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はっけんの水曜日
 
冬の渡名喜島探訪

鉄壁の守り、渡名喜島の伝統家屋

渡名喜島最大の特徴と言えば、やはり沖縄伝統家屋の建ち並ぶ集落景観ということになるのだろう。お次はその渡名喜島の村並みを、もっとしっかり見ていくとしよう。


フクギの木が敷地を囲い、その合間から建物がちらりと見える
サンゴの石垣や白砂に、赤瓦がよく栄えますなぁ

村道1号線でも散々見られた濃い緑色のフクギの木。それぞれの家の周囲にこれでもかと言う位に植えられており、その生い茂った枝葉が独特な雰囲気を醸し出している。


渡名喜島の建築は、ほとんどがこのスタイル

家屋の前面に、ドドンとでかい壁が立っている
そして屋根の上にはシーサーがガオーと威嚇

ご覧の通り、家屋の入口には大きな壁が立ちはだかっている。これは渡名喜島ではソーンジャキと呼ばれているもので、ヤナカジと呼ばれる悪い風が家に入らないようにする為の壁だそうだ。また、道路から家の内部が見えないようにする為の目隠しでもあるらしい。

屋根の上ではシーサーがこちらを見張っているし、家の前には大壁。こりゃぁ、ヤナカジだかなんだか、そういう悪いモンも易々とは入れんだろう。

それにこのソーンジャキ、家ごとに素材や大きさがまちまちで、なかなか見て回るのが面白い。以下、渡名喜島ソーンジャキ・コレクションをご覧あれ。


石で作られた立派なソーンジャキのお宅
こちらはソーンジャキにも赤瓦が乗ってる

こちらは生垣をソーンジャキに使用
コンクリと植物のハイブリッド

こちらも生垣タイプだが……まだ成長不十分か
こちらは……って、枯れてないか?大丈夫か?

完璧なソーンジャキだと内部が全く見えない
ちなみに、家屋は道路より少し掘り下げられている

一軒一軒、家屋とソーンジャキを見て回らせていただいたが、これら渡名喜島の家屋はその全てが南側を向いていた。なぜだろうと考えたのだが、恐らくは暴風対策ではないかと思う。

渡名喜島は台風が直撃することも多々あり、家を守るためにフクギを植えて防風林とし、また家を道路より掘り下げて風が直撃するのを防いでいる(渡名喜島の地面は砂なので、雨が降ってもすぐ吸収され、低い場所に家を建てても浸水することとかは無いのだとか)。

家の入口を山側の南にすることで、そしてさらに家の前にソーンジャキを立てることで、少しでも家を風にさらされないようにしているのだろう。沖縄ならではの工夫ですなぁ。


そんな理屈はいらねぇ、とばかりにヤギが横切る
沖縄の道端で良く見かける魔よけの石敢當(いしがんどう)

集落内には拝所も多い(本土の神社や祠とはちょっと違う)
集落の外には、こんなワイルドな崖もある

とまぁ、こうして集落内を見て周り、自転車で島一周もして渡名喜島を十分堪能できた私であったが、ただ一つ、ちょいとばかり気になる事が。日が傾いてくるにつれ、風が少しずつ強くなってきているのだ。

風が強くなると波が立つ。そして波が立つとフェリーが港へ入れないかもしれない。果たして私は明日、那覇に帰ることができるのだろうか。

 

フェリーはやってくるか、それが問題だ

翌朝、起きたら風がびゅうびゅう吹いていた。


写真では分かり辛いですが、木々が結構揺れています

これは……大丈夫なのだろうか。本当に欠航になるんじゃないだろうか。民宿の周りのフクギの木は、そのように感じさせる揺れ方をしていた。

宿で朝食を取った際、おかみさんは風やフェリーの欠航について一言も触れなかった。このくらいの風では欠航になどなりゃしないと分かっているのか、それとも延泊することになると既に知っていて、私に気を使っているのか。

そういえば、昨日宿にチェックインする際、ご主人が私の旅程について聞いてきた。それはひょっとして、延泊する時間的余裕があるのか無いのかを確かめたのではないだろうか。恐らく明日は海が荒れるだろうということを知っていて……いや、まさか、そんな……。

とにもかくにも、私はフェリー乗り場へ急ぐことにした。そろそろ那覇行きのフェリーがやってくる時間なのだ。すると――


普通に、フェリーがやってきた
普通に、汽笛を鳴らした

普通に、港へ入ってきた
普通に、着岸した

なんてこたぁない、依然風はあったのだが、フェリーはそれをものともせず渡名喜島に到着した。正直、欠航したらそれはそれで楽しいかな、とも思っていたりしたのだが。

誰だ、誰なんだ。渡名喜島の欠航率が高いとか言ったのは。誰だ、誰だ、誰……あ、オレだった。

渡名喜島いいとこ、一度は(時間的余裕を持って)おいで

那覇に着いてから係員に聞いてみると、「今月(2009年12月)、渡名喜島へのフェリーが欠航したのは4日ですね」という返事だった。これが多いのか少ないのかは分からないが、まぁ、結果的に私は欠航には捕まらず、無事帰ることができたわけだ。

渡名喜島に行って驚いたのは、子どもや若い人が多いと言うことだ。年配の方もアグレッシブに動き回っていた。伝統家屋の集落などと言うと、どうしても過疎とか高齢化とかの話が聞かれるが、ここはそういうことも少ないようで、島の社会がしっかり機能しているように見受けられた。

素朴で味わい深い、そんな場所に行きたいならば、渡名喜島はオススメできますな。ただし、行くときは2、3日続けて欠航になっても大丈夫なよう、余裕を持っておいた方が良いでしょう。でないと、20万円ほど払ってヘリコプターを飛ばすハメになるそうで。

村道1号線は夜になるとライトアップされ、また別の世界(常世とか)に引き込まれそうになった

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