汚くないのか、これらは
野生の生き物から抜け落ちた羽根である。 綺麗という保証はない。 かといって、どういうふうに殺菌とか消毒とかしたらいいのか、よくわからない。鍋で煮たりとか絶対イヤだし。
そのときは名案だと思ったマキロン(実際に使った)だったが、果たして効果はあったのだろうか。 とにかく羽根を綺麗にできたつもりで、加工スタートである。まずカラスの羽根でチャレンジすることにした。なにより大きいのがいい。迫力があるし、加工もしやすそうだ。
自分、不器用ですから
ナイフとか使うのがものすごく下手だ。ただ、器用とか不器用とかっていうのも、要はヤル気の問題だというのは充分承知している。 小学校5年のとき、スーパーで売っている豆腐の容器を2つ貼り合わせて中に電球を入れ、サランラップの芯をくっつけてティッシュか何かの空き箱に立て、『タワー』というタイトルで夏休みの宿題に提出したことがあった。まさにクラス中の失笑をかったわけだが、ぼくは夏休みに入る前の計画表を作成する時点で、自由研究の予定欄に、提出した現物とほぼ相違ない設計図を記入していたわけで、決してやっつけの仕事ではなかったのだ。要するに、工作に対するスタンスというのが元来その程度なのである。
軸の内部はほぼ空洞みたいなものだった。数ミリ程度の切り込みを1本、縦方向に入れ、その部分がペン先になるイメージで、周りをカッターナイフで削り落していく。
文にするとこれだけなのだが、けっこう面倒くさい。本来は、こういう作業をするためのナイフがちゃんとあるらしい。羽軸はけっこう脆く割れやすかったりして、繊細で丁寧な仕事が必要なのだとすぐに理解した。
切り込みの周りを削っていくと、いつのまにか切れ目に沿って先端が割れ落ちてしまっている。そんな失敗を何度か繰り返し、軸の部分をどんどん短くしてしまった。1本無駄にして、2本目のカラスの羽根に手をだした際に、ちょっといいアイディアを思いついた。
単純なことだが、これで裏側からみても切り込みの場所がはっきりとわかるので、うっかり削りすぎる危険が小さくなるのだ。
うーむ、なんと美しい万年筆のペン先か。そっくりというのは無理にしても、できるだけ雰囲気は近づけたいところ。カッターナイフのほかにもヤスリや刃先の鋭いハサミを併用してなんとか形を整えていく。
羽根の長さと「反り」が作業をするうえでなかなか厄介だ。腕の内側がくすぐられると、思わずゾッとして背筋が伸びる。カラスの羽根だと思うと、あまり気分のよいものではない。
さて、どれくらいの時間がかかっただろうか。なんとか頭に描いていたペン先に近いものを仕上げることができた。
ペン先がやや開き気味になっているのが気になるところだが、それではインクをつけて試し書きをしてみよう。
いや、悪くない! ペン先を完全に尖らせず少しだけ平たい部分を残した(というか、残った)のが功を奏してか、しっかりとした線を描くことができる。 インクの保持もそれなりで、原稿用紙を埋めるくらいの大きさの字であれば、1度つけたら10文字くらいは書くことができる。習作にしてはまあまあの出来ではないだろうか。
本体が小さくても、削ったペン先の幅はほとんど変わらないから文字の太さも同じくらいと予想したのだが、元々の軸の円周部分の厚みがカラスの羽根のほうが厚いため、そのぶん描線に差が生じたようだ。 見た目にも可愛らしい細ペンをゲットである。
どちらのペンも、線がかすれたり二重になったり、ペン先の耐久性は残念ながらよろしくない。保持したインクを弾き飛ばすこともしばしばで、このあたりは今後の課題だ。
羽根以外もペンにできないか
羽根ペンが一応の成功をみたので、つづいて羽根以外の羽根に似たものをペンにできないだろうかと考えてみた。 考えた末に思いついたのが、
なんと尖がったサンマの頭をインクにつけて文字を書く! わけではない。 鳥の羽根軸がペンになるのなら、魚の骨もペンになるのではないかと閃いたのだ。 羽根ペンならぬ、骨ペンである。
そう、ひょっとしなくても、ダジャレだ。