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フェティッシュの火曜日
 
釣りギターでロックンロール!


憧れのミュージシャンとまさかのセッションが実現しました。

2006年の年末、私はロックンローラーになるべく「釣りギター」という斬新な楽器を作った(記事参照)。

作ったのはいいが、出来上がったギターは当初の意気込みに反して、ロックというよりはコミックという言葉ががふさわしいペケペケした音の鳴るものだった。

あれはあれで音が出るノコギリなどと同じベクトルと考えれば素晴らしい楽器なのだが、やっぱりもっとロックギンギンな釣りギタリストになってみたい。

そんな個人的な希望が、いつのまにかありえない状況を生み出しました。

玉置 豊



釣りギターを作りなおす

今回の企画も自分ひとりだとどうにもならないので、前回手伝っていただいたHくんにまた来ていただいた。自分でできないと思ったことは、割りとすぐ人にお願いする性格です。

事前の打ち合わせで、次の釣りギターは前回とは異なったアプローチでの開発をすることになっている。


また呼び出されたHくん。楽器屋で釣りギター用の弦を選ぶ。 竿とリールはオリムピックというメーカーのクラシックモデルを用意した。たぶん20年以上前のヴィンテージアイテム。

前回との違いは以下の点だ。

  • 弦を釣り糸からエレキギター用の弦に変更。
  • エレキギター用のピックアップ(音を拾う機械?)を移植。
  • 釣りで使わない竿とリールを使用(前回、釣りで使おうと思ってピックアップをはずしたら自分で直せなかったので、中古屋で52円で買った竿と、もらいもののリールを使用)。
  • ちゃんとピックを使って弾く。
  • せっかくだからアンプ(ギターにつないで音を出す機械)はクーラーボックスで。

ここまでやれば、ボディがリール、ネックが釣り竿という違いだけで、中身は立派なエレキギターといえるだろう。でも見た目は普通の釣り人。

ここまでやるくらいなら、素直にギターの弾き方を覚えろという話なのだが。

 

エレキギターを釣り竿に移植する

ロックな釣りギターを作るにあたって、どうしてもピックアップなどのパーツが必要になる。楽器屋さんで買おうとしたら結構なお値段だったので、前回の釣りギター記事を見て不憫に思った友人からもらった「元彼が置いて行った接触不良ぎみのエレキギター」を素材として使わせていただくことにした。

このギター、もらった時は意気込んで野村義男(ヨッちゃん)が書いた入門書などを買ったのだが、結局ろくにコードを一つも覚えることなくバラすことになってしまい、大変申し訳ない。


いつも無茶な記事づくりを手伝ってくれるHくん。 でも畳に麦茶をこぼされたので、今日のお礼はいいません。

なんだかはじめてバンドを組むことにした高校生の放課後みたいな気分で楽しいのだが、普通高校生は釣り竿でギターを作らない。

弦はギター用を何種類か、それにベース用まで買ってきていろいろ試した結果、どうやら必要な張力、奏でる音域から、「15」と書かれた242円のギター弦がちょうどいいことがわかった。15というのが何の単位なのかは知らない。


ギターの弦はリールに巻くような長さではないので、リールに引っかけただけ。よってリール本来の糸巻きとしての機能は一切使用していない。 弦の先に無理やり輪っかを作って、釣り糸をつないで延長する。5メートルくらいの弦があればいいのに。

弦を選ぶためにいろいろな種類を買って試したのだが、5000円くらいかかった。音楽やるとお金がかかるという話を身をもって理解した。

 

そこでさくらんぼですか

「ピックアップをいじるのなんて10年振りくらいだよ」というH君の手によって、とりあえず無事にギターの部品を釣り竿とリールに取り付けられたのだが、問題は電気回路の基盤部分である。


いろいろと考えた結果、ピックアップは竿にネジで直接固定。ギターの基盤部分がどうしてもはみ出る。 弦を切られ、ピックアップと基盤を外されたギターでエアギター。数学教師用の大きな定規みたいな扱い。

今のところはむき出しの配線でぶら下がっている状態。どうにかすればこの無駄にでかいリールに埋め込めそうな気もするのだが、だんだんと制作に飽きてきたらしいHくん。部屋に転がっていたさくらんぼの空箱にカッターを突き立てた。


さくらんぼの箱に基盤を突っ込んで、穴をあけてリールの出っ張りを突っ込み、セロテープで止めるという、夏休み最後の日につくった宿題みたいな荒業。 そのまま移植したので、ちゃんとギターのツマミも生きているのがポイントだ。初夏らしいデザイン。ギターの名前は「チェリー」でいいでしょうか。

リールに刺さったさくらんぼの段ボール箱。

農の要素が加わって、ちょっと釣りギターという概念から外れたような気もするが、そんな固定観念はHくんの満足そうな顔が打ち消してくれた。


ギターマガジンの表紙にしてもいいくらいの表情だと思います。

 

エレキっぽい音が出た!

Hくんの考えでは、こいつから伸びる糸の先を何かにひっかけて、強く引っ張って弦をピンと張り、ピックではじけばその振動をピックアップが拾ってくれるはずらしい。

糸の先にS字フックを結んで部屋のラックにひっかけて、エレキになった釣りギターをアンプへと繋ぐ。


なんの曲かわかってもらえるでしょうか。そう、ハトッポッポです。

すごい。エレキギターというかバンジョーっぽい音色だが、前回の釣りギターよりも格段に音の響きがロックである。

見ていただいてわかる通り、音の高低は竿を引っ張って弦の張力を変えて調整するのだが、竿を引っ張ると竿自体が曲がってしまって、思った通りに張力が変わらないという根本的な欠点は前回から一切解決していない。一度出した音は二度と出せないという、一期一会な仕様である。

思った音を出すとか、音を安定させて出すとか、そういう楽器として必要な機能は不十分だが、それでも演奏する側に「伝えようとする気持ち」と、聞く側に「理解しようとする気持ち」があれば、楽器として成立するはずだ。

なので以下の動画でも、聞く側の気持ち次第では、H君の模範演奏と同じように聞こえるはずである。


これでもうまくできた方なのだが、カメラを構えるH君が、笑いをこらえるのに辛そうである。

さあ素敵なエレクトリック釣りギターができたところで、次はクーラーボックス型のアンプ作りである。別にアンプがクーラーボックスの形をしている必要は音楽的に一切ないのだが、やっぱりロックにヴィジュアルは大切なのである。


こういう市販のアンプじゃ雰囲気が出ないですよね。

しかしさすがのHくんもアンプの組み立てまではわからないというので、誰か詳しい人を探すことになったのだが、そこで話があり得ない方向に転がっていったのである。


マルコシアスバンプの秋間経夫さんが登場します >
 

 
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