三日目：チンゲンサイの卵とじ、豆腐の味噌汁

とりあえず、料理らしきものを作ることには成功した。

しかしながら、ネギやオクラなど、いかにもハサミで切りやすそうな食材を刻むだけに留まっているのもまた事実。もっとこう、様々な料理に対応していかなければ、ハサミ料理の今後に期待することはできないだろう。徐々に食材、調理方法の幅を広げ、レベルアップしなければ。

というわけで、お次は日本食の基本、一菜一汁の食事をこしらえてみることにしよう。

私の料理の基本は、野菜を卵でとじる事である。理由は簡単、ほとんど失敗することが無いからだ。テキトウに作っても、それなりに食べられるものになるから不思議である。

しかもチンゲンサイという野菜は、扱い易いので非常に助かる。比較的安価だし、栄養価も高いし、まっこと優秀な食材ですな。卵もまたしかり。そりゃハズすわけがないですわ。

さて、これで一菜一汁のうちの菜が出来上がった。お次は、汁作りに移る事としよう。今回作る汁は、私の好物でもある、豆腐と油揚げの味噌汁だ。うまいよね、豆腐の味噌汁。

これがまぁ、ほっとする味であった。やはり、野菜の卵とじは鉄板だ。チンゲンサイも、しなっとしている部分と、シャキッとする部分があって、食感のバランスが良い。

また、おかず一品、ご飯一膳だけではあまりに質素な食事であるが、それに具沢山の味噌汁が加わる事で、立派なおかずがもう一品追加され、満足感のある献立へと昇華する。これだけでもう十分。満ち足りた夕げであろう。

四日目：ナスと豚の味噌炒め

さて、そろそろ野菜以外の食材も、ハサミで料理できるかどうか試してみたい。というわけで、四日目は肉を扱おうと思う。それも肉の花形、豚バラ肉を用意してみた。

この豚バラ肉を適当な大きさに切り、それに乱切りにしたナス、ピーマンを加え、味噌炒めにしようと思う。

ここに来て、初めてハサミ料理に陰りが見えた。ピーマンのような、程よく固い野菜はもちろん難なく切れる。ナスもまた、特に問題なく乱切りにする事ができた。

……しかし、肉が切れないのである。ハサミで切ろうと二枚の刃で挟んでも、肉の脂で粘つくのか、はたまた切れ味の問題なのか、思うように切れてくれないのだ。結局、ハサミで肉を挟んだ後、それを引きちぎるようにして、コマ切れにした。

今回は薄いバラ肉だったから良かったものの、もっと厚い肉だった場合、果たして切る事ができるか、自信は無い。へばり付いた脂を洗い落とすのも包丁よりやや面倒だし、ハサミは生肉を切るのには、あまり適していないようだ。

いやぁ、この味噌炒めは本当にうまい。甘辛い味噌が、ナス、豚肉共々良く合う。ナスも豚肉の汁を吸っているし、かといってピーマンの程よい苦味がアクセントになり、飽きる事もない。本当、この料理は凄いわ。発案者を褒め称えたい。

ちなみに、本当は昨日作った味噌汁の余りも出そうと考えていたのだが、気が付いたら味噌汁の表面が真っ白な何かに覆われ、得も言われぬ臭いを放っていたので、諦めて麦茶にした。

暑い中、味噌汁をほったらかしておく事が、これ程どまでに危険な行為だったとは。夏なのに、一面雪模様とはこれいかに。