デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


土曜ワイド工場
 
「俺たちの豚肉を食ってくれ!」といわれて


私は、菜食にも興味があるけれども、豚汁を食べるたびに
「ああ、汁物の中でいちばん美味しい! 生き物の肉を煮出した汁はすごく美味しい! なんて罪深いんだ! でも美味しい! 肉食やめられない!」と思ってしまう人間だ。豚肉ラバーだ。
イスラムの超かっこいい男性と恋に落ちた場合、どうするんだろう、と悩む位、ソーセージもラフティも好きだ。
しかし、ブランド豚については、あんまり深く考えたことがなかった。
豚って、そんなに味の違いがあるのか…?

で、先日。某情報誌を見ていたら、小さい字で、イベント告知が載っていたのだ。
タイトルは「俺たちの豚肉を食ってくれ!」。
全国のこだわり国産豚を、生産者が、しゃぶしゃぶにして、無料試食させてくれるという。
タイトルのインパクトと、「豚の味比べ」に魅力を感じて、会場であるお台場パレットタウンまで向かったのだが…。
それは日本養豚生産者協議会青年部というトコがやっている、こじんまりとしたイベントであった。
いや、こじんまりしてても、いいのだけれど。

大塚 幸代



共食いキャラ天国

会場はお台場らしく、お子様連れ、観光客がいっぱい。
でも、このイベント目当てに来たお客さんは、かなり少ないようだった。



まず迎えてくれたのは、3種の着ぐるみ。全部ブタさん。 着ぐるみがあると、とにかくパッと華やかにはなるが、豚肉イベントに豚さん着ぐるみ…。食べられる側なのに。
多少の違和感を感じた。が、考えてみたら、自分がイベントをやる側であっても、この着ぐるみしかチョイス出来ないことに気づいた。肉の切り身のキャラなんて、作れるわけないし。出来てもホットドック型くらいか?
「共食いキャラ」、おそるべし。

そして、メインステージも。


「ガンバルゾー!」と、豚さんが飛び跳ねていた。
ガンバルゾー…。
何故か片仮名でガンバルゾー…。
頬染めて、両手(両脚?)を揚げて、飛び跳ねている。
いや、豚がキャラクターになるのは仕方ないとは思うのだが。ガンバルのか…。美味しくなるために、ガンバルんだ…。なんだか申し訳ない気持ちに。

しかし、これだけではなかった。グッズ販売も、さらっと行われていた。



豚肉イベントに豚グッズ。そういうものなのか。
こういう、イラストっぽい、可愛いものなら、まだいい。納得出来る。
部位の解説の描いてあるTシャツなんか、すごくかっこいい。買いそうになったほどだ。サイズが合わなかったので諦めたけれど。


でも、この超絶可愛い子豚さんのグッズを見てしまうと、複雑になる。
特に、カレンダー。豚肉試食イベントに来て、365日、可愛い子豚を見続けようと、購入する方はいるのだろうか。そんなに肝の据わっている人って、生産者さん位じゃないだろうか。
いやまあ、「食欲」と「萌え」とは、べつか。





木彫りの豚(なんだか高そう)や、パネル展示も。木彫り豚には、ひっきりなしに子供が乗っかっていた。猛烈に魅かれる何かがあるのだろう。

 

早食いの魅力を知る

まず、観たのは「ホットドッグ早食い大会」だった。





1本のでっかいホットドッグ(パンはフランスパン)を、食べきるという勝負。
早食い競争って、テレビでは何度も見たことがあるけれど、生で観るのは初めてだった。
年齢も性別もバラバラの方々がエントリー、一斉に食べ始める。
鳴り出したBGMが田原俊彦の「抱きしめてTONIGHT」(のインスト)だったので、なぜにその選曲なんだ? と、ずっこけたが…、早食いが、あんなにドキドキするものとは思わなかった。
人が無理して食べるところを見ると、生理的にウワッ、ウワーッっとくる。

同行した友人と「あの人が早いんじゃない?」とか、見かけで予想していたのだが、
これが、全然当たらなかった。
皆、必死で口に押し込んでいるのに、余裕でパクッ、パクッ、っとゆっくり味わっていくお父さんとか…意外と早いのだ。
ホットドッグ1本でこんなに迫力あるのなら、フードファイトとか、ギャル曽根とか、生で観たらめちゃめちゃ感動するんだろうなー、と想像した。

