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ちしきの金曜日
 
「般若心経」をかなフォントにする

これは万葉集。僕は理科の先生なので読めない。

万葉仮名は古代日本の文字

万葉仮名とは、古代の日本で、ひらがなが誕生する前に用いられていた文字であり、要は漢字である。日本語の音を漢字で表記していたのだ。有名なのは、古い刀剣に刻んであった天皇の名前、「獲加多支鹵」(=「ワカタケル」)あたりだろうか。日本史の資料集によく載っている。

古文の時間にやった「万葉集」も、全編がこれで書かれており、それで「万葉仮名」というらしい。気になる方は、下記リンクのウィキペディア「万葉仮名」を参照してもらえれば、詳しく知ることができるし、五十音の万葉仮名対応表も見ることができる。
(参照:ウィキペディア「万葉仮名」

そしてこの万葉仮名(漢字)が崩し字となって現在僕らが使っているひらがな・カタカナが誕生したわけだが、実はこの平仮名も僕らが知っている以外にも昔はいろいろなバージョンがあった。


「ひ」のいろんなバージョン。

昔はいろんなひらがながあった

万葉仮名では、この音にはこれ、という一対一対応がまだ完成していなかったので、一つの音にいろんな漢字がかな文字として用いられた。それが崩し字となり、しばらくはそういうかな文字として伝えられていたのだ。

その一部は現代においてもまだ見かけることができる。そば屋の看板やうなぎ屋の看板でたまに見かける、読めないアレだ

「きそば」と読む。(元の漢字は「幾楚者」)

こっちは「やぶ」。(元の漢字は「也婦」)

かなの世界は自由だ

「中国仮名」や「万葉仮名」のように、日本語を表すのにいろいろな漢字を自由に「かな」として自由に用いていいのなら、僕がここで好きな漢字を「かな」として制定してもいいのではないだろうか? それが可能ならば、僕の創出したかな文字でひらがな・カタカナを書き替えることも可能となる。日本中の言葉が僕色に書き換えられていくさまは圧巻だろう。

そんなわけで今回は、現代における新たな「かな表記」の可能性について研究してみた。

 

素材は般若心経

今回使用する漢字の原案として用いたのは、これ。
「般若心経」


親戚のおじいちゃんにもらいました! 孫に教えるためのふりがなが書いてあります。


「なぜ般若心経!」と思うかもしれないが、一つのテーマで構成された漢字のみテキストとしてはこれが一番有名で、文字数も妥当だったからだ。毛筆体が美しいだけでなく、その内容に独自の世界観を持っているところも魅力的だ。まずは、この般若心経の漢字をひとつひとつ、音読みですべて五十音に分類した。


黄色があてはまる漢字が無かったところ。12箇所。

難航する五十音決定……。

「空(くう)」なら「く」、「諦(てい)」なら「て」のように、最初の文字の読みで「あ」〜「ん」に分類したが、これが思ったより大変な手作業となった。
しかし当初の予想に反して、この段階で八割がたの文字が埋まった。思ったよりも般若心経は五十音を幅広くカバーしていたのだ。驚きだ。

このあと、埋まらない音は、別の音読みや訓読みで転用して当てはめてみたが(①)、それでもいくつかの音が埋まらなかったので同じ子音や母音で強引に当てはめていった。(②)

① 赤字が補充部。「無い」「減る」「能く」など。

②青字が強制補充部。「中=つ」「離=る」など。

特に強引だったのが「れ」「を」「ん」だ。
「れ」はどうしても無かったので、発音と口の開きが似ている「眼(め)」を用いた。萌え系の世界で、「だめぇっ!」が「らめぇっ!」になるこの時代だ。構わんだろう。
「を」も無かったので、字面がかっこいい「婆」を使った。「をばあちゃん」と思えば平気だ。
「ん」に関しては、「無」と同義に用いられる「无」を用いた。ある意味では二重使用になるがご勘弁願いたい。

こうして念願の「般若仮名」五十音対応表が完成した。


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