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ひらめきの月曜日
 
新旧たまねぎ、おいしいのはどっちだ


現在、たまねぎ売り場は全体的に白っぽくなっております

この時期、スーパーや八百屋の店頭でやたらと見かけるのが「新」と名の付く野菜たちだ。新じゃが、新にんじん、新ごぼう、新しょうが…などなど、「ああ、春なんだねぇ!」と実感せずにはいられない。

じゃがいもやにんじんは、新物と古物とで見た目に大きな変化はない。しかしこれがたまねぎになると「おや?」というほどに違う。見てくれ同様、味も違う。

私はこの新たまねぎってヤツが大好きで、毎日のようにサラダにして食べている。柔らかくて甘くて瑞々しくて、大量に食べても独特のたまねぎ臭がしないのも嬉しい。

「何ごとも新しいのはいいことだ!」とばかりに食べ続けているのだが、果たして本当にそうなんだろうか。

新旧、比較してみました。

高瀬 克子



旧はどこへ行った

この記事のために、とある商店街でたまねぎを買おうとしたところ、見事なまでに「新」しか売っていなかった。新だけでは比較にならない。さて困った。

一緒に買い物をしていた友人の佐藤さんと「新しかない!旧がないよ、旧が!」と言いながらスーパーや八百屋を何軒も回ったが、本当に旧が見当たらない。

佐藤さんは「私はどっちかというと旧を買う。だって新はすぐ腐るから」という主張の持ち主である。なるほど言われてみればその通りだ。でも新には、この時期しか手に入らない稀少性がある。

いや、こんだけ店頭に「新たまねぎ」ばっかり並んでる時点で稀少性も何もないのだが。

最終的に「この店になかったら諦めよう」と入ったスーパーで茶色い旧たまねぎを発見、事なきを得た。


この時期は、旧たまねぎの方が貴重だということが判明。

この手の記事を書く時は「一人が基本」の私にしては珍しく、今回の食べ比べは佐藤さんの家で行うことにした。やっぱりある程度の人数は必要だろう。

…というと聞こえはいいが、単に飲む約束をしていたところに「ついでに企画をやらせてください」と無理を言ったまでである。

とりあえずは、私が日常的に食べている「たまねぎサラダ」で味の違いを見てもらおう。


まずは、たまねぎを水にさらします。左:新たまねぎの白
いこと!

旧たまねぎを生で食べる場合、もっと薄くスライスするのがセオリーかとは思うが、ここは新たまねぎに合わせて厚くした。新たまねぎは分厚くても辛くないのだ。なんなら水にもさらさなくていいくらいだ。でもこれは旧たまねぎに合わせて水にさらす。

両者、まったく同じ条件で仕上げようではないか。


水気を切ったら、茹でた鶏のささみを裂いて乗せて、
最近ハマっている粒マスタード&ピクルスを入れて作った特製ドレッシングをかけたら出来上がり。

それにしても、ここまで色が違うとは思わなかった。

水にさらしたというのに、旧サラダ(こう書くとまるで悪くなってるかのよう)からは独特のツーンとしたたまねぎ臭が漂ってくる。

ま、どんなもんか食べてみよう。


さあ、どうぞ。

遅れてやってきたデイリーライターの玉置さん(佐藤さんの古い友人)も食べ比べに加わります。
どれどれ…

まるで違う

新旧それぞれのサラダを食べた2人の感想は次の通り。まずは新から。

【新たまねぎ】
・柔らかくて辛みが少ない。
・目をつぶって食べたら果物と間違えそう。
・白菜っぽい。
・瑞々しい。


うんうん、新たまねぎはこの水分がたまらないよねぇ。
「新たま、やっぱりうまい…」
そして背後に写り込んだ溢れる生活感の素晴らしさよ。

佐藤さんも「んー!」と、この表情。
一方、玉置さんはといえばカゴの中のインコにちょっかいを出していた。もう飽きたんですか。

続けて、旧サラダの感想がこちら。

【旧たまねぎ】
・サブウェイ(サンドイッチ)の味がする。
・ドレッシングという化粧を取った後に辛みがくる。
・その辛みがなかなか抜けない。
・(新と比べると)ビールと発泡酒くらい違う。


「へー、そんなに違うの?」とでも言っているかのような表情。
旧たまねぎは、水にさらさないまま食べたら立派な罰ゲーム食材になるな…。

それぞれに感想を述べ合い、飲んで食べているうちに、いつしか話題はなぜか「新しけりゃいいのか!」という怒気を孕んだものになっていた。

「旧は風通しのいい所に吊しておけば日持ちするのに!」とか「煮たり焼いたりしたら、絶対に旧の方がウマイはずだ!」という妙に旧に肩入れした発言が多かったのは、私たちがもう若いとは言えない年齢だからだろうか。

「新しいのだって、いつかは古くなるのに!」とか「古い方がいい味が出るんだよ!」という発言に至っては、たまねぎのことを言っているのか、人間のことを指しているのか、よく分からない。


そしてビールの入ったグラスがどんどん空いた。

さらに当日のメモ帳には「『瑞々しい』が褒め言葉だと思うなよ!(夜は除く)」と書いてあった。たぶん玉置さんの発言だと思う。

持ち越します

というわけで、この日はすっかりお喋りに夢中になってしまい、佐藤さん宅で食べ比べたのはサラダ(生)だけ、というダメっぷりであった。

実は、私が「企画は一人で黙々と」やる理由がここにある。誰かが一緒だとそっちに気が向いてしまい、企画そっちのけで「せっかくだから楽しく飲んで話そうよ!」というモードに入ってしまうのだ。

意志が弱いにも程があろう。


あれだけ「ない!」と騒いだ旧たまねぎは、近所のスーパーで普通に売られてました。

次ページでは、いつも通り一人で煮たり焼いたりして新旧たまねぎを食べ比べてみたい。賑やかなのはここまでです。


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