたぞ。ボソボソとちぎれたりせず、にょろにょろとかなり長く絞り出すことができる。
さて、焼き上がったハンバーグには、白いごはんをトッピング。本物のモンブランで言うところのホイップクリームにあたる色合いを考えてこうしてみた。
ハンバーグ、マッシュポテト、ごはん。取り合わせとしてもアリのはずだ。では、この上ににょろにょろと出していこう。…さあ、できました。
おおー、事前に思っていたより、かなりのモンブランができた。黙っていればケーキに見えるのではないだろうか。
モランボン味のマッシュポテトは予想以上にマロンクリームっぽく見える。土台のハンバーグは、ざっくりとしたクッキー生地のタルト風に見えなくもない。
上にトッピングしたものも、モンブランとしての画竜点睛を果たしてくれている。
トッピングの正体は、ホールタイプのマッシュルーム。始めは栗を乗せようかとも考えたのだが、味のバランスを考えて却下。どうしようかと考えていて、やはりスーパーの売り場で目に入ったのがこれだった。
マッシュルームならハンバーグの付けあわせに出てくることもあるだろう。トータルの味わいを壊すことのない選択だと思う。
ケーキ皿に乗せてフォークを添えると、ケーキとしてのモンブラン性がアップ。さらに紅茶を淹れて横に置けば、それはもう素敵な午後のティータイムだ。
男性には多いだろうが、甘いものは苦手という方にもおすすめできる。なぜならこれは、ハンバーグディッシュをひとつにまとめたようなものだからだ。
断面図を撮るために2つに切ってみた。マロンクリームを模したマッシュポテトの部分はともかく、マッシュルーム・白ごはん・ハンバーグといったケーキとしてはあり得ないものの正体が見えても、なおケーキっぽく見えるのには驚いた。
しかし漂うのは、ケーキの甘いにおいでなく、モランボンとハンバーグのにおい。見た目と比べると頭が混乱するが、とにかくおいしそう。では食べてみよう。
デイリーポータルZの記事では、口にするには勇気が必要なものを食べることもある(例えば1・例えば2)。しかし今回のは大丈夫。おいしいに決まっている組み合わせで作っているからだ。
食べてみた。…よし、実際にうまいぞ!
普段は別々に食べているものが口の中で統合。調味料としてのモランボンが、ハンバーグやマッシュポテトに焼肉風の味をかもし出して、意外性のあるおいしさにもつながっている。成功と言っていいものができたと思う。
●今回は割とまじめにがんばりました
本物のモンブランを最初から手作りするとなると、かなり大変だと思うが、モランモンブランは意外と簡単にできる。
なのでおすすめです、と書こうとしたのだが、どういうシーンで作ればいいのかはよくわからない。
妻からは「着想があほらしい割には、ちゃんとできたじゃん」という感じのことを言われた。ルールを守っておいしくサプライズのあるものができて、ほっとしました。