大人だけの憩いの場で最終決戦
赤べこの首を引っぱるという、いちばんやっちゃいけないことを平気でやるのが子供である。あーびっくりした。 というわけで今度こそ、大人だけが立ちどまり、しかもそれなりの時間滞在する場所に赤べこを仕掛けてみたい。
煙草を我慢しイライラしていた人たちがやっと煙を吐くことのできるオアシス。気持ちが緩んだ瞬間、目の前の赤べこについ手をだしてしまう大人続出の予感だ。なんという心理的作戦か。
どういうことだろう。これほど無防備に赤べこが置いてあるというのに誰も手をださないのだ。
思い悩む松谷くん。そんなはずはない。これはもしかして、喫煙所で一緒になった他人同士が、置いてある赤べこをお互いに相手の持ちものだと思って手をださないのではなかろうか。
こうなったら奥の手を使うしかない。できれば避けたかったが止むを得ないだろう。
「男の子にここまで言わせないで!」という松谷くんの心の声が聞こえてくるようだが仕方ない。 果たして松谷くんは、小さな部屋で虐げられる喫煙者の心と身体を癒せるのか!?
赤べこのいる喫煙所にやってきた人数が14人。そのうち赤べこに触ったのは、これまた0人であった。
大人はけっこう揺らさない
驚くべき結果である。大人はそこに赤べこがあったとしても、案外と揺らしたりしないのだ。 一方で、子供はガンガンいじってくる。
むかしは平気だったのに、大人になったら人前ではできない……それが赤べこ。
子供と大人の狭間で、少女の心と赤べこの首は今日も揺れ動くのだった。