夢の小箱が現実に
どうでもいいことに真剣になれるという点については、子供に負けたくない。「パイの実」の箱のデザインを鉛筆でトレースして、着色作業に入る。
うーん、「パイの実」のパッケージは手描き絵風のものなのだが、いざ真似してみるとなかなか難しい。うなりながらやっている様子を見た妻が、あきれたように「私がやるわ」と言ってきた。
確かに絵は妻の方がうまい。ならば協力をあおぐことにしよう。
パッケージデザインは任せることにして、ベースとなる箱の方を担当しよう。がっちりとした花柄の白い箱は、100円均一で買ってきた。大きさもちょうどいい。
ここにベストチョイスのお菓子を詰めていく。ならば仕切りがあった方がいいだろう。
切った画用紙を仕切りとして組んで、お菓子ボックス化していく。横の部分のデザインも本家「パイの実」に似せたカラーリングにした。
「パイの実」の箱には当然ながらパイの実の絵がたくさん描かれているわけだが、「オレごの実」のパッケージはその部分が違ってくることになる。
その部分は、それぞれの箱からお菓子の写真を切り抜いて貼っていくことにしよう。ハサミやカッターで丁寧にお菓子を切り抜いていく。
地味な作業と思いきや、この作業が実に楽しい。
パッケージには、そのお菓子が最高においしそうに見える状態が掲載されているはずだと思う。平面から飛び出してきたそんなお菓子たちは、食べられないのにとても魅力的だ。
さて、私が作業している間に、妻が描いていたパッケージもできあがったようだ。
描いた紙をベースの箱のフタに貼り、そこに切り抜いたお菓子たちを載せていく。レイアウトで全体的なデザインが決まってくるので、ここはおいしくて楽しそうなお菓子の森を演出できるようにしたい。
よし、これでいいだろう。ついに完成、「オレごの実」だ。
本家「パイの実」テイストをベースに作った、「オレごの実」。楽しいではないか、おいしそうではないか。夢は願い続ければ叶うのではない。行動してこそ叶うのだ。
お楽しみはこれからだ。では開けてみよう。
うわあー、おいしそう! そしてなんかめでたい感じがする。
おいしそうなのは当たり前として、めでたい感じはなんなのか。少し考えて、それはおせち料理っぽさから来るのではないかと気がついた。
パイの実は五穀豊穣、ビスコは健康、たけのこの里は子孫繁栄。おせち同様にそれぞれのお菓子に意味をもたせることのできそうな気がする。
撮影の合間にそこら辺に置いたのをふと見て、またうれしい気持ちになる。パイの実みたいだけど、中には自分だけの夢が詰まっている「オレごの実」なんだ、と。
パッケージに合わせて、森の中で食べてみた「オレごの実」。自分で好きなものを選んでいるので当たり前だが、全部うまいものばかりだ。
子供の頃のちょっとした夢は、大人になって少しがんばれば叶えることができる。やってることのあほらしさから、少しでもまともさを抽出して終わりにしたいと思います。