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はっけんの水曜日
 
福助サミットってなんだ?


ひな祭りを見に行ったらなぜか福助に囲まれていた。何を言ってるかわからないと思うが僕自身よくわからない。

先日滋賀県の日野町に行った。妻のお母さんが住んでいるのでちょくちょく行くのだが、この時はひな祭をやっていた。

日野の町は古く、だからひな祭で飾られるおひな様も古い物が多い。普通の民家に江戸時代のおひな様があって、それを普通に民家に入っていって見られるのだ。

すごい。だから見に行ったのだが、日野では同時に福助サミットなるサミットが開かれていた。なんだ?!福助サミットって!

松本 圭司



綿向神社です。ここでも古いおひな様を公開してました。

まずはひな祭りの話をさせてください

いきなり福助サミットといわれても困る。だって、僕はひな祭りを見に行ったのだから。だからまずはひな祭りのことを書かせていただきたい。

日野の町は古く、江戸時代に日野商人(近江商人の一種)がこの地に莫大な富をもたらした。日野商人は薬や漆器を全国的に販売し、現在にも通じる流通システムを確立させたのだ。

そのせいか、古くて価値のあるものが普通の家にたくさん眠っている。そんなこんなで、ここ、日野のひな祭りでは古いおひな様を見られるのだ。


お宮に入ったおひな様。すごい立派さ。明治〜大正時代に作られたものなのだとか。

こちらは江戸時代のおひな様。顔が玉子のように丸いのが特徴。
町全体でひな祭りをしているので、案内の地図が配られています。

立派な門と庭を抜けると、お雛様が飾られた離れがありました。

普通のお宅にずかずか入っていっておひな様鑑賞

おひな様は町全体で展示されている。どういう事かというと、街角の看板に「ご自由にどうぞ」と書かれていて、個人のお宅にお邪魔する形でおひな様を見られるのだ。

すごい自由さだ。

都会だとこういうのは無理だし、人がついてなきゃならないだろう。でも日野は違う。戸を開けておくから勝手に入って勝手に見ていってね、ということになっていた。信頼で成り立っているのだ。


雛飾りってこんなに凄いのもあったんだ。えらい豪華さ。これが誰もいないところに、見張りも無しでドーンと飾られている。

べんがら塗り(赤い塗料で塗ってある)の窓から中のお雛様を覗く。普段なら犯罪者だがひな祭りの間はアリです。

桟敷窓(さじきまど)アート

日野の家の多く、特に大通りに面した家の塀には窓が開いている。窓にはすだれをかけられるようになっていて「桟敷窓」と呼ばれている。

桟敷窓の内側に椅子を用意して、そこに腰掛けて通りを見るためのものだ。日野商人はお祭りのときにお客さんを家に招待して、桟敷窓から見物してもらったのだそうだ。接待だ。

お祭りの模様は以前「滋賀で紅茶を摘んで飲んだ」という記事の中で触れたが、確かに山車も立派で、小さい町なのに盛大だった。

今もお祭りになるとこの桟敷窓から見物する家庭が多いのだが、逆に外から中を見てもらう事もしている。それを「桟敷窓アート」と呼んでいて、このひな祭りでも桟敷窓アートとして窓の向こうにおひな様が飾られていた。


これが桟敷窓です。奥にひな壇が見えますか?つまり、窓から覗いてひな壇を見てください、って事です。

なんか一見すると小規模なお店って感じも。たこ焼きとか売ってそう。

町中がこの調子だ。

桟敷窓じゃない家もあるが、そういう家も通りに面したところにひな壇を飾っていて、どうぞ見ていってくださいということになっている。

東京でも通りに面した出窓をデコレーションしている家をたまに見かけるが、そういうのを町全体でやってるわけだ。なんかすごい。

覗いては撮影、覗いては鑑賞、という普段なら間違いなく怒られることを観光客みんながやっている。

この自由さというか垣根のなさは関西だからなのか、日野だからなのか、お祭りだからなのか。きっとすべてだろうな、と思った。


見てくれよ!と言わんばかりに桟敷窓。
奥にはお宮に入った立派なおひな様。

ここのうちは、おばあちゃんがお雛様の説明をしてくれた。

江戸時代から伝わるお雛様と新しいお雛様の並びがすごい。

落ち着いた色調とデザインの江戸雛。こういうのがしれっとあるのが日野のすごさ。

かわいい車にかわいいおひな様。いいなー、こういうの。

よく見ればお雛様だらけ

桟敷窓や家の中のおひな様もすごいけど、よく見ると細かいところに細かくおひな様がいるのもすごい。

フォルクスワーゲンのリアウィンドウに飾られてたり、ブロック塀の穴に飾られてたり。

町並みの古さもあいまって、町全体がいい雰囲気になっていた。こういう感じ、好きだ。


ブロック塀に小さなガラスのおひな様。
これがメインストリート。多くの家が伝統的なべんがら塗りで赤い。

感応館にやってきました

さて、話はここでようやく福助サミットに近づく。

日野の観光案内所、それが感応館。なんで感応かというと、日野が発祥の薬で「感応丸」ってのがあってですね、ようはそれに引っ掛けたと、そういうわけです。官能じゃなくてよかった。


観光案内所も趣ある建物です。中も素敵だよ。

感応館にもおひな様が飾られていたわけですが、そこでちょっと気になる張り紙を見つけました。


ん?福助サミット?なにそれ?

窓に福助サミットという張り紙がありました。

期間は2010年の1月いっぱい。僕らが日野へ行ったのは2月の末だから、もう1ヶ月前に終わってたわけです。ガーン、残念。と思ったけど実は後に、まだ福助サミットが開かれていることを知ったのです。


でも、ガーン、終わってた!

会場になっている日野商人館(入場料300円)に行ってみたら、そこの塀には「好評につき期間を延長しました」との言葉が!

まだやってた!

そうして僕らは300円を握り締め、日野商人館へ福助を見るために入っていったのでした。次のページへつづく。


うれしい延長のお知らせ。まさか1ヶ月前に終わった福助サミットを見られるとは。

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