デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


ロマンの木曜日
 
雑談トレーニング序説


雑談をするのが苦手だ。こう書くと「本業がライターのクセに!」と思われそうだが、先に質問を考えて臨めるインタビューと適当な会話を続けなければいけない雑談は別だ。あまり情報がない相手と2人きりにされた時の静かな空気、アレは怖い!

といって何を雑談すれば良いのだ!天気?社会情勢?ゴシップ?では先に対・雑談用の質問を考えておけばいいのでは、と思ったのだが…。雑談力がついたらご喝采!

大坪ケムタ



雑談力を問われるシチュエーションを聞こうとしたが…

今回テーマであるところの雑談、いちおう定義しておけば「目的もなく適当にする話」ということだろうか。最初に雑談が苦手と言っておきながらアレだけども、旧知の仲相手に「この前言ってた件どうなった?」とか「友達のあの人元気?」とか雑談するのは自分は別に苦ではない。

しかし、例えばこんなシチュエーションであなたはどういう雑談をするだろうか。


(設定)仲の良い友人Aの家にやってきました。2人でくつろいでると、Aの友人B(あなたと同性)がやってきた。2人並んで座ったところで「あっ、ごめんちょっと電話」とAはどこかに行ってしまった。つまりBに関しては「Aの友人」という以外の情報はない状態です。さて、あなたはBとどんな雑談をしますか?*天気の話はNG。

たまにありますよね、こんなシチュエーション。ここで「話さない」というストロングハートな回答をする人もいるでしょうが、小心かつ中途半端に気遣おうとして「何か雑談しなきゃ…」と強迫観念に駆られる自分のような人も少なくないでしょう。

それで今回考えたのは、この質問をいろんな人に見せて、雑談ネタを出してもらえば「雑談フローチャート」が出来るのでは?ということ。たとえばこんな感じ。


もちろんこの話題は適当に考えたものだが、10人か20人くらいに1人3ネタくらい教えてもらい、このフローチャートを作って頭に入れておけばどんなシチュエーションでも矢継ぎ早に雑談が出来る!超おしゃべりマシーンな俺実現!

と、思ったのだけど…最初の数人に聞いた時点で真っ先に出てくる話題は「Aとどういう知り合いですか?」あとは「お仕事何されてるんですか?」「お住まいどちらですか?」といったもの。なんか夜のお店のトークっぽいなあ…やはり「初対面での雑談」を洗練させていくと、プロフェッショナルと同様になるのか。

ということで方向転換!何人か聞こうと思ってた中でも雑談力高めなふたりの意見から雑談テクニックを導いてみることにした。

 

初対面だからこそ目と雰囲気

まず雑談力について教えを乞うたのは、映画・音楽ライターであるわたなべりんたろうさん。もともと日本で公開される予定がなかった英国映画『HOT FUZZ』を署名活動して公開させた事でも知られ、最近は映画評論講座の講師もされてるエネルギッシュなライターさんだ。

カルチャー系以外にも単行本では『医者・ライフライン従事者・政治家・公務員以外の一般人、1億人分の強毒性鳥インフルエンザプレ・パンデミックワクチンを誰が用意してくれるのか?』といった硬派なテーマも扱われてます。まずはさっきの質問を見せてみた。


−−今回「雑談」をテーマにするにあたって、こういう質問を皆に聞いてるんですよ。

「こういう状況はよくありますね。定番の話で『天気の話』があるけど、イギリスの曲の歌詞で出てくるけど、英語圏だと退屈な人のたとえです。イギリスなんかは年中どんよりしてるから天気の話してもしょうがないということで。でもまぁいきなり異性の話とかはしないでしょう(笑)」

−−普通は軽いジャブ的会話から探りますよね。

「こういう状況は大学の時に、大学の友人の友人と住んでいるマンションで鉢合わせしたときとか該当しますよね。その友人の同郷だってだけで接点がない(笑)。最近は音楽か映画が好きな人としか付き合ってこなかったから、基本的にすぐ雑談でうち解けます。でも、音楽か映画が好きな人なら、だいたい雰囲気で何が好きとか分かるじゃないですか。こういうのが好きなんだろうな、とか」


確かに雑談以前に見た目や雰囲気でわかることはままある。逆に言えば、雑談苦手な人はわかりやすいシンボルのひとつも常に持っておけばいいかもしれない。目立つキーホルダーのひとつもしとくとか。


そのわたなべさんはこんな雰囲気。


ちなみにこの日のわたなべさん、帽子には「SPACED」の文字。これは先の映画『HOT FUZZ』の監督らによる作品ですな。確かに分かった!まぁわたなべさんもおっしゃってるとおり、自分もこういうのに気づくタイプだから近しく知り合ったわけなのだけども。

お仕事で頻繁に海外の役者や監督のインタビューもされてるわたなべさん。言葉や文化圏の違い、というのは言うまでもなくハードな壁だ。そこから信頼を得るのも雑談テクに通じるのではないだろうか?


