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ロマンの木曜日
 
スイスのダムめぐり(前編)

Emossonダム

ふたたび牧場の中を通って来た道を戻り、高速に乗って南へ向かいます。次に向かったのはスイスの南西端、フランスの国境にも近いEmossonダム。



より大きな地図で スイスのダムめぐり を表示
すぐ脇にフランス国境が通るエモッソンダム

おそらく、スイスのダムと言ったらここがいちばん有名じゃないかと思います。こんなダムの写真、どこかで見たことないですか?


同じ構図の絵ハガキも売ってた

Emossonダムは登山列車やケーブルカーを乗り継ぐ、すごく楽しそうなルートでも来られるのですが、案内に沿って車で走っていたらダムのすぐ脇の駐車場までたどり着いてしまいました。時間もないのでちょうど良かったですが。

ちゃんとしたことは分かりませんが、いろいろな資料を見ると、ここはスイス国鉄が使う電気を発電しているダムらしいです。ちゃんとしたことは分かりませんが、都営地下鉄用の電気を発電しているらしい白丸ダムのような感じでしょうか。


Emossonダム 奇しくも同じアングルの白丸ダム

スペックは、堤高180m、堤長(ダムの長さ)555m。堤高186m、堤長492mという日本最大の黒部ダムとほとんど同じ大きさ、と言っていいでしょう。

本体には放流設備など一切ついていなくて、ツルンとした非常にシンプルで美しいラインです。僕の中で印象に残ったのは、天端にもまったく段差がなくて、つまり、もし上流側と下流側に設置されている鉄製の柵がなかったら、このダムは本当にシンプルで真白いコンクリートの壁が立っているだけ、というシルエットなのです。こういった飾り気のない美しさは、むしろ日本的な美的感覚のような気もするのですが、ゴツゴツした岩山が連なるアルプス山脈の中で存在感を放っていて、すごく景色にマッチしていると思いました。


青い空とグレーの岩山に白い壁が映える

洪水吐は右岸側のウイング部分に自然越流式が設置されていましたが、たぶんほとんど使われることはないでしょう。


堤体から見た下流の景色はハンパない でも工事中で天端から下が覗けなかった
いちばん右岸側の端に自然越流式の洪水吐 おそらくほとんど水は流れないと思われる

ここから湖畔を1時間くらい歩くと、上流にVieux-Emossonという小さいダムがあるそうです。今日の予定はここまでだし、ぜひ見たいので行ってみることにしました。


と思ったらいきなりこんな所を登らなければいけなくて その先にこんな道が続いていて

さらにその先がこんな坂で
登りきったらこんな光景が広がっていて

「レベルが違う!」と思いました。これがダムに続く道か。日本のダムに続く道とはレベルが違う。


日本のダムに続く道 スイスのダムに続く道

まあ、ここだけですけどね。

しかし、数十分歩いてきたのにVieux-Emossonダムは見えてきません。時間もなくなってきたしお昼も食べていないので、次の丘の上に登って見えなかったら、そこでお弁当を食べて引き返すことにしました。そして、次の丘に登って見えた光景は!


いちど谷間に降りて、また登って行かなければならない...のか...!

というわけで、絶景の中ランチです 目の前にはこんなすごい山が

だいぶお腹も空いていたので、高速道路のサービスエリアで買っておいたサンドイッチを取り出して頬張りました。パンがすごく固くて顎が疲れるけど、この景色の中ではそんなこともあまり気になりません。

目の前にはEmossonダムの湖が広がっていますが、水位がだいぶ低く、上流の方に何か人工的なものが見えました。あ、あれはひょっとして幻のBarberineダム!?


Emossonダム湖の中にさらにダムが

BarberineダムはEmossonダムよりはるか昔からこの地にあって、Emossonダムの完成とともにその役目を終え、新しい貯水池の中に水没したダムのようです。この日は水位が低く、Barberineダムの天端部分だけが顔を覗かせていました。


Barberineダムの洪水吐部分
こちらは歴史を感じさせる造形が刻まれている

たまたま来た日に普段見えないダムが見られるなんて幸運だな、これでVieux-Emossonダムも見られたら言うことなしなんだけどな、と思ってもう一度上流の方を見たとき、何か違和感がありました。


あれ、あの谷間... 変に平らな部分ない?

あれだー!

なんと、いま座っている場所からVieux-Emossonダムはずっと見えていたのでした。あとで写真を確認したら、このページ真ん中へんの「登りきったら〜」というキャプションの写真で既に見えてるんですよね。その場ではまったく気づきませんでした。

でもやっぱり遠すぎて、歩いて行くのは時間的に無理。いつか再訪することを誓って、Emossonダムに戻り、車に乗って今日から3日間滞在するシオンという街に向かいました。


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