パワーの上下移動値がわからないフュージョン
ここまで被写体としてソロ対決をしてきたわけだが、その番外編として撮りたい写真がある。
ウェブの広告でよく見かける、年収が低すぎて驚いている女性だ。クリックするかどうかはともかく、なぜだか妙に印象に残る広告ではあると思う。
その理由は、そこに出ている女性の表情にインパクトがあるからなのだろう。ここまでフォトジェニックを高めてきた私たち二人の実力テストとして臨んでみたい。
調べてみたところ、女性には3人ほどのパターンがあるようだ。年収低すぎ3人娘のうち、櫻田さんは個人的によく見かけるというCさんをチョイス。私も同じ理由でAさんに挑戦してみる。
ガーン!というショックを心に描く。その衝撃が最高に高まった瞬間がシャッターチャンスだ。
なかなかいい勝負となったのではないだろうか。悲しいサプライズがそれぞれの持ち味とつながって、全体としてのせつなさに違った角度からつながっている。
ソロ対決はこの勝負で拮抗したところで、ここまでとしよう。続いては二人の力を合わせて作品作りに臨みたい。
素材集にはモデルが一人で写っているものだけでなく、ペアになっているものも多々あるのだ。そこに挑みたい。1+1は必ず2 になるのではなく、それ以上の値になる可能性もあるのだ。
忘れてた。1+1は2以上になる可能性はあるが、2以下になる可能性もあるのだ。この写真は果たしてどちらなんだろう。どう解釈したらいいのかわからない。
櫻田さん、ここにきて羽織っていたシャツを脱ぎすて、いよいよペアルックに。その意気込みは吉と凶のどちらに出ているのか。
解釈がわからないまま、左右逆バージョンも撮影。いよいよ極まる混迷。1+1の可能性はいまだはっきりしないが、かけ算の場合はかける数とかけられる数が逆になっても商が同じ になるのはこの写真からもわかる。
これも写真の出来映えとしてはなかなかいい。はっきりとペアルックとわかることも、シチュエーションの謎具合に拍車をかける。衣装については事前に打ち合わせたわけではないので、 小さな奇跡のきらめきがここにある。もしかしたら、1+1は無限大なのかもしれない。
続いては二人バージョンのアクション編。小学生のとき、体育の準備運動の一環としてこんなのをした覚えがある。それから30年の時を経て、僕は今、櫻田さんとこれをやろうとしている。
久しぶりにやってみると、これがなかなかおっかない。相手に身を任せ、普段とらない姿勢をするというのがおっさんには実に新鮮。
右側の写真の構図が変なのは、撮影者の妻が笑いながら撮っているからだ。このポーズはあんまりもたないんだから、さっさとちゃんとした写真を撮ってほしい。頼む。
この姿勢をとりつつ、顔をカメラの方に向けなければならないというのがつらい。全体的に細かくプルプルしたまま、なんとか顔を二人で横に向ける。そこにはティーンの楽しいひとこまという雰囲気はない。 フィジカルが切実なのだ。
右の写真の様子からもわかるように、個人的には上側になったときの方が恐かった。素材集にはこのポーズのアップになったバージョンも収録されているので、そちらの構図でも載せてみよう。
櫻田さんは私より4歳ほど年下。上になっているときの表情に、若さの違いが見て取れる。人は歳をとればとるほど臆病になる部分もあるのだ。なんかミシミシいってないか、俺。
ストレッチ系のポーズで筋を伸ばしたあとは、よりアクティブなポーズに臨んでみよう。
せーので息を合わせて、思い切りジャンプ。その割には写真を確認して、高さがそれほどでもないのに寄る年波を感じる。
跳んでる人数も構図もバックも、違うところはずいぶんあるが、躍動感だけはしっかり模倣できたつもりだ。若者が躍動するより、おっさんが躍動した方が見た人に与えるインパクトは増大すると思う。
よし、素材集についてはかなりマスターしたぞ。真実から目をそらしてそんな気になって、続いてはオリジナル編に挑戦したい。