希望に満ちた4年間のスタート

そろそろ入学式も終わって、新入生が構内を歩き出す頃だと思います。いま大学のキャンパスに行けば、あちこちでサークルの勧誘合戦が行われているのではないかと考えました。

そこで、新入生になった気分で、都内にある某有名大学のキャンパスに行ってみることにしました。

大きな大学のある街だけあって、そこら中に大学関連の店や張り紙があります。よース、オラもこの街で4年間青春すっどー！

と、胸を張って校舎方面に歩いて行ったのですが。

本物の学生の数が半端じゃないんです。駅から学校に歩く学生、逆に学校から駅に向かう学生に囲まれながら一人で歩いていると、なんだか一気にテンションが下がりました。僕は何をやっているんだろう。

それでも、校門の前に到着。サークル紹介の看板が林立しているのが見えて、少し気分も持ち直しました。きっと構内では賑やかに勧誘のビラ配りが行われているに違いない。

「テニスやらない？」「いやスキーやろうよ」「毎月合コンもあるよ」

なんて引っ張りだこ状態を想像して、敷地内に入っていってみました。

いま書いてて思いましたが、こんな勧誘文句、20年前の感性ですね…。

大学は外国だ

ドキドキしながらキャンパス内を彷徨ったのですが、プラカードとビラを持って勧誘をしているような人々は見当たりません。それよりも、まわりはみな楽しそうな学生ばかり。僕はどっちへ行ったら何があるのかすら分からず、完全に外国に来てしまった状態。どうしよう、と通路の隅に立ち尽くしていたそのとき、

「すいません、学生会館って分かります？」

来た！ひょっとして僕が学生じゃないのが見破られて、追い出すためのテストか何かでしょうか。そんなの分かりっこないので、

「いや〜」

と首を傾げるのが精一杯の対応をすると、声をかけてきた学生らしき男性は苦笑いで去って行きました。きっと、向こうの仲間のところに戻って「アイツ偽物だったよ」とか報告されているのかも知れません。

受験戦争を勝ち抜いて難関校のキャンパスライフを楽しむ学生の中に、新入生のフリをして紛れ込んだ30半ばの男。そうだよ、僕は自分にもみんなにも嘘をついているんだよ…。そう思い始めたらネガティブ思考が止まらなくなり、耐えられなくなって敷地の外に出ました。

とりあえず広い場所に出て一息つくと、なんと目の前にプラカードを持った勧誘の人が！ここにいたんですか、探しましたよー。

でも、その周囲に人はまばら。積極的に声を掛けるでもなく、みんなぼんやり立っています。

遠巻きに見ていても仕方ないので、プラカードを持った人の近くまで行って目の前を歩いたりしたりしてみたのですが、彼らはこちらに視線を向けることもなく、僕はそのままスルーされてしまいました。ひょっとして、新入生に見えないのかもしれない（あたりまえだ）。

それなら、確実に新入生しかいない場所に行ってみるのはどうだろう。

というわけで、入学式に紛れ込むことにしました。