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ロマンの木曜日
 
飛び地のアイデンティティ

温泉での失敗

ふー。良いお湯だったー。


失敗したな〜。


あー、やっぱりまずかったなー。

若い男の二人組がいたから話聞こうと思ったんだけど。

いきなり「良い体ですよねー」って話しかけたのがまずかったなー。

風呂場でそんな風に話しかけられたらそりゃあ逃げるよなー。

ヒクソン・グレイシーの話してたからその話に乗っかろうと思っただけ
なんだけどなー。

勘違いされたっぽいなー。

あの人たちビビってたもんなー。

あー、失敗したー。


温泉は硫黄の匂いのいい温泉。


風呂場で知らない人にいきなり「いい体だね」とか言っちゃダメ。俺、覚えた。うん、勉強になった。次行こう次。

 

実物のじゃばらを見てみたい

次といってもどうしよう。もう行くあても無い。通りすがりのおばさんにじゃばらは見れないかと聞いたら近くにあった木がじゃばらだって教えてくれた。


全然実はなっていない。何の変哲もない木。


これがじゃばらの木。実もなってないし特に変わったところも無い。道ばたに生えてるし普通の木だ。世界でここだけにしかない木だけど普通の木、じゃばら。どうしよう。

こりゃあ行き詰まったな。と思ってたらさっきのおばさんがおばあさんと話しながらこっちを見ている。そしてその後ろには柑橘系の実を付けた木が。じゃばらか!?

 

おばあさんも北山愛

僕 「こんにちはー。そこになってる実はじゃばらですか?」
おばあさん「じゃばららもう取ってしもて無いよ。じゃばらは11月じょあんた、じゃばら見に来たんかん?」
僕 「見に来たわけじゃないんですけど見てみたくて。じゃばらは作ってないんですか?」
おばあさん「じゃばらは作りゃあせんわ。そんなに使うもんでもないしの」
僕「そうなんや、じゃばらって何に使うん?」

ここで急にため口に。失礼に思うかも知れないがこの地方の方言には敬語表現があまり無く、敬語を使うと親しみづらい印象を受ける方もいる。(年配の方に多い)なのでわざとため口です。


おばあさん家のゆず。いっぱい実ってた。


おばあさん「じゃばらぁサンマの寿司に使こたらエエよ。」
僕 「サンマの寿司?どうやって使うん?」
おばあさん「サンマの寿司に絞って食べたらうまい。若い人らぁは焼酎らへ絞って飲みよぅらしけどね」

ここでサンマ寿司、和歌山名物だ。北山名物と和歌山名物。
完璧な組み合わせじゃないか。

僕?「やっぱり飛び地でも和歌山名物食べるんやねぇ。そーいやなんでここ飛び地なん?」
おばあさん「ハハッ、ずっと住んどるけどそんなもん知らせんわぁ。昔の人が何かしたんちゃうか」
僕? 「ハハッ、知らんのや。ずっと住んでるって大変じゃない?買い物とか。」
おばあさん「大変や言うたらそうかも知れんけど、ずっと住んどるさかね。ここがエエわ」
僕「そーかぁ。良い所やもんね。ありがとう、そろそろ帰るわ」
おばあさん「ほーか、気ぃつけて行かんしよ」


ずっと住んでるおばあちゃん家。今でもお風呂は薪で沸かす。


おばあさんからのプレゼント

おばあさんの家から戻っているとおばあさんの家のほうから
「オーッ、オーッ」という声が聞こえてきた。なんだ?大丈夫かおばあさん。


じゃばら!ごろごろじゃばら!!


おばあさんがじゃばらを抱えて持ってきてくれた!

おばあさん「こないだもろたのあったわ。ほらんとおいといて良かったわ。ほれ、持ってかんし」
僕 「えぇ、ホンマにエエん?ありがとう!」
おばあさん「おぅ、エエよ。夏には川下りとか出来るし秋にはじゃばらもなるからまた来やんしよ」
僕「ホンマにありがとう。また来るわ」

思いもよらずじゃばらゲット!ホントに見れるとは思わなかった。というか貰っちゃった。いい人だなぁ、おばあさん。良いところだ北山村。


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