そこはもう北関東共和国
北関東の県境複雑地帯を訪れている今回だが、複雑地帯の中でも特に複雑になっているところがある。
複雑に入り組んだ県境がある。その県境を横切る形で道路が走っていて、数百メートルごとに県境をまたぐのだ。地図で見る限り、かなりエキサイティングなことになっている。
しかし実態は土手沿いののんびりした道で、両脇に草が茂っているくらいにしか特徴がない。県境には看板が立っていることもあるが、そこを境に何かが急に変わるというわけではない。
地図での興奮がよみがえらない。ただ、カーナビがポーンと音を鳴らし、音声と小さな絵で違う県に入ったことを教えてくれる。埼玉県に入ると、県西部の長瀞の川下りの絵が出てくるのだ。
栃木や茨城に入ったときも、埼玉と同様に県内の名所が表示される。日光東照宮や霞ヶ浦は、確かにそれぞれの県の代表的なスポットだと思う。ただ、それとはちょっと違った角度で攻めて来るのが群馬だ。
観光スポットではなく、天狗。かっこいい。
続いては栃木県内に移動してみた。今回のテーマとしているコンビニに入ってみよう。
埼玉のコンビニでは埼玉の地図くらいしかローカル度を示すものが見つけられなかったのだが、ここでは焼き餃子味のポテトチップスを発見。餃子の街・宇都宮を擁する栃木県ならではのものと言っていいだろう。
他にもないかと立ち寄った別のコンビニで、また気になるものを見つけた。
鴨のひとくち串カツセットだ。コンビニでこんなお総菜的な冷凍食品を見るというのは珍しい。しかも鴨。そういう食文化があるのかと思ってパッケージを手に取ると、産地は中国。
…別に栃木っぽさというわけではなさそうだ。ただ、自分の心には「栃木のコンビニでは鴨の串カツが売ってる」ということは印象に刻まれた。
最後に訪れたのは茨城。とは言っても車だと5分もかからずに四県を行き来できる。
立ち寄ったコンビニの弁当コーナーで、地域限定の弁当発見!と思ったのだが、よくよく見ると貼ってあるシールは「関東限定」。しかも弁当の名前は「ミニ鮭弁当」。
限定とは言っても関東。なんか広い。そして内容にもローカル性は感じられない。
肩すかしをくらったような感もあるミニ鮭弁当。なんとかローカル性は見つけられないだろうかと、別のコンビニにも入ってみる。
カップラーメンコーナーで見つけたのは「やきそば弁当」。これはローカル性が強い品物だ。北海道で大人気、普通は捨てるお湯をスープにできるカップやきそばだ。
それはそうなのだが、それって北海道の話だろう。今は茨城にいるんだ。茨城で北海道気分になってどうする。
レジのおねえさんの言葉にも、方言らしさは感じられない。いつも適当に入る店とおんなじだ。
地図上では相当大変なことになっていそうに見えた複雑県境地帯。ただ、県境がくねくねしているからと言って、それをまたいですぐに県ごとの特色を感じられるわけではない。それが今回実際に訪れてみてわかったことだ。
歴史的に見れば、県境が規定された経緯にはいろいろあったのかもしれない。ただ、目の前にこうして広がる県境地帯の様子はただただおだやか。地図で見た興奮を鎮めてくれているようでもありました。