ちなみに子供の部もあった。ホットドッグは小さめサイズに変更。親御さんは撮影しまくり。優勝者は、豚肉5キロ、もしくはハム・ソーセージ詰め合わせをゲットしていた。大変にうらやましい。

 

しゃぶしゃぶ味くらべ

「それでは国産豚のしゃぶしゃぶを配布しますー」
アナウンスが聞こえると、どこからともなく、人がぞろぞろ集まり、あっというまに長蛇の列となった。人は無料に弱い。私もだけれど。



並んで待っている間、調理をするブースを見て、友人が
「オペレーションが良くない!」と、なんだかイラついていた。
友人は飲食店勤務の経験があるせいで、「アレをあーしてこーすればもっと早いのに!」と、細かく指摘していた。私も、まあちょっとアレは学園祭みたいな手つきだな、とは思ったが、「主催してる、若手の豚肉生産者の人が作業してるんだよ、無料なんだし別にいいじゃん〜」と友人をなだめた。
そうだ、無料でイロイロ食べられるのだ。文句を言ってはいけない。

そして今回、私たちが食べられたのは6種の豚肉。


鹿児島:鹿児島XX

ご存じ、有名ブランドポーク。肉の仕上げ時に、動物性飼料を与えず、植物性飼料だけを使用。脂肪の旨味が濃い。

静岡:大場さんちのしずぽーく

脂肪は白く、肉質がきめ細やか。口のなかでほのかな酸味と甘さが残り、ご飯にぴったりの肉。

 

山形県:米澤豚一番育ち

米澤の自然の中で、女性スタッフがきめ細やかに飼育。赤味に適度な脂肪を持ち、芳醇で豊かな味と香り。

栃木県:笑顔大吉ポーク

とうもろこしを主とした飼料で、ストレスなく清潔な環境で飼育された豚肉。きめこまやかで淡いピンク色。

 

長野県:安曇野ヨーグル豚

3割が国産米材料の、液体の飼料を使用。北アルプスの水と空気で育てた、やわらかく、さっぱりとしたお肉。

鳥取県:ポークロゼ

肉がピンク色なので、ロゼとネーミング。肉質がやわらかく、ビタミンEの含有量が普通の豚肉の2杯。


以上、キャプションに付けた肉解説は、会場にあった説明ボードからメモしてきたものを参考。

いや、真剣に食べた。
微妙に、みんな違う味がした。
でも、あんまり差が分からなかった。
個人的には、鳥取の「ポークロゼ」がいちばんやわらかく、食べやすかった(次点・山形「米澤豚一番育ち」)。が、他のもそれぞれ美味しかった。
友人いわく、
「豚ってさあ、生き物として、そんなに種類がないっていうか、ベースはそんなに変わらなくて、飼育法とか、餌とか環境で差を出そうとしてるから、味の違いって、なかなか出せないらしいよ?」
とのこと。
後で調べたら、ブランド豚は全国に250種類ほどあるけれども、明確な基準はなく、名前を付けた時点で「ブランド豚」になるんだそうだ。そういうものなのか。

とはいえ、真剣に、純粋に、豚肉を食べる機会がなかったので、良い経験だった。
豚肉はやっぱり美味い。可愛い子豚の写真を見ても、食べるのをやめる気にはならない。

帰路、友人に「豚汁とかホットドッグとかの販売ブースもあれば、もっと楽しかったのにねえ」というと、「きっとあの会場、食品の無料配布はオッケーだけど、販売は駄目なんじゃない?」と、鋭く返された。またまた飲食業経験者発言。なるほど、そうなのかも。
でも他の豚肉料理も食べたかった。豚肉だらけのフェスティバルで、豚肉満喫したかった。あとビールも飲みたかった。そうなったら、どんなに盛り上がることだろう。だってみんな、豚肉好きでしょ? ほぼ毎日食べてるでしょ?
来年以降に期待だ。

渡されたパンフレット入りエコバッグには、ミツカンのぽん酢しょうゆミニサイズが入っていた。妙に嬉しかった。
同封されたミツカンのチラシに、「豚バラもやし鍋」(きのこ、ニラ、にんじん、豆腐入り)の作り方が載っていた。大まかに言えば、これらの材料をぶっこんで、煮るだけ。経済的だし、やたら美味しそうだったので、この冬は、これを作ろうと思う。


 
 

 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.