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土曜ワイド工場
 
ポストに入ってくる羨ましいチラシ

読むと、ああ、うらやましいなあと思うチラシが毎日のようにポストに投函される。

まいにち、まいにち来るのでここのところは羨ましすぎて「そんなに自慢しなくたっていいじゃないのさ」という気持ちにもなってきた。

何かというと、不動産の売却物件募集のチラシだ。

古賀及子



1日3枚以上のペースでくるチラシ

実家の埼玉の山奥ではそれほどお目にかからなかったので都心部でのことなのだろうか。

私の住む家は東京の都心に近いところにあるのだが、やたらに不動産に関するチラシのポスティングが多い。


ほんの1週間くらいためてみたら、もうこんなに

1週間ほどためこんで、数えてみたら全部で25枚あった。なんと、多い多いとは思っていたが1日3枚〜4枚きてるのか。

そして、その全てが「売却不動産募集」のチラシなのである。「売ります」じゃなくて、「買います」の方だ。

発行している不動産会社もさまざま。にもかかわらず、内容はどこもみんな

「探しています 売却不動産」
「求む! 売却不動産」
「売却に絶対の自信!」

と、一様に売ってくれ売ってくれだ。世間の不動産の動向に疎いのでどうしてこんなことになっているのは恥ずかしながら分からないのだが、とにかく売ってくれ売ってくれとせがんでくる。


とにかく求む求むの一点張り

「私は1億8千万円持っています」

そして、この物件募集のチラシに羨ましさがつまっているのだ。

というのも、こういった売却不動産募集のチラシには具体的に「こういうお客さんが、こんな家や土地を売って欲しがってます」という理由が書いてあるのだが、そのどれもがやたらに羽振りがいいんである。

ありていに言うと、「今住んでいる家を売って1億8千万持ってます。土地か家を買いたいので売ってくれませんか」という感じのことが羅列してある。

たとえば、こういった具合だ。


○○区在住のA様が土地を探してらっしゃいます

現住所が手狭になったため、住み慣れた地域でお買い替えをご検討中です。閑静な住環境広がる○○周辺地域で、日当たりの良い一戸建てをお探しです。
なるべく早めに購入先を決定されたいとお考えです。

ご希望:土地70坪前後 間取り 5LDK
ご予算: ご予算 1億8,000万円


このような「欲しい物件とその理由」が4〜6件書いてある

いやあなた、そんなこといわれても

家に帰ってきたらいきなりポストに入っていたお手紙に、1億8千万出すから日当たりのいい土地70坪前後、間取り 5LDKの家を売ってくれないかと頼まれるのだ。

1億8千万円は超欲しい! が、残念ながら70坪もの土地はどうにもこうにも持っていない。

どうすることもできず、胸に湧きあがるのはただ「いい条件で邸宅をお求めですなあ」という羨望の思いだけなのだった。


こちらは大学教授が即金で1億5千万用意できるとのこと。おおー

高級住宅街が近いとこういうチラシがくる?

それにしても、チラシで募集しているような高級で広大な土地を持ち合わせていない私のところにどうしてこういったチラシがなんで来るのだろう。

実は、地形的に谷の部分にあたる我が家の建っている場所は、少し坂を上ると(つまり、水害危険区域じゃないところに移動すると)、ちょっとした高級住宅街なのだ。

おそらく、このチラシはそういった場所に主に配られるチラシなのではないか。一応まちは同じなのでついでにポスティングの対象区域に入っているんだろう。

田園調布や成城など地名にハクがあるけどそれほど高級じゃない住宅にうっかり住んでいる方がもしいたら、もしかしたら私と同じ羨ましい思いに駆られているかもしれない。おーい! ここにも仲間がいるぞーい!

※ちなみに、そのうちの近所の高級住宅街のイメージショットを撮影しようとしたら私の持っているデジカメの性質上、でかい家1件しかおさまりきらず、イメージショットというかそれモロにひとんちの写真になってますよ、という事態になってしまったため掲載を見合わせたことをここに付記します!


次男ご家族、いいなあ。それにしても30坪で1億って土地の高さはどうだ

本当の話じゃないらしい?

ちなみに、こういったチラシに載っている「買いたい詳細な理由」は、だいたい本当ではないという話も聞いた。

物件を任せてくれればすぐに売れますよ、というそのアピール用のコピーだというのだ。

まあ考えてみればそうかなと思うが、架空の話にしろ読み手として羨ましい思いになるのには変わりない。

羨ましい上に、どこかいい話風の内容もある。


田舎のお母様を呼び寄せる為、現在お住まいの○○周辺で高齢者対応の一戸建て若しくは40坪〜50坪の土地を探しております。今の住まいが好条件で売れた為、予算を上げて探しております。

総予算:1億5,000万円前後


田舎のお母さんが喜ぶ土地やお家が見つかるといいなあ

定番のパターン

・海外転勤から戻ってくる
・レストランや病院等を開業する

といった、ちょっと派手目の理由がこういったチラシの定番パターンではあるが、上で紹介したように、

・両親と同居するため
・家族の通院に便利な場所を
・子どもがうまれて手狭になるため

という、予算額はさておき共感できる人ごとじゃない理由も多くあって、おお、と思う。

こちらのご家庭は「第2子をご出産を機に」住み替えるらしい。


それにしてもご主人の職業が詳細だ

我が家ももうすぐ第2子が生まれようとしているので、お子さんが2人もいるのにガーデニングだなんて優雅だわあなどと羨ましいのと一緒に感心してみたりもする。

自分と同じようなステイタスのご家庭が羽振りがよかったりすると、なんだかわくわくしてくるものなのかもしれない。

あ、そうか、トレンディードラマ見て「いいわねえ」って思うようなもんか。


ちょっとした読み物になってます

紙が好きで、不要なポスティングチラシも気づくとしっかり目を通していたりする。

うちのポストにはこのほか引越し、不用品処分、美容院、整体などのチラシがよく投函されるが、この売却不動産募集のチラシが一番好きだ。

いきなり知らない人の人生が書いてあるのだ。しかもちょっと自分には考えられない金額をほいほい出している。「わーお」と思う。

これ、もっと景気がよくなったら金額ももっとエラいことになっていくんだろうか。今の家に住み続ける限り、チラシの動向は見守っていきたいと思います。

ちなみに売却募集の裏面は90%以上のチラシが「ポスティングスタッフ募集」。まだまだ配る気まんまん


 
 

 

 
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