カニカゴを引き上げる
そして翌日。夜の湖は危険がいっぱい。一人でいくのは怖かったので、泊めていただいた友人夫婦に付き合ってもらうことにした。
仕掛けたカニカゴ、誰かに持ってかれてやしないかとちょっと不安だったのだが、ちゃんとそのままロープがあった。
ドキドキしながら引き上げる。
中には餌にしたイカと、それに寄ってきた外来種の生物が一匹。
またブルーギルだった。
まさかのウチダザリガニゼロ。ゼロキロカロリー。
自分ひとりだったらこの時点で諦めて帰るところだが、今日は友人が一緒だ。わざわざ山形から来てもらって(私は埼玉からだが)手ぶらで帰らせる訳にはいくまい。
昼間に爪を発見したポイントに望みを掛けてみることにした。
いないものはいない
まだ九月半ばとはいえ、福島の夜は寒い。特に山間部の湖なんて厚手のパーカーを着ていても寒いくらいだ。
いくらウチダザリガニが寒い所に住むザリガニとはいえ、こう寒いとやはり深場にいってしまうのだろう。
これが我々が導き出した答えだった。
要するに、やっぱりウチダザリガニがいないのだ。
この友人夫婦は、以前にも「ヤツメウナギが捕れるらしいよ!」といって丸二日付き合わせて、結局ゼロということがあった。
あとで情報源の居酒屋のマスターに聞いたら、20年以上前の話だったんだけど。
友人夫婦に対して、なんだかオオカミ少年になった気分である。育てられたという意味ではなく、嘘ばっかり付いているという意味で。
みんなだんだんと飽きてきて、湖面を見ずに夜空を見上げて、ここは星がきれいだねと言い合う三人。僕ら、今までで一番きれいな天の川を見たんだ。
これはもう人間関係が崩れる前に撤収するべきだなと思ったのだが、昨日の昼間によさそうな場所だったけれどバス釣りの人がいて試せなかったところがあったのを思い出した。
その話を恐る恐るすると、友人は強い口調で「可能性があるならいこうよ!」といってくれた。