「インタビューは最初の1、2問が大事です。『ちゃんと作品を理解してきているぞ』ってのが相手に分かるから。武士の真剣勝負みたいなものです。相手も、こちらの程度を探っていますから、当りきたりな質問をしたら『いつものルーティンワークのやつが来たな』って思われちゃうから」

−−有名作品だから来てるのか、俺の作品だから来てるのか。そりゃ後者の方が本人はノリますよね。

「あとダメなインタビュアーって、最初から話の落とし所を決めていたりします。その落とし所に無理矢理持って行こうとする。あれはすごく良くないと思います。囲みの取材で、そういう人が相手を怒らせそうになっているのを見たことがあります」

−−ああ、相手の意志はさておいてそういう人いますね。

「流れに任せて、相手が興味があることを聞き出すのが基本です。もちろん自分が聞きたいこともあるんだけど、そういうのは相手が喋りたいように話をさせて結果として出てくればいい。あからさまに聞き出す人はダメだと思います」


さすがに雑談で「お前アレだろ?な?な?」てな感じで落としどころを決めて話す人はいないだろうが、「喋りたいように喋らせる流れを作る」というのは納得。そうだ、初対面の人との雑談は流れに乗せるのが大変だからツライのだ。あとはそのテクさえ分かれば…。

「雰囲気でも言葉でもいいですが、相手に興味を持つ、もしくは持ってるよってのを示すことが大事じゃないですか。女の子を口説くのと一緒ですよね…って昔流行った中谷彰宏の本みたいだけど(笑)」

−−ワハハ、たしかにそういう所にまとまっちゃうきらいがあるんですけどね、雑談力の話って。

「興味を持つ、で言えば、中には会話しててもシャットアウトしてくる人いるじゃない。『ここから先は聞かんでくれ』みたいな。でもその逆で天然かなんか分からないけど『何でもこい!』って人もいる。どっちかなら天然の方がいいですね」

−−自己演出ある人ない人、いますよね。

「mixiとかでも入っているコミュニティや日記で演出して『こう見られたい』と演出のようなことをしている人がいますね。ブロガーやマイスペースとかでもいますが。それなら、コーネリアスのマイスペースのように、フレンドで表に並んでいるのは(マイスペースのフレンドのトップ画面表示は選択できる)みんな猫のトップ画像にしている人にするようにしているほうがユーモアがある(笑)。すぐバレるんだし、素でいるのが一番だと思いますが」

−−飾っちゃっても意味ないと。

「世間は、そんなに他人に興味は持ってないでしょう。自意識過剰気味になってもしょうがない。それだと何も出来ない。自分が男だからか、男性にそういうタイプが多いとも感じます。ひきこもりに男性が多いのも自意識過剰の表れで、そうなのかもしれないし」


初対面だから飾りたくなる…まぁ特に異性とかだったらそれもあるかもしれない。でもそこであえてさらけ出せ!裸になれ!魂のパンツ一丁に!イイ意味で言葉や話題を選びすぎないことが大事なんでしょうな。

さらにもう一丁、雑談で大事なことがある。それは口でも見た目でもなく…。


「サラリーマンを11年やったのですが、いい上司もいればひどい上司もいました。結果、人間関係で学ぶ部分はかなりありました。ある時、好きな上司と廊下歩いてたら、途中で他の部署の上司と会ってどうでもいい話しをしていたんです。それで『じゃ』って別れた後に、その上司がこちらに言ったのが『俺あいつ嫌いなんだよ』と。お互い嫌いあってて、話はするんだけど目で嫌い光線は出し合ってるっていう」

−−まぁ会社だと話さざるを得ませんからねえ、嫌いな相手でも。

「学生だと嫌いな相手なら避ければいいですが、会社だと仕方ないでしょう。それにしてもお互いだけに分かるように『いつかどうにかしてやる』、『あんな仕事やりやがって』って本人同士だけで目でやりあっている。周りは全く気づかないんだけど」

−−ある意味で恋愛関係みたいですね(笑)。

「雑談も目は大事ですよね。心が出るじゃないですか。最近日本映画で『俺の目を見て言ってみろ!』ってあんまり言わないじゃないですか。でもアメリカ映画なんかだと頻繁に使うんですよね。例えば、10年以上前の作品ですが、この間見直した『レザボア・ドッグス』でも、『オレの目を見て言え』って台詞が出てくる。やっぱり目は心に響くんですよね」


「目は心の窓」とも言うしねえ。先の「興味を持ってるよと相手に示す」というのにも繋がる。会話もなくただ見てるだけだとコワイですが、相手を見るのは大事!ということでわたなべさんから出た雑談テクは以下!

・雰囲気は大事

・自意識過剰になるな

・目を見て話せ!


会話の内容よりも、関係性の作り方みたいな部分が主ですね。インタビューを生業としてるからこそ、また雑談の場合の組み立て方を意識するのかも。って自分もインタビューするのも仕事なんですけども。忘れてた!

続いてもう1人いってみよう。教えて雑談先生!


つぎへ >
 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.