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はっけんの水曜日
 
ウメボシの種を飲み込んだら芽が生えた

幼かった頃、果物の種を飲み込んだりしたときに、もしかしたらお腹の中で芽が出やしないだろうかと心配をしたことはありませんか。そんなのは冗談の世界だと笑っていたら、笑っていられない事態に陥ってしまったのです。

櫻田 智也



●悲劇(あるいは喜劇)のはじまり

悲劇は常に喜劇と背中合わせというが、まさにそんな悲劇がぼくの身に起こった。そのはじまりは、まだ寒さ厳しい2月初旬のことだったと記憶している。

ある朝ぼくは焦っていた。簡単にいうと寝坊してしまったのだ。


急いで朝食をとる
(※以下しばらくは当時の再現写真がつづきます)


 朝に弱いぼくは、無理やりに唾液をだすためにウメボシをよく食べる。



 丸ごとのウメボシを口に入れて、茶碗のご飯をかきこむ。ごくりと飲み込んだ瞬間、思わずドキっとした。



 そう、ウメボシの種まで飲んでしまったのだ。ウメボシの種といえば、そんなに小さなものではない。硬い種が扁桃腺を揺らして食道を押しひろげ胃に到達する感触を、それはもうはっきりと感じとることができた。


その種と同じ種類のもの


おしっこが勢いよく出すぎたときのような痛みをのどに感じたが、そんなことを言っている場合ではない。なにしろ遅刻しそうなのだ。
ぼくは歯磨きをすませ、洗顔のかわりに申し訳程度の水で顔を濡らすと、すぐに家を飛び出した。
食道と胃の違和感はそのうちにおさまり、ウメボシの種を飲み込んでしまったこと自体、当然のように忘れて日常を過ごしていた。

●悲劇(もしくは喜劇)の萌芽

忘れもしない3月19日、ぼくは朝から耳の奥がむずがゆくてたまらなかった。耳かきを突っ込んでみるも、届かない感じがもどかしい。
夜、帰宅して山田太一のドラマの最終回をわくわくしながら待っていた際、急に耳毛が「わさっ」と生えてきたような感触にびっくりして、様子をみるためにデジカメを手にした。



(※ここからは実際の記録写真です)


耳毛?


 いや耳毛じゃない。なんだろう、今朝カイワレなんて食べたっけか? いやいや、食べたにしたって耳にカイワレが突き刺さるなんてことがあるだろうか。とりあえず取ろうとおもって引っ張ってみたのだが、

痛い。耳の奥と同時に、胃までがつっぱるような変な感覚。ぜんぜん抜けてこないのだ。
そのときぼくの脳裏に、ひと月ほど前の、あの事件の記憶がよみがえった。



ぼくは気づいた。ああ、これはあのとき飲んでしまったウメボシの種が胃の中で発芽して、その芽が成長して耳から出てきたのだと。

……いや待ってくれ。納得できない。よしんば発芽したとして、なぜに耳なのだ。道理が合わないではないか。
だが現実としてぼくの耳からはウメの芽が生えてきているのである。これには道理も引っ込まざるを得ない。

●悲劇(ましてや喜劇)の収束

たしかに2月から3月にかけて、体重がずいぶんと減った。食欲が旺盛になり、それまでの倍近くの量を食べているような気がしていたのだが。体重は増えるどころかどんどん減っていったのだ。
要はお腹の中の種が、発芽し成長するための養分を、ぼくの身体から摂取していたということだろう。
そして今、この芽がどうなったかというと、


順調に育っている

そう。だいぶ伸びてきている。しかもなぜか3本に増えた。
葉っぱが直接光を浴びられるようになったおかげで、ぼくの体重減少はひと段落している。それどころか、どうやら今までのお返しにと、光合成で得た養分を分けてくれているらしく、むしろ以前より太ってしまった。

さて、これからどうしようか。実は医者にいったところ、現代の医学では、ぼくの身体を傷つけずに芽だけを取り除くことは不可能だと告げられてしまった。
そして悩んだ末にぼくがだした結論は、「ウメと共に暮らす」だった。
妻も了承してくれた。何年先になるかわからないが、いつかきっと、きれいな花が咲くにちがいない。

いつかおまえに、大阪の街みせたる

この記事はエイプリルフール企画のために作ったうその記事です

 

 
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