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ひらめきの月曜日
 
新旧たまねぎ、おいしいのはどっちだ

違いをじっくり観察してみた

こういう接写撮影というのは、一人ならではのものだ。人がいると落ち着いて写真が撮れないのはライターとしてどうかと思うが、こればっかりはもう諦めている。


新たまねぎの外側はブヨッとしてます。旧たまねぎは皮がカサカサでしっかりと硬い。
剥くとこの通り。いやー、新たま、白いわー。

旧たま。輪のフチが年輪のようにくっきり。
新たま。溢れ出す水分! そして無垢な白!

生食で新たまねぎに軍配が上がったのは、すでにお知らせしたとおりである。圧勝しすぎて新人いびりのような発言まで飛び出すほどであったが、こうして見るとやっぱり「新たまねぎはキレイだなぁ。若いっていいなぁ」とホレボレしてしまう。

…と、ここで2人の「新しけりゃいいのか!」という叱咤を思い出し、ハッと我に返った。


いかんいかん、白さにみとれている場合ではない。
最初は塩コショウであっさりと焼いてみました。

火を通すことで、どちらもしんなりと柔らかくなった。

火という敵が立ちはだかった時、それに対してどう闘うかが処世術というやつであり、それを如何に「味」に変換できるかが、たまねぎとして生きる上でのカギとなるに違いない。

たまねぎごときに、何を語っている。


まずは新たまからパクッと口へ。

思わず「なんてつまらない!」と声に出していた。

見事なまでに味がない。仮に水が固形化できたとして、それに塩とコショウを振ったような味、とでも言えばいいか。

「いま歯に重みが加わったような気がしたけど、何か噛みました?」と顎に確認されるほどに噛み応えゼロ。


続いて旧たまを。

味、ありすぎだ。生の時はあれほど辛かったのに、それが甘みにきっちりと変わっている。しっかりと柔らかいのに残った繊維がシャキシャキと口の中で心地よい。

顎も「あ、たまねぎさんいらっしゃい。今日もいい噛み応えですね」と満足そうに働いている。

ここまで違っていいものか

まさかここまで…と思った。熱が加わったことで、旧たまは味・噛み応えともに大きく変化した。こういうのを「化ける」というのだろう。

一方、熱になんの対処も出来なかった新たまは、水分が口の中に溢れただけに終わった。生の時に感じた甘みは一体どこへ消えてしまったのか。

ま、結果は見えてるような気もするが、一応次もやってみましょう。


それぞれをコンソメで煮てみました
どんな違いがあるのかと言えば、

新たま。ああ、やっぱりか…という感想
旧たま。やっぱりね! と嬉しくなる。

あの2人がここにいないことを心細く感じた食べ比べ第2部であったが、今は「いなくて良かった」と胸を撫で下ろしている。

たぶん彼らは、新たまねぎに対して「つまんねーんだよっ!」だの「やる気あんのかよっ!」と容赦ない言葉を浴びせ掛けたに違いない。

不憫だ。新しくて白くて柔らかくて八百屋でチヤホヤされて、私も生がおいしくて毎日のように食べているというのに、火が通っただけで、この体たらく…。

こうなったら肉の助けを借りよう。何とかなるかもしれない。


みじん切りにして、それぞれを牛の赤身と混ぜてみた。
肉と一緒なら、それほど違いは分からないかもしれない…という一縷の望みを託して。

新たま。肉の毒牙の前に出る幕なし。見事なまでに肉オンリーの味。
旧たま。肉といいハーモニーを紡ぎ出している。こりゃうまいわな。

旧たまねぎは、肉と一緒になることで「君らは香辛料にもなるのか?」と思ってしまったくらい、爽やかな肉料理へと昇華させることに成功していた。さらに歯応えがあるのがいい。

一方の新たまねぎ。ここまで新たまの肩を持ってきた私ではあるが、さすがに限界だったようだ。ついに「やる気がないなら田舎に帰れ!」という言葉が出てしまった。

食べ分ければいいだけの話だ

本当は、新旧たまねぎを使った「オニオンフライ対決」とか「肉じゃが対決」なんてのも考えていたのだが、これ以上やっても無駄なように思える。いや、ハッキリ言って無駄だ。

とにかく、生で食べるなら新、火を通すなら旧、それしか私には言えない。

それを考えると、佐藤さんちへ行く途中の商店街が新たまねぎだらけだったことに納得がいかない。「新しいのはいいことだ!」とばかりに新たまばかりを売っていてはイカンのではないか。たまねぎ界全体の評判をも落としかねない行為なのではないか。

まさに適材適所ということだろう。見た目に快い新人女子アナウンサーばかりではなく、ニュースがしっかり読める熟練の女性アナウンサーもいてこそのテレビだと思うのだ。

あ、最後に新旧たまねぎの大きな違いをひとつ。新たまねぎは切っても涙が出ませんが、旧たまねぎは「思いっきり泣いてください」とばかりに盛大に涙が出ます。

この人を泣かせる成分が甘みに転じるのかと思うと、ますます旧たまねぎに好意を抱かずにはおれないが、きっと私は明日も新たまねぎのサラダを食べるんだろうなぁ…とも思う。

痛い目をこらえて撮ったら幻想的な写真になった

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