四国の徳島に、フィッシュカツという食べ物があるらしい。 魚のすり身に衣を付けて揚げたものだという。 駄菓子屋さんで薄いすり身に衣が付いたお菓子を見かけるが、徳島のフィッシュカツは、日常の食卓に上る郷土料理だというのだ。 聞いただけではちょっと味の想像ができない。 一度食べてみたい。
(工藤 考浩)
カツといえばフィッシュカツ
というわけで、フィッシュカツを求めて徳島県にやってきた。 こういう、いわゆる地方B級グルメの場合、東京で情報を集めるのと、実際に地元で話しを聞くのでは違うことがある。 インターネットであらかじめ調べた情報によると、徳島では「カツ」というとフィッシュカツのことを指すという。 本当だろうか。いくらなんでも大げさなんじゃないだろうか。 ちょっとまゆつば物だなとおもい、駅前にあった観光案内所に入って聞いてみた。
ほんとにそうらしい
「徳島では、カツといえばフィッシュカツのことを指すって聞いたのですが、本当ですか?」 観光案内のパンフレットをもらいながら質問したところ、 「そうですね、『今日の晩ご飯はカツだよ』と言ったら、フィッシュカツのことですね。」 なんと。 噂は本当なのだ。
そのあと、移動のために乗ったタクシーの運転手さんにも同じ質問をしたところ、同じ答えが返ってきた。 50代とお見受けする運転手さんは、子供のころからフィッシュカツを食べていたという。 最近よくある、地域活性化のために新しく作った「郷土料理」とは事情が違うようだ。
元祖フィッシュカツの店へ
それほどまでに徳島に浸透したフィッシュカツをはじめて販売したというお店が、徳島市のとなり小松島市にあるという。 取材のお願いをしたら、ぜひどうぞとのお返事をいただいたので伺った。
お邪魔したのは、津久司蒲鉾有限会社だ。 小松島港に面していて、会社の前は美しい播磨灘の風景が広がっている。 寅さんがカバンを置いてバスを待っていそうな街並みだ。 こんないい景色の場所で、フィッシュカツは作られている。
テレビの写真がいっぱい
ごめんくださいと工場に入ると、入口にはテレビや新聞などに取り上げられた時の様子がたくさん飾ってあった。 俳優の大杉漣さんは小松島出身で、大杉さんがテレビ番組に出演した際も津久司蒲鉾のフィッシュカツを紹介していたそうだ。
工場では直売もしており、いろいろな練り製品が並んでいた。 ここですでに、ほんのりとカレーの香りがしている。 フィッシュカツはカレー味なのだ。