トンビ被害のより多い場所へ
寄せられたトンビ目撃情報を元に藤沢市へとやってきた。
そのとたん、見よこの看板。頼もしい限りだ。
さらに確実にトンビに油揚げをさらわれるため、凶悪化したトンビが多数生息するという江ノ島へ向かった。
遠目に見ても江ノ島の上空にだけトンビが浮かんでいるのがわかる。なるほど、トンビは観光客を狙うと聞いたことがあるので、江ノ島ならば標的に事欠かないということか。これから僕も行くしな。
江ノ島はトンビの他にも、カップルや釣り人が多い。そのどちらも興味のあるもの(彼、彼女もしくは魚)にしか目を向けないので、こうやって一人でおかしなことやっている人には無関心なのだ。取材には好都合。
ヨットハーバーの近く、見晴らしのいいスポットに陣取りさあ後半戦のスタートだ。果たしてトンビはどの油揚げをさらっていくのか。
さっき2時間くらいトンビを眺めていてわかったことは、トンビのテンションには波があるということ。積極的にこちらを気にする時間と、まったく無視する時間とがおおよそ20分間隔で訪れる。つまりトンビバイオリズムからすると30分くらい待っていれば一度はこちらに興味を示してくれるはずなのだ。
逆に言えば30分待って何もなければそれは場所が違うと考えていいだろう。例外ばかりを見つけ出す男、それが今の僕だ。
対岸にはうじゃうじゃいるのに
多くのトンビが舞う堤防の先へと場所を移すことにした。この堤防は釣り人が多く、そのエサや釣れた魚を狙ってトンビが集まってくるのだ。
堤防を見下ろす階段にダミーを含む油揚げの皿をセットした。
そしてまた中華丼を食べてるふりをして油断アピールだ。
この瞬間、上空のトンビが明らかに色めき立っているのがその羽音や挙動でわかった。これはいけると思う。
このくらい長い時間トンビのことを追っていると、意思疎通とまではいかなくても、なんとなくあちらの考えていることくらいわかるようになってくる。
僕の熱い視線を感じているのか、トンビもちらちらこちらに視線を送ってくる。もしかしたらどの油揚げの上に降りようか検討しているのかもしれないぞ。
来るか、トンビ。油揚げさらいに。