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ひらめきの月曜日
 
野菜でつくるパピルス紙

これが紙になるのでしょうか


電子書籍だの出版不況だのと、出版をめぐるアレコレが話題だ。しかし最新のトピックで頭がいっぱいの私たち、ここらで原点に立ち返ってみては、と思うのだ。

原点に返れ、というのは文明規模で解釈すると「古代文明に学べ」ということになると思う。

そういうわけで、シリーズ「古代文明に学べ」、第一回となる今回は、古代エジプトに学ぶ「パピルス紙を作ろう」です。

(text by 石川 大樹


 

そのへんの草でパピルス紙を作りたい

パピルスというのはナイル川に生えている背の高い植物のことで、古代エジプトではこれを使って紙を作っていた。英語のペーパーはこのパピルスが語源だそうである。(できた紙のこともパピルスと呼んだりするけど、今回は区別のためにパピルス紙と呼びます。)

僕はパピルスを見たことないのでどんな植物だかよく知らない。知らないからそのへんに生えてる雑草とどう違うのかもよくわからないし、違いがわからないということは「そのへんの草でもできるんじゃねーの」という気になってくるのも無理のないことではないだろうか。

「古代文明に学べ」などと題しておきながら、エジプトに対して大変なめた態度で挑んでいる。


セイタカアワダチソウってやつですか、違いますか、どっちでもいいです

植物をテーマにした企画は、常に虫への恐怖との戦いである。


古代、文明は川の近くに栄えた。川は水源であると同時に、重要な水上交通ルートでもあったからだ。

ひるがえって現代、我々にとって交通と言えば道路である。ナイル川流域に生えるパピルスに見立て、国道沿いに茂る雑草を収穫した。


俺なりのパピルス


ちなみにパピルス紙の作り方は「パピルス 作り方」で検索するといろいろ出てくる。今回はいくつかのサイトのやり方をミックスして、我流で作業を進めている。

 

茎を切り出す

パピルス紙は和紙のようにすいて作るのではなく、薄く割いた茎を格子状に並べて作る。よって今回も茎の太い草を探した。

この雑草、名前はわからないがすごいレベルでどこにでも生えている。街路樹のふもと、道路の脇、放置された花壇、公園の隅っこ、…などなど。これだけ豊富な資源があれば文明を支える記録媒体となりうるだろう。


カッターで要らない葉を落としていく

予想していた以上の「棒」ぶり


4本ぶんの葉を落としたところ。こうして見ると紙を作るにはちょっと量が足りない

足りなくなっても作業所(公園)から10m圏内で調達できるところがこの素材の強みですね


できた。右上の紙はハガキ(のサイズを測るために持参したカード引き落とし残高不足の請求書)


切っていると、この草が非常にくさい。いやこの草に限ったことではないのかもしれないけど、これだけ大量に葉を削いでいると、いわゆる草いきれというか、草むら独特の匂いがあるじゃないですか。あれを凝縮したような強烈なにおい。あのにおいが鼻に残って、1週間以上経った今でも僕はプチトマトが食べられない。ヘタの部分から同じにおいがするから…。

あと作業が終わってから休憩していたら、地面に置いてた軍手に大量のアリが群がっており震撼した。

なんかわかんないけど、成長力以外の部分でも異様にパワフルなのだ。雑草。

 

スライスして発酵

続いてできた棒を薄くスライスしていく。


固い…


切り始めてすぐに気づいたが、これはアレだ。明らかにパピルス紙に向いてない。

だって茎が固すぎて、薄くスライスなんて到底うまくできない。薄さ2mmが目安って書いてあったけど、縦半分に割るのが限界。しかも真ん中へんはフワフワと綿状になっていて全然繊維っぽくないのだ。

先端の方はけっこう柔らかくて、スライスもしやすい

けどすぐに木化して硬い部分が現れる!


おざなりなやり方で切り終わったら、気にせず次の工程へ。棒で潰して繊維をほぐす

驚くほど変化なし


先に今後の工程を紹介しておくと、これを数日間水につけて発酵させ繊維を柔らかくしたあと、格子状に並べて圧迫し、乾燥させるとパピルス紙の完成。

素材は色こそ緑だが、触った感じはほとんど枝。カゴ編みならともかく、こんな工程で紙には絶対ならないだろう。ミキサーでも使えば別かもしれないけど。


こういうサイトをやってると、途中で絶対無理と気づいても中断できないことが多々あります

今回のように。溜息が出るほどワラ

 

 

保険をかける

ここまであからさまにダメだと、結果がでるまでの1週間を憂鬱にすごすことになる。僕の明るい週末のために、保険をかけておきたい。

自分の雑草を見る目にすっかり自信を失ったので、ちがうアプローチで身近な植物を探した。野菜だ。


僕が考える、繊維っぽい野菜2強。セロリとアスパラ

柔らかいのでサクサク切れます。ミリ単位のスライスも思いのまま!


