途方に暮れる旅の果て
たどり着いたのは大田区内の、とある交差点。先ほどとは別の角度から撮影した写真をもう一枚載せよう。
七本の道路が交差する場所。こうした地点はかなり珍しいらしく、「七辻」と呼ばれているようで、その由来を説明する碑も建てられていた。
交差点から周囲をぐるっと見回すと、確かに七本の道がある。動画でお伝えした方が伝わりやすいだろう。
間違いなく七本ある道。そこにいると不思議な感覚にも襲われる。
これらの道が一箇所に集まっているわけだ。地図で見ても、きれいにその様子がわかる。
これだけたくさんの道が集まっているのに、信号がないというのもすごい。先のそれぞれの道の写真は、車や人の通りがないときを選んで撮ったものだが、実はこの交差点の交通量は結構なものがある。
多くの人たちに利用されている七差路。相当複雑な入り組み方をしているのに信号がなく、事故が起きることはないのだろうか。
そう思っていたのだが、特に車の運転者はここに出くわして驚くのだろう、びっくりした顔で一時停止をしている人も多かった。そして、そろそろと慎重に交差点に入っていく。
だから逆に安全なのかもしれない。ここまで複雑だと、どう信号を設置したらよいのかわからないというのもあるだろう。
碑の一面には「日本一ゆずり合いモデル交差点」との表記。解説面でも事故がないことを自信をもって言い切っている。確かに逆説的な説得力がある。
今回は意図的に来たわけだが、本当は偶然迷い込みたいこの交差点。知らないでここに迷い込んだら、相当驚くだろうと思う。まさに「途方に暮れる」を地で行ける。
交通がないひとときを見計らって、七差路にたたずむ。私は今、確かに途方に暮れている。ミッション達成だ。
そこに、威勢のいいかけ声とともに、町会のおみこしが登場。取材当日はたまたま地元のお祭りだったようだ。交差点で進行を止め、左右にぐらぐらと揺らされるおみこし。途方に暮れる旅の終着点にふさわしい光景だ。
思いっきり途方に暮れて満足しました
盛り上がる祭りの熱気と、加速する私の孤立感。途方に暮れるという目的に駄目を押すかのような偶然の演出。担ぎ手には冷たい飲み物とゆでたジャガイモがふるまわれていた。
見慣れない服を着た妻が出て行き、知らない街の七差路でみこしが止まる。何もできない自分。
旅の目的は十分に果たせたと言えよう。擬似的に途方に暮れるはずだったのに、うまそうにジャガイモをほおばる人たちを見ていると、本気で途方に暮れたくなる気持ちになりました。