ひな人形の総数、3万体
上の方がかすんで見えない。
ここは勝浦市街中心部にある遠見岬(とみさき)神社。鳥居をくぐって神社へと続く石段が全てひな壇になっているのだ。60段の石段にひな人形を1200体並べました、と書いてあった。いま調べたら仙台市民会館大ホールのキャパが1300人くらいだから、そのくらいだ。すごいぞ、と伝えたかったのだが伝わっただろうか。
どうやら駅から少し離れたこのあたりが「ビッグひなまつり」の中心地のようだ(街中でやっているので会場が明確ではありません)。周囲を歩くと他にも階段をひな壇にしているお宅がいくつかあった。
交差点にも巨大なひな壇がセットされていて立ち止まらずにはいられない。
普通ひな人形はお内裏様とおひな様、ふたり並んですまし顔、だろう。
しかし勝浦のひな壇は違う。何人いるのかわからないほどのすまし顔が最上段にずらっと並び、その下にはさらにわんさかと三人官女やら五人囃子たちが陣取る。
期間中は町中に3万体以上のひな人形が飾られるという。多くは全国から送られてきたものだ。
お気づきの方も多いかと思うが、これら全て屋外に飾られている。雨が降ったらどうするんだろう。運営側の方に聞いてみた。そうしたら即答だった
「しまうよ」
と。そう、雨が降ったらもちろんのこと、夕方には3万体、全部しまうのだそうな。で、翌朝また全部出す。
「慣れてくると1時間くらいで飾り付けできるよ」
とはいえこの片付けと飾り付け作業が2月下旬から3月3日まで毎日行われるのだ。その労力だけでもビッグだ、まちがいない。
広がり続けるビッグひな祭り
この「ビッグひな祭り」、もともとは徳島県の勝浦町からはじまったものらしい。それが同じ勝浦ということでここ千葉県勝浦市でも開催するようになった(全国勝浦ネットワークというつながりがある)。由来は意外と名前つながりだった。
最近では他にも長野県須坂市で開催されているということで、このビッグひな祭り、じわじわと広がりつつある行事なのかもしれない。
地元の人が楽しむ祭りでもあります
会場近くの駐車場には観光バスがたくさん停まっていた。週末にはもっと盛り上がるにちがいない。
しかしこの祭り、観光客だけをあてにしたものではないのだ。町を歩いていると、地元の方がすごく楽しそうにひな人形を眺めながら干物を食べている。
「ほら、昔同級生だった加藤っていたやろ、あの**ちゃんちの向かいの。あそこのお人形さん、きれいやぜー」
地元のおばちゃんたちがひな人形を肴に井戸端会議に花を咲かせている。毎日出したり閉まったりしなきゃいけないのに、みんなこの祭りを本当に楽しんでいるように見えた。
うちにも女の子がいるのでひな人形を買った。実家にも姉のがあった。こうやって女の子が産まれるたびに増えていくひな人形は、そろそろ日本中に飽和しているんじゃないだろうか。
家にある人形を引き取ってもらえるこのビッグひな祭りは、世間のニーズに応えているのかもしれない。日の目を見ずに家にしまい込まれているよりも、ここで綺麗に飾られた方が人形としてもうれしいだろう。
ひな人形は、太陽の光の下で見ると家の中で見るよりずっと綺麗だということもわかった。着物もキラキラ光っているし、白い顔だってつるんとしてとても綺麗なのだ。
勝浦の人たちは、自分の家のひな人形もみな玄関に出して飾っていた。やはり一番綺麗な見せ方を知っているんだろう。
いいぞ、勝浦
ビッグひなまつりは想像以上にビッグなイベントだった。ひな人形はこれからも年々増えていくことだろう。楽しみだ。
しかし、なにより印象的だったのは勝浦の良さだ。魚はうまいし、みんないい人だし、暖かくて海が近くて波もいい。ばんざーい。会社までの通勤経路を検索したら、朝6時に出れば9時に出社できることもわかった。しばらく恋していたい。