僕が以前住んでいた寮には自動販売機があって、その機械の上には小銭が置いてあった。
その小銭はある寮生が置いていたもので、彼は風呂上がりにその金でビールを買っていた。
その光景を目の当たりにした時、僕ははっとしたものだ。そうか、ここに置いておけばいちいち小銭を取りに部屋に帰らなくてもいいんだ、と。
同じようなこと考えてる人、絶対いるはずだ。それを確かめるため、今回はいろいろな自動販売機の上を探ってみました。
(安藤 昌教)
新人寮の思い出
僕がかつて住んでいた寮には食堂に自動販売機があって、発泡酒やマックスコーヒーなんかが売られていた(茨城県でした)。
寮生はみなその自動販売機を愛用していたのだが、若かりし日の安藤青年はある日、なにげなく機械の上に小銭が置かれているのを発見する。
はじめは取りわすれたおつりかと思っていた。しかし後日、その金を使って風呂上がりにビールを買っている後輩がいたのだ。そのお金は後輩が自ら自動販売機の上にストックしていたものだった。
(・・なんていいアイデアなんだ。)
いたく感動したのを覚えている。だって自動販売機の上に小銭があれば手ぶらで缶ジュース買いに来れるわけだろう。人にばれると使われちゃう可能性もあるが、下はのぞいても上を見ようとする人なんてそうそういない。
こんな便利な技、他にもやっている人絶対いると思うのだ。
しかし編集部のあるフロアの自動販売機の上には残念ながら小銭はなかった。この技にまだ誰も気付いていないということだ。明日から僕が置こうかと思っている。
ちなみに下を覗いてみたら飲んでいない缶ジュースが何本かと小銭がいくらか落ちていた。これ拾ってジュース買えば結果は同じか。
いやちがう、そういうことではない。僕が言いたいのは、人にとられないところに自分のお金を隠しておいて、それがいつでも使える、という状態にしておきたいということだ。自動販売機の上はまさにこの目的に合致している二番目の場所といえる(一番目はATM)。
下を覗いたら余裕でお金落ちてました。
同じ職場のよしみとして編集部橋田さんと石川さんにこの超使えるアイデアを教えてあげたのだが、まったく食いついてこなかった。
「やりたいことはわかるが、何か大切なところで違う気がする」と苦笑い。
そういう食わず嫌いは良くない。あの便利さを知ってしまうともう財布とか持って歩きたくなくなるはずなのだ。
社内がだめなら外へ出るしかない。
あの時の寮の習慣がひそかに浸透していることを期待して、僕は外へ出た。