左がアスパラ、右がセロリ

こちらも棒で潰して


バケツの水に投入


このまま数日間、発酵させる(と言えば聞こえはいいけど、要するに腐らせる)。

 

 

シートづくり

雑草は1週間、野菜は3日間待った。保険をかけたおかげで、心配事のない楽しい週末も過ごせた。社会人生活、こういうの大事ですよねー。


格子状に並べていく。アスパラは三日間の間にかなりしなっとしていた

隙間なく敷き詰めた。むこうが透けてる


これを板にはさんで、加重でさらにつぶします

ちょっと水分が抜けた。紙になりそうレベル:「紙かなー」


セロリも

プレス後。アスパラよりさらに薄くなってて、紙になりそうレベル:「紙かも!」


野菜部門はなんとなく期待できるような仕上がりになっていて何よりである。続いて本命の(はず)(だった)雑草。


どう見てもワラ

紙レベル:「紙!?」


厚みがバラバラなので、上に乗っても安定感がない

数々の工程を経て、やっぱりワラ


野菜を投入した時点でこちらにはまったく期待していなかったので、特にがっかりとかはないです。淡々と作業をすすめた。


3枚重ねて重しを乗せて、プレスすることさらに数日…

 

 

成功の予感

そして二日後。重しが適当(水入りバケツ)だったのが今ごろになって気になっているのだが、果たしてプレスはうまくいっているだろうか。


緊張の中、ヴェールを剥いでいきます

一枚目。セロリ。思ったより薄くプレスされてる。格子状の繊維がそれっぽい!

2段目、アスパラはさらに繊維がきめ細かくて、いよいよ成功の予感!!

3段目はなぜかワラが入っていた。捨てよう


薄く延ばされたうえに色も茶色っぽくなり、想像していたパピルス紙にだいぶ近づいてきた気がする。

そして次はいよいよ最後の工程。これを乾燥させるのだ。


一昼夜、干します(植物は重し。強風のため)

 

よみがえるエジプト文明

翌日。


セロリ。流し台の三角コーナーのすみっこにこういうの付いてますよねー

アスパラ。シート状になってるとろろこんぶってありますよね


この時点では布と一体化していて、成否の判断に迷うビジュアル。ゆっくりと分離します。


パピルス紙が破れないように、慎重に…

セロリよりアスパラの方がくっつきが強くて、破れやすい


はがれた!

こちらはセロリのパピルス紙。アップにすると透ける透ける。紙というより膜だ


こちらはアスパラ。ビジュアル的にはだいぶパピルス紙っぽいけど、やっぱり薄くてカサカサで、金魚すくいのアレの10倍は破れやすい!(右の方ちょっと破れた)

このあと「石や貝などでこすって表面を滑らかにする」という工程があるのだけど、ちょっと試したら破れそうだったのでやめた


いやー、もろい!ビジュアル的には野菜クズとパピルス紙の中間くらいまで行ったと思うんだけど、強度のなさはオブラート以下。もっと繊維が密で、太さも太ければよかったと思うのだが、そのへんが本家パピルスの強みなんだろう。


いっぽうこちらは風に散らかされて完全にゴミに。そのまま捨てました

 

 

野菜パピルスハガキ

最後に、整形してより紙っぽくしてみた。


はみ出た部分を切り取って

絶対に郵送できそうにないハガキの完成


セロリ紙。シースルーに繊維のメッシュがオシャレ。ちょっと力を入れるとすぐ割れる

アスパラ紙。やっぱりとろろ昆布…

 

もうちょっとうまくできるかも

完成度は高くないけど、一応、紙にはなった。さらに最初にスライスするときの厚みとか、発酵の時間とかを試行錯誤すれば、このやり方でもけっこう丈夫な物ができそうな気がした。今回だけで2週間くらいかかったのでもうやりませんけど。

というわけで、シリーズ「古代文明に学べ」、次回は「水晶でドクロを作ろう」です。おたのしみに!(やりません)


おまけ。ヒエログリフを調べて書いてみた。これは「ISHIKAWA」。下に寄ってるのは上半分が破れそうだったから

こっちは「DPZ」。感触はゴワゴワ、ペンの滑りが繊維にとられる、描いてると破れる、で最低の書き味でした

 


 
 

 

 
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