地球シミュレータ本丸に迫る
3階、地球シミュレータが設置されたエリアへ入るには靴カバーをつけなくてはならない。きっとほこりも計算結果に影響を与えるのだろう。
核心へと続く重い鉄の扉を開けると、顔にひんやりとした風を感じた。1階フロアから導入されている冷風が建物内を対流しているのだ。
そして現れた整然と並ぶ箱、これこそが地球シミュレータと呼ばれるスーパーコンピュータたちだった。
地味っていうなよ
薄暗い中に並ぶ筐体、赤く光るX。これこそが地球シミュレータなのだー。わー。
……。
わかっている。さっきの派手にごーごー言ってた冷房設備に比べると、正直ちょっと地味なのだ。それでもくじを当てたみんなは大喜びだった。
「手をかざしてもらうと熱を放出しているのがわかると思います」
係の人はそんな感じのことを言っていた、と思う。よくわからないのは1階の冷房装置の轟音がここ3階にまで伝わってきており、少し離れるともう何言ってるかわからないから。
見学者たちは興奮気味に手のひらをマシンに向けている。その熱気で計算結果が狂うんじゃないかと不安になるほどだ。
コンピュータの進化の先端が見られます
実は地球シミュレータ、このマシンが2代目となる。
先代の地球シミュレータは導入当初、世界一速いスーパーコンピュータとして名を馳せていた。しかし時は経ち、今ではもっと小さく、もっと速いコンピュータが作られるようになった。
そこで今回の新システムが導入されたのだ。
この新しい地球シミュレータは以前の物に比べ3分の1のスペースに収まるにもかかわらず、スピードは3倍になったのだという。接続ケーブルの長さなんて2400キロから220キロに短縮されたのだからすごい小型化だ。
これがなんと、お小遣いで借りられる
ここで一つうれしいお知らせがある。なんとこの地球シミュレータ、常時有償利用の受付が開かれているのだ。つまりお金払えば僕らでも使えるということ。
料金体系は驚きの1ノード(計算機の単位)1時間あたり3947円。安い!のかどうかまったくわからないけれど1回飲みに行くのガマンしたらこいつが1時間借りられるのだと思えばぐっと身近に感じられるだろう。
今原稿を書きながら写真を見ているが、やはり地味だ。でも実際にあの場に入り、機械が発する振動を肌で感じ、中でちかちか点滅するLEDを眺めていると、どこか熱くなるものがあるのだ。エジソンとかコロンブスなんかがいても立ってもいられなくなった時の気持ちに通じる、人類本来の前に進もうという本能なんじゃないだろうか。
難しいことはよくわからないが、ここに世界屈指のスーパーコンピュータが動いているということ、そしてそれをくじ引きしてまで見たい人たちがいること、それは科学大国日本の誇りと考えていいんじゃないかと思いました。
さらなる進化が楽しみです
地球シミュレータは僕たちに未来へと続く道を見せてくれた。これは大切なことだと思う。省エネ、縮小ばかりが善ではないのだ。
また他に速いマシンが現れたら対抗してパワーアップしたらいいと思う。そうやって是非を問われ続けるのもまたこのマシンの役目なのかもしれないのだから。