ほたるの住む水は本当にきれいなのか
ほたるの谷の周辺はさすがに道も整っていた。
僕はものすごく迷いながらここまでたどり着いたわけだが、いま地図を見ると逆側の市街地に近い入り口から入った方があからさまに手軽だということがわかる。しかもこのルートだとずっと整備された道を歩けるのだ、くー。
それにしてもようやくたどりついたほたるポイントは深い森に湧いた水の音が気持ちの良い場所だった。
ところでほたるが住めるのは水がきれいな場所だけと聞く。本当にきれいなんだろうか。確かめてみよう。
ほたるの谷の水は確かにきれいだった。しかし日本の名水百選!とかそういうのに選ばれる感じでもないように思う。
とはいえ「こっちの水はあまいぞ」という歌もあるくらいだ、この水だってもしかしたら甘いのかもしれないぞ。
そう思ってちょっとだけなめてみようと顔を近づけたら上流からでかいミミズが泳いできたのでのけぞった。僕とミミズのタイミングが少しでも違っていたら、僕は大きな間違いを犯していた。
これらいろいろ含めての「豊かな水」ということなのかもしれない。あとで調べてみたところ、ほたるが育つのに必要なのはきれいな水とやわらかい土(ほたるは土のなかでさなぎになるので)とのことだった。岩場じゃだめなのだ。そりゃミミズもいるわ。
さらに上流部、ほたるの住むと思われる場所は厳重に立ち入り禁止となっていた。
ということで下見はばっちりだ。
ほたるが現れるのは日没後1〜2時間の間といわれているので日が暮れるのを待って再び森を訪れることにする。今度はほたるの谷に近い入り口からのエントリーしよう。
日が暮れた後の森はずっしりと重たい闇に包まれていた。整備された側からのエントリーとはいえ、人を拒む雰囲気は十分にある。
果たしてほたるは飛んでいるのだろうか。というかこの森、夜入っても大丈夫なんだろうか。