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ひらめきの月曜日
 
英文法参考書さんの謎
彼は昨日みかんを食べませんでした
(be動詞過去形の否定)

「これは馬ですか? それとも、花ですか?」

英語の参考書にこんな文があって笑った、馬か花かぐらい聞かなくても見れば分かるよね、なんてのはよくある笑い話だ。

とくに中学生ぐらいのころの英語の教科書や参考書に載っている文はおかしかった。普通使わないような、独特の文体。

実際、日常的な生活で使えそうなシーンがあるんだろうか。参考書の英文和訳を改めて読み、日常のひとこまとして再現してみた。

(text by 古賀及子



久しぶりの英語の参考書

私も大人になって結構な年数が経ってきた。英語の参考書を最後に見たのはいつのことだろう。

そもそも、私は中学・高校時代あまり勉強しておらず、教科書こそさすがに持っていたけれど、わざわざ参考書という物を買ったか思い出せない。

特に英語はいちばん苦手な科目だったのだ。自慢じゃないが、中1のときに100点満点の定期テストで6点を取ったことがある。

6点のうち1点は確か「radio」の単語の意味を聞く問題だった。自信を持って「ラジオ」と答えた。ちなみにそのテストでは「じゃがいも」の英単語を書く部分で「jagaimo」と書いて×をもらっている。なんだよー、もー、「jagaimo」ってー!


本屋に行ったら小学生用の参考書が並んでいてびびった

英語が苦手だったから余計に英語をそのまま訳した参考書の中の日本語に対して「なんだあら」みたいな抵抗する気持ちを持っていたのかもしれない。

抵抗とかほんとういい。頼むから勉強してくれと強く当時の私に伝えたい。


文法を解説する参考書が穴場

今回は基礎的な英語の方がシンプルでおかしい文体が見つかるのではと思い、やさしめの参考書を探した。

小学生用の参考書は文法ではなく会話に即した英文が多く、今回いう「へんな文」はあまりなかった。例えば、「I'm sorry.」とか「What time is it now?」とかだ。これだったら普通に現実で使う。 ヘンじゃない。


今求めている文はもっと普通の会話に使わない文だ「そこにはみかんもあったが、ポンカンもあった」みたいな

とすると、ヘンな英文の和訳は、やはり中学生が文法を学ぶために使うようなタイプにひそんでいるのだろう。

英文法をやさしく解説するがために、日本語の方がちょっとおかしくなってしまったというパターンが今回のターゲットだ。

中学英語の文法に特化した参考書を買ってきた。ひらいたとたんに「あっ、これ苦手なやつだ!」と、実際体が5cmくらい本から離れた。


そうそう、こういうやつ!

例文のような状況を探してみます

今日は文法を理解するために本を見ているのではないのだ。ただ、おもしろがればいいんだよ。自分に優しく言い聞かせ、早速参考書に載っているような例文を探してみよう。

以下、中学1年〜3年で習う基礎的な英文から見ていくことにします(以下の英文は、参考書を(文字通り)参考にして再構成した文です)。

まずは参考書のかなり最初の方のページに載っていたこちら。

これはペンです。
私はペンを持っています。
そのペンは赤いです。

あの有名な「This is a pen.」だ。荒井注のギャグとしても全国区である、「ザ・英文」の代名詞ともいえる文である。

参考書ではさらに、「持っています」「赤いです」とたたみかけきてものすごい勢いでペンを推していた。

こういうシーンは実生活にありえるだろうか。試しにやってみよう。


あれ、安藤さん。それ何ですか?

これはペンです

私はペンを持っています


そのペンは赤いです

英文直訳の世界は現世ではない

再現してみていよいよ明らかになったが、英文の直訳文を再現したこの世界では、ペンはかなり珍しいものらしい。

現世ではもっとペンの認知度は高いし、持っていても、それが赤くても言うほどのことじゃないだろう。

どこの世界の人たちなのだろうか。英文和訳の人たちは。

今回はこういったことを、もうちょっと続けようという企画なのだが、いきなり不安だ。異世界の寸劇みたいな記事に終わってしまわないだろうか。


そのペンは、赤いんです!

本当は、もっと外をかけ回って英文和訳されている様子のシチュエーションを探す(それこそ「私はとても広い草原にいます」というような)企画のはずだったのだが、参考書を読むとどれもかなり小さな半径で起きている文ばかりだったのだ。

仕方がないので、引き続き編集部の安藤さんと、さらに工藤さんにもご協力願ってこのまま続けてみたい。

さあ参考書をめくろう。ぱらぱらとめくっていて次に目についた文はこれだった。

彼は先週、幸せではありませんでした

いったい彼に、何があったのか。


先週は幸せじゃなかったなあ

彼に何が?! 待て、次ページ!>
 

 
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