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フェティッシュの火曜日
 
元祖の亀の子束子は三倍もつらしい

亀の子束子の作り方

濱田さんからたわしの話を聞いているだけでも知らないことだらけで十分おもしろいが、せっかくなので工場内を見学させていただいた。といっても、ここの本社工場は検品と包装だけでたわし自体はもう作っていない。しかし、一通りの道具はまだ残してあり、ここで見学用に作ることも可能だというので、製造工程を見せてもらった。

亀の子束子の形はだれでもイメージできるけれど、その作り方はなかなか想像できないと思う。これがおもしろかったのだ。


「私は職人ではないのであまりうまくはできませんが…」と、社員の方が実演してくれました。 まず二つ折りの針金の間に、ヤシの繊維を均等に並べていく。品質を保つには、機械化が難しい作業だそうです。

そしてこの記事の一番の見どころ。針金を一方向にねじることで、繊維がきれいに固定されていく。この機械を借りて、栗のイガイガでとても痛いたわしを作って、誰かにそっと渡したい。 ちゃんとした職人さんが作ったものを、刈り込み機で繊維の長さを揃えた状態がこれ。ここまでは思いつく人はいるかもしれないけれど、これを丸めるという発想はなかなか出ない。

せっかくなのでネジネジする瞬間を動画でどうぞ。撮影と歓声は編集部古賀さん。

ただ丸めるのではなく、ヤシの繊維で作ったひもを添える。これで繊維の密度や強度、使いやすさがさらにアップ。やるな、西尾正左衛門。 両端をペンチでつないで、はみ出た繊維をカットしたら完成。この作業工程は板前さんがよどみなく魚をさばくような美しさがある。

なるほど、たわし作りは本当に全部手作業だ。スリランカの職人さん、ありがとう。

針金に挟む繊維の量やバランス、針金を巻く力加減、丸くする曲げ具合など、簡単そうに見えるけれど、どれをとってもきちんとやるのは難しそうである。

でもだ。私でもやってやれないこともないような気もしないでもないこともない。というか、やりたい。

 

もちろんやってみた

けっこうやれちゃうんじゃないかなと思って挑ませていただいたのだが、読んでいる方の予想を大きく下回るクオリティとなりました。


お借りした100周年記念の前掛けがかっこいい。 最初の針金にヤシの繊維をバランスよく挟む作業が楽しい。やりながら、「これ、自分に向いているかも」と思った。

繊維をきれいに並べたつもりでも、針金を巻いてみると厚みのムラがはっきりとでる。「ムラがあると針金が切れますから」と言われて焦る。 はい、完成。向かって右側が商品の亀の子束子、左側が私の作った「雨にぬれたチャウチャウ犬」のオブジェ。

あー、無理無理。

前掛けをかけた時は、海のむこうのスリランカに渡って、母国に送る亀の子束子を作り続ける生活もいいかなと妄想したのだが、私が社長だったらこんな不器用な人は雇わない。



たわしを握りながら考える

続けて検品と包装を見学させていただいた。「他品の三倍もつ」と広告するだけあって、ヤシの繊維のいい部分だけを使ってスリランカでつくられたたわしは、さらに本社で多くの検査項目をクリアして、初めて亀の子束子西尾商店の商品となる。


検品と袋詰もすべて手作業です。 一つ一つを目で見て、手で触って、最終調整をしていきます。

品質には絶対の自信があるという亀の子束子は、標準サイズで税込294円。

正直、100円ショップに慣れた金銭感覚の身には高く感じてしまう値段だが、本当に三倍もつなら三倍の値段でも計算はあっているなと思ったが、そういう話ではないですね。

105円のたわしと294円のたわし、どっちを選ぶかは買う側の使い道と考え方、懐具合によると思うけど、何も知らずに選ぶよりは、いろいろ知った上で選ぶほうが買い物は楽しい。


取材協力:亀の子束子西尾商店

たわしは握ると気持ちいい

とりあえず私も浴用たわしのほかに、普通の亀の子束子を一つ買ってみたのだが、あの作業工程をみてしまうと、なんだか使うのがもったいなくて、とりあえず今は手に持ってニギニギしている。たぶん三倍気持ちいい。

こういう取材をすると、テレビの通販番組以上につい財布の紐が緩んでいろいろ買ってしまうので、取材先が高い壺をつくる陶芸家とか西陣織の職人とかじゃなくてよかったなと思った。

四代目と私。本当はここに浴用たわしで体を洗っている自分の写真を入れようかと思ったが、違うたわしが写ったのでやめた。

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