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ロマンの木曜日
 
プロレスマスクは非日常の入口


マスク以外もいろいろあります。

プロレスといえば、の要素のひとつとして確実にあげられるのが「マスクマン」。他のスポーツで覆面ゴールキーパーとか、ピッチャーがリリーフカーからオーバーマスクを投げ捨てながら華麗に登場、とかないもんな。もちろん被る人がいれば作る人もいる。どういうきっかけで作ることになったのか?一枚制作するのにどのくらい時間かかるのか?いろいろ聞いてみよう!…としたら、他にもいろいろ見学させていただくことに。なんかすごい観戦ツアーになりました。

大坪ケムタ



ネット用からスタートしたマスク作り

マスク製作してる人の話を聞きたいなー、といろいろ調べてるうち、サイトを見つけてインタビューをお願いしたのは「PANDA★ROCKS」主宰の練馬熊猫さん。ただサイトの作例を見てみると、いかにもなプロレスというイメージの「強さ」「イカつさ」よりも「可愛さ」が勝ったもの。そういう意味ではずいぶん個性的。基本的にパンダ推しなんですな。


正直強そうかというと…。詳しくはこちらをご覧ください。


最初に送ったメールでいくつか聞いた質問の答えも変わっていて、こりゃ面白い!とあらためて熊猫さんに直接お会いしての取材をお願いすると、最初に会う場所として指定されたのは埼玉県蕨市のプロレス会場「ISAMIレッスル武闘館」。こちらで定期的に行われてる女子プロレス団体・アイスリボンさんの大会に熊猫さんのマスクをかぶった選手が出てるという話なのだけど…。


入場式の挨拶中。マスクマン、マスクマン…


あ、いた!パンダマスクの2人!


このお二人が熊猫さんがマスクを作っているプロレスラーの中でも話題のタッグチーム「ミスター6号&8号」。名古屋を中心に活躍している2人がこの日特別に関東に参上。その観戦に熊猫さんが来る、というので一緒に見に行ったのでした。

ちなみに小さい方が6号で大きい方が8号。6号は現在なんと8歳!しかも4歳で試合デビューという世界最年少レスラー。でも8歳でしょ…なんて甘く見るなかれ。これが実に理にかなった動きするんですよ。


ちなみに対戦相手のりほ選手も小6(当時)。
大人相手にも巧みなレスリング!

さらにラ・ケブラータ(ロープの反動を利用しての場外ムーンサルト)まで!
8号もアマレス技がすごい!


自分も普段からそれなりにプロレス観てますけど、いやあコレはスゴかった…お世辞抜きで日本で一番すごい8歳児ですよ、こりゃ。それにまた、マスク無しで試合しててもそれはそれでスゴイ8歳なんだろうけど、マスクをしてることで強さに神秘性が増すというか。


この日、試合以外は特別にパンダマスクでした。


あらためてマスクの魔力を感じたところで、練馬熊猫さんに話を聞いてみたいと思います。さすがマスク職人、オフィシャルの時は覆面姿ですよ。


これがオフィシャルな顔ですよ。
取材ではあくまで顔はノー!


お話を聞いたのはファミレスでマスクを脱いで。もちろん素顔は撮らないのが紳士のマナー!あらためてマスクを作るようになったきっかけからおうかがいしたい。

「もう5年くらいですね。もともとはネットの大喜利サイトみたいなのがあって、そこのアイコンみたいなのに皆凝ってたんです。だいたい絵とかフィギュアとか使ってやってたんですけど、周りもやりだして何かないかな?と思ったんです。それでプロレス好きなのもあって『マスクいいなあ』と」

−−それで作り始めたと。ネット発というのも珍しいですね。縫製の経験とかは?

「ないです!最初は紙で作って、こなれてきた所で次はTシャツ切った貼ったして作ってたんです。ミシンも無かったんで両面テープで」

−−まさしく見よう見まねで。

「それからミシン使って縫うようになったんですけど、生地なんかがぜんぜんわからないんですよ!本物のマスクも持ってなかったから」

−−普通実際のマスクをバラして研究したりしそうですけど。

「いや、パクったりはしたくないんです!あくまで自己流でやりたいんですよ。だから今仕事になってもタイガーマスクっぽいの、とか言われる事あるんですけど断ってるんですよ。やっぱりタイガーは認められた人しかやっちゃいけないと思うんで。作るのも手を出しちゃいけない!」


やはりマスク作れるとなると人気のアレを被りたい!というリクエストは多いらしいのだけど、そこは熊猫さんのコダワリでパクリは許さず、実際のものを制作してる工房を教えるのだそう。正義のマスク職人だなあ。

とはいえ、パクリではなく研究用にくらい見てもいいと思うのだけど…。過去のマスクと今のマスクを持ってきてもらい、比較させてもらった。


これが試行錯誤の初期型マスク。
見た目はいいけど、被るには皮が厚め&堅い。


これが最近の。デザインも派手ですが…
のびるサテン生地を使ってるのが一番の違い。


ちなみにマスクの作り方ですが、型を作って縫い合わせていくのが基本。「小さいパーツとかおかしくなりそうですよ!小文字の『i』の小さい点とか」コレ見るとたしかになあ。チマチマしてるわ。


ちなみに型紙が出来ていれば製作は6〜8時間くらいだそう。


内側はこういう裏張りが。

−−ちなみにプロ選手のを作るようになったきっかけは?

「最初は個人用に作ってたんですけど、スペル☆パンDo選手(現在愛知県のプロレス団体・DEP所属)っていうパンダキャラのレスラーがいて、サイトに彼からメールが来たんです。それで作るようになって、彼が出てる名古屋の団体関係から頼まれるようになったりして広まった感じですね」

−−ちなみになぜパンダなんですか?

「『かわいいから』って思われがちなんですけど、昔アメリカ最大のプロレス団体・WWF(現WWE)が『世界自然保護基金』の方のWWFに訴えられて負けた事件があったじゃないですか」

−−ありましたねえ!名前が同じだからって訴えられて。

「だから世界最高峰のプロレスに勝ったヒール(悪役)って意味づけなんですけどね。だからWWFのマークが象だったら象になってた(笑)」


パンダもデザイン性だけでなく、意味があったのだなあ。だから若干ワルそうだったのか。

さて、先のミスター6号&8号が出場した大会から数日後、ふたたび熊猫さんから「小金井の大会に自分がマスク作ってる選手が出るんで遊びに来ませんか?」と言われたのでふたたび試合を見に行くことに。これがまたマスクの取材を忘れるような大会だったんですよ!いや、忘れてませんけどね!


もはやリングすら映ってないのは気にしない!

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