焼き豚とにんじん、ピーマン、玉ねぎ。具はいたってシンプルだ。野菜はシャキシャキ、豚はカリカリに焼かれている。にんにくの効いたピリ辛の味付けは食が進む。奇をてらうでもなく、普通においしいピラフなのだ「ヤンキーピラフ」は。
かなりのボリュームがあったが一気に完食してしまった。
しかし、これのどこがヤンキーなのか? 謎は深まるばかりだ。ご主人にうかがってみた。
― ― なぜ「ヤンキーピラフ」なんですか?
「昭和50年に店をオープンするとき、近所の住人を集めてメニューの試食会をやったんです。そのときに地元のヤンキーのお兄ちゃんたちも15人くらい来てくれました。彼らに何かインパクトのあるメニューをと思って、鉄板のままピラフを出してみたんです。そしたら気にいってくれてね。そのうちのひとりが「これ、ヤンキーピラフにしようぜ」って。だから名付け親は私じゃなくて、そのヤンキーの子なんですよ」
なんと「ヤンキーピラフ」の命名者はヤンキー自身だったのだ。「ヤンキーピラフ」は開店当初から看板メニューとなり、ヤンキーはもちろん、女性から子どもまで人気を博したとか。
ちなみにご主人は元ヤンキーではないらしい。
「わたし? よくそういわれるんですけどわたしはヤンキーじゃないですよ。ヤンキーの子たちは好きですけどね。昔も今もこの辺りはヤンキーが多い。ちょっとガラ悪いけどみんないい子ですよ。ヤンキーを卒業したあとも、この店に通ってくれる子も多いですからね」
ちなみにその名付け親の青年は更生し、現在は市役所に勤めている。この店で現在の奥さんと知り合い、結婚してからも度々店を訪れていたという。子どもを連れてくるようになっても頼むのはやはり「ヤンキーピラフ」だったそうだ。
「ヤンキーピラフ」にこんな微笑ましいエピソードが隠されているとは思いもよらなかった。 |