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ひらめきの月曜日
 
電子書籍がわからない!


その昔、インターネットもなあんにも、普及していなかった頃。
私はミニコミを作りたくて、まずバイトして10万円貯めた。取材して、ワープロを打って記事を作り、イラストを書いて切り貼りして、印刷所を探して、印刷 して、出来上がった本を家族に頼んで車で運んで…数百冊ほどの本を、手売りした。遠方の人には、一冊一冊、郵送。今思えば、死ぬほど大変だった。でも「本 が作りたいんだあ! 読んで欲しいんだあ!」という情熱で、なんとか動いていた。原価で売ったので、全く儲からなかったけど。
何で作りたかったのか、全然思い出せない。勢い、としか言いようがない。
それがキッカケで出版業界に入り、ライターなんかになっちゃったわけなんだが…。

そして2010年。iPadの登場で、脳内にピシャーッと光が走った。
電子書籍、全然よく分かんないけど、何かすごそう!
あのクソ面倒くさかった手順をすっとばし、本が自由に作れるなんて、しかもカラーなんて。夢のようだ。
でも、パソコン音痴の私には、何をどうやって手をつけたらいいのか、いっこも分からない。

そこで、電子書籍に詳しい、米光一成さん(ライター、ゲームデザイナー/立命館大学教授) に、電子書籍の未来について話を訊きに伺ったのだが…。
米光さんも「僕もまだ、よく分かってないんですよね〜」とおっしゃるのだった。
……えええええ!

大塚 幸代



「キンドルで、人が死ぬかもしれない」って言われて

――もともと、電子書籍に興味持たれたのは、何がキッカケだったんですか。

「最初は、飯田和敏くん(ゲームクリエイター)が、去年、深夜1時に電話してきたんですよ。キンドル(電子書籍リーダー)を買った、これはすごい、キンド ルで人が死ぬかもしれないって(笑)。じゃあ今度見せてよって言ったら、見せない、買わないとダメだから、って言われたんです。

それでキンドル買ってみて、ハードのすごさより、これで何が変わるかって考えると、すごいことが起こるなってわかったんです。世の中が変わるんじゃない かって。

これを使って面白いことが出来るにちがいないと思って、当時は日本語が対応してなかったので、ワークショップと称して、技術のある人に、日本語に出来る裏 技を教えてもらったりしてたんです。でもすぐに、PDFで日本語が読めるように、正式バージョンアップされちゃって(笑)。

次に『青空文庫』(電子図書館、著作権が消滅した文学作品を収集・ 公開しているサイト)を読み始めてみたんです。太宰治とかズラっとそろっているんですよ、いま太宰を順番に読んでます。僕、キンドルのせいで、太宰ブーム なんです。本棚増やさなくてすむので、本好きな人は便利だと思います。これがキンドルの実物なんですけど…。


これがキンドル。写真だとよく分からないかもしれませんが、本当に画面の見た目の感じが、紙の質感で不思議。

――うわ、読みやすいですね。

「基本原理が紙と一緒なんです。パソコンだと後ろから光が出てるけど、これは出てない。タカラの『せんせい』っていうオモチャがあるでしょ?」

――あ、あの、お絵かきが出来るボードですね。

「そう、あれと同じ原理みたい。光ってない。だから目が疲れないんです。暗い所では読めないですけど。文字の大きさも変えられるし、これくらいの重さだ と、寝っ転がって読めるんでラクですよ。長編小説も大丈夫。」

 

紙の本って、パッケージで値段決まってたんだな、って実感しました

――米光さんは、『文学フリマ』(同人誌即売イベント)で、『電子書籍部』として参加して、電子書籍を販売されていましたが、そちらのキッカケって何です か。米光さんって、もともと出版を中心に活動されているワケではないですよね。

「面白そうだから! 僕は今、ゲーム制作、ライター、講師を1/3づつやっているんだけど、その3つが電子書籍で結びつくんですよ。

電子書籍って操作部分やインターフェイスはとてもゲーム的な要素だし、ライターの仕事はそのまま直結するし。

講師やってると『いいこと言ったなー』っていう時があるんですよ。受講生とかもバンバンすごいこと言う。でも、案外、忘れちゃうから、講義中に議事録を 打ってもらって、帰りに電子書籍にして配れると面白いなと思ったんですよ。帰りの電車の中で自分の発言とか読めちゃうとエキサイティングでしょ。

そんなこと考えてる時、講座の生徒が『文学フリマ』に紙の本を出すっていうから、『紙? キンドルで出しなよー、これからは電子書籍だよー!』とか一週間 前ぐらいに言って、キンドル用にして出させたんです。」

――それが今年ですか?

「去年の年末くらいですね。それでおもしろいなーって実感して、電子書籍部を講座内で作ったんです」

――『電子書籍部』って、どれくらいのボリュームのものを、いくらぐらいで売ってたんですか。

「やってみて思ったんですけど…、本って、パッケージで値段決まってたんだな、って実感しましたね。200ページでソフトカバーだからいくらで、ハードカ バーだからいくらだとか。新人も村上春樹も同じ値段で、中身って関係ないじゃないですか。」

――そう言われればそうですね。

「電子書籍は、そういうのを気にせず、自分で値段決められる。いちばん文字数が多かった作品は、キンドルで800ページ以上ありましたね、200円。」

――や、安いですね。

「値段のほかに、早さっていうのもありますね。『いっくんとはいるちゃんのデート(ハート)』っていうマンガは、うめさんというマンガ家が、文学フリマの 前日に、たまたまワークショップをやっていて、80人の人に、ひとコマずつマンガを描いてもらっていたんです。それを翌日に販売したんですよ。」

――それはガーっとスキャンしたんでしょうか。すごいですね。

「もう値段も時間も関係ないわ、と思って。例えば今すぐ、鳩山前首相が今の気持ちを書いて電子書籍を出せばいいんですよ。3ページで1万円、200部限定。 そうすると200万円ですよ。まあ、鳩山さんは、200万円くらいじゃ、嬉しくないかもしれないけど(笑)。」

――電子書籍の対面販売って、どうやって、やってたんですか?

「いま、実際にやってみましょうか。」


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