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フェティッシュの火曜日
 
入れ歯レンタインチョコ


緊張しながら見守っていると、慣れた手つきでバリバリとはがしてくれた。先生、私の歯、どうなってるでしょう。

ゴム手袋をしていますがお菓子作ってます。

コロンと飛び出たのは、まさしく私の歯のそのものだった。

ホワイトチョコと苺のチョコは、歯を作るためにある。

二次カリ

ホワイトチョコがよい感じに乳白色で歯っぽい。苺チョコも健康的なピンクで、なかなか魅力的な歯になった。

先生は「せっかくだから二次カリでもつけといたら?」とアドバイスしてくれた。二次カリとは二次カリエスの略で、詰め物がとれて歯医者に行ったら奥で虫歯が進んでいた、といった二次的な虫歯の事を言うらしい。

アラザンとチョコペンで虫歯をつくると、ちょうどいいアクセントになった。楽しい。誰が食べるのかという問題はしばし忘れてこの楽しさに浸っていたい。

入れ歯ケースを型にして、上あごと下あごを作る。

削れるところは削っておく。


この状態で持ち帰りました。至れり尽くせりのお菓子作り教室だ。

冷蔵庫で完全に固まらせ、渡す寸前に型から出して成形することにした。

先生、今日は本当にありがとうございました。パティシエと歯科医、両方の意味をこめてこれからも先生と呼ばせていただきます。

楽しそうに作業する先生。

 

仕上げ

入れ歯ケースから取り出し、下あごの舌の部分を切り落とす。歯茎の表面を彫刻刀で整え、上あごに熱したスプーンを押し付ける。

字で見るとなんて怖い事をしているんだと思うけれどスイーツの話なので安心してください。

せっかくなので誰かにあげたい。本気で嫌がられる可能性もあるので、友人は避けたほうがよさそうだ。

考えたすえ、甘いものが好きな父にあげることにした。

できあがり。見れば見るほど自分の歯だ。

別アングル。どういう表情にするか迷う。

 

父を呼び出す

家に父を呼び出し、そうっと開けるように指示しながら箱を渡した。チョコレートをあげるとは言ってなかったので、その指示に警戒して「びっくり箱じゃないの?」。とおそるおそる開けていた。ある意味そうなんだけど。

反応をまとめると、
「うわっ、なんだこれ!」
「かんべんしてくれない?」
「これ冷蔵庫にそのまま入れといたらびっくりするな」
「歯茎のところを赤く腫らせて歯槽膿漏作ったほうがいいな。ジャムかなんかで」

最初はびっくりしていたが、そのうち演出の提案をし始める始末。
でも最後に「今度は茶色いチョコで普通に作ったやつがいい」と言っていた。もっともな意見かもしれない。

64歳の今まで虫歯になった事がなく、歯を削ったり抜いたりした経験がないらしい。
「ここらへんに歯槽膿漏を…」そんなにジャムが食べたいのか。



メッセージ性とかないです

歯の丈夫な父にあげることで、「これからも歯を大切にしてください」みたいなメッセージ性がうまれてしまったが、そういう事ではなく単に見た目がおもしろそうなのでやった事だ。あとだじゃれが言いたかった。

それに、歯医者の待合室には「バレンタインにキシリトール入りチョコレートはいかがですか」と書かれたポスターが貼ってあった。歯を大切にというメッセージを込めるなら、入れ歯チョコを作るより絶対にこちらをおすすめする。

